読めばクルーズ旅がしたくなる!人気作家のプライベートな一面を紹介

  • 2024年7月17日
  • コロカル
船旅への愛情表現を通じて、船旅の楽しさを知る

1990年頃、バブルの影響もあって海外旅行への機運が高まっていた時代。日本籍の大型客船が誕生し、クルーズ旅行は一部の富裕層のものから、頑張れば手が届く憧れとなった時代でもある。優雅で刺激的なクルーズ船旅は、数多くの文化人からも愛され、クルージングを楽しむ様子は作品を通してうかがい知ることができる。

今回は5名の作家や脚本家、イラストレーター、フォトグラファーのエッセイや著作から、船旅への愛情表現を紹介する。詩的で独特な表現を通して、船旅の真のよさを感じてもらいたい。

物見遊山は楽しいけれど、移動は疲れるというのが旅ならば、船旅は、旅にあって旅にあらずと言い切れます。移動のあいだののんびりとした時空間、浮き世の憂を、丸ごと全部陸に置いてきぼりにしてきてやったぞぉ、という快感! たまりません。(宮部みゆき『波』掲載『なんでもありの船の旅』新潮社刊より)

ミステリー作家の宮部みゆきさんが〈ふじ丸〉に乗り、小笠原クルーズを初体験した紀行文。ふじ丸は2013年に引退し、2021年にはスクラップとなってしまっただけに、今や貴重な体験記だ。その内容はデラックスルームをひとり占めし、クジラありカジノあり機関室見学から冷凍庫探険まで。まさしく“なんでもありの”船の旅を軽快に綴る。

人には惚れてみよ、船にはのってみよ。360度の水平線から登って沈む太陽、白い雲、青い海、24時間変化に富んだ揺り籠。たまらんです、たまらんです。ああ、もう、乗りたい! 船が呼んでいる!(杉浦日向子『杉浦日向子ベスト・エッセイ』掲載『日経おとなのOFF』より)

オシャレにもグルメにも美容にも収集にも興味がないという文筆家・杉浦日向子さんの、唯一の道楽は「船旅」なのだとか。ギャラの換算は、「船何泊分」で考えるというから筋金入りの船好きだ。NHK『お江戸でござる』レギュラー撮りの関係で、6日以内の国内ショートクルーズが多かったそうだが、2度のがんの手術後に南太平洋クルーズへ出かけたという。最期まで船を愛していた人柄が偲ばれる。

私はアラスカクルーズで船旅に目覚めてから、郵船クルーズの「飛鳥」やその後継船の「飛鳥2 」でよく船旅をするようになりました。長い航海になると、乗った時は別々だった人たちが、船を降りる頃にはたいてい長年の知り合いのようになっています。つくづくクルーズは友だちをつくるにはもってこいの場だなと感じています。(橋田壽賀子『旅といっしょに生きてきた』祥伝社刊より)

夫婦で船に乗り互いにじっくり向き合うことにより、喧嘩をすることがあっても、逃げも隠れもできないし、海の上だから、嫌なことを水に流すのは簡単かも……と、夫婦での船旅参加を提唱する脚本家の橋田壽賀子さん。ご自身も、世界一周クルーズ、南極クルーズ、南米クルーズと4度のクルーズ旅を経験しているのだとか。旅の準備、持ち物や船上での人付き合いの話は、現代にも通じるものあり。乗る前に読みたい1冊だ。

船旅は愉しい。それはめちゃくちゃに愉しいといってもいい。素敵な人と出会い、コックさんご自慢の最高の料理を味わい、海という自然の中に身を任せながら、連夜のパーティーで盛り上がる。そこではあらゆる愉しみがよりどりみどりなのである。(中略)ナーンにもしない。ただひたすら遊ぶ。こんなぜいたくな時間の過ごし方が船旅の豊かさなのだろう。(石郷岡まさお『船旅への誘い クルージング讃歌』東京書籍刊より)

1990年に〈にっぽん丸〉3代目の初航海に参加したフォトグラファーの石郷岡まさおさんが写真を、イラストレーター柳原良平さんが文章を寄せた、『船旅への誘い クルージング讃歌』。そのあとがきに記されているのは、クルーズ船に対する石郷岡さんの熱い思い。スナップフォトのような軽やかな写真からも船の魅力がひしひしと伝わってくる。

今、家にいて、こうして文章を書いていて、一息入れて目をつぶり、静かな甲板の上でデッキチェアにもたれて海の音だけが聞こえてくる情景を思い出すと、ああまた船に乗りたいなァと思えてくる。キャプテンのパーティーやカジノを思い出しても私はさして船に乗りたい気持にはなってこない。何もしないもの憂げな甲板でのひとときが私には魅力なのだ。(柳原良平『船旅への誘い クルージング讃歌』東京書籍刊より)

時は平成元年。クルーズ元年ともいえる、日本籍の大型客船の相次ぐデビュー。国内外問わずクルージングに魅了され続けてきたイラストレーター・柳原良平さんが、仲間たちとともににっぽん丸の初航海へ。食事、バーはもちろん、甲板でぼんやりと過ごしたかと思えば、船内プログラムにも顔を出し、客人との会話を楽しむなど、船を使いこなす技はお見事。「楽しませてもらおうと思うのではなく、楽しんでやるぞと思って船に乗ってほしい」という氏の言葉が思い返される。

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