こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
新米の季節がやってきましたね! 私たちは今、耕作放棄地となるはずだった糸島の棚田を約20枚借りて、棚田のオーナーさんたちと一緒に、農薬や肥料を使わずにお米づくりをしています。(棚田オーナー制度の取り組みについての過去記事はこちら)
1年間がんばってお米を育ててきた自分たちにとって甘くてツヤツヤの新米を口いっぱいに頬張るのは、なによりのご褒美。おかずがなくても、お米の旨みだけでどんどん箸が進みます。
鉄鍋で炊いた、ピカピカの新米ご飯!
さて、新しいお米の収穫の時期になると考えなければいけないのが、去年収穫した「古米(こまい)」をどう食べ切るか問題。
今しか味わえない新米も食べたいけれど、残っている去年のお米もおいしく食べきりたい。
でも、正直にいうと……風味たっぷりの新米を一度食べてしまうと、古いお米になかなか箸が伸びないのも事実。お米づくりを始めて10年で、ずいぶんと舌が肥えてしまったようです。
籾殻に包まれた新米たち。
皆さんのおうちにも、「いただいたけれど、食べきれなかったお米」や「忘れていて残ってしまった古いお米」はありませんか?
古いお米は乾燥が進んでいるため、舌触りが少しパサっとしていて独特の香りがすることがあります。
そこで、古いお米ならではの「臭い」「乾燥」「食感」を改善しつつ、古米の特性を生かしておいしく食べるお米農家直伝の裏技をお伝えします!
古いお米の香りが気になる方におすすめのレシピこの一杯で味がぐんと変わります。
(1)みりん、料理酒などのアルコールを少量入れて炊く
いつもの「炊飯」にちょっとひと手間。みりんや料理酒などを大さじ1〜2杯ほど入れて炊くと古米臭が気にならなくなり、おいしく仕上がります。
甘みとコクがプラスされて、風味が出ます。艶出しにも◎。個人的には、さらに塩をひと振り入れて炊くのが好きです。ゴマを振りかけるとさらにおいしい!
(2)炊き込みご飯にする
思い切って味つきご飯にして、具材の香りを立たせるのもひとつの手です。古米は水分をよく吸うので、お米にしっかり味が染み込みます。王道ですが、古米だからこそおいしくなる調理法。試してみる価値ありです。
とれたての枝豆を贅沢に入れた、枝豆ご飯も絶品。
(3)昆布などの出汁を入れて炊く
味つきご飯よりも「もう少しシンプルな味つけのものが食べたい」という方は、出汁で炊くのがおすすめ。
出汁パックや出汁のもとになる昆布や鰹節、いりこなどを炊飯のときにさっと入れるだけで旨みが格段にアップ。出汁の香りで古米の独特な臭いをカバーします。
出汁で炊いたご飯に梅干しや海苔などの具材を混ぜ込むと、さらにおいしくなります。おにぎりにも◎。
(4)竹炭を入れて炊く
竹炭は再利用可能なので、使ったら水洗いして天日干しします。土壌改善効果があるので、役目を終えた竹炭は細かく砕いて畑や観葉植物に。
竹には「気孔」と呼ばれるたくさんの穴が開いており、臭いのもととなる物質を吸着、分解してくれます。それが、古いお米の独特の臭いを解消してくれるのです。
さらに、竹炭に含まれるミネラル成分が水に溶けて、ふっくらおいしく炊き上がるといわれています。
せっかくだから竹炭も自作しようと試してみましたが、うまくいかず失敗……! 早く試したかったので、インターネットで購入しました(笑)。1000円以下で売っています。繰り返し使えるので経済的。
稲刈りの合間におにぎりをもぐもぐ。田んぼで食べるとおいしさも倍増!
古いお米のパサパサ感が気になる方におすすめのレシピ(5)浸水を長めにして水分を行きわたらせる
古米は水分が少ないので、ほんの少し水を多めに入れて長めに浸水するとふっくら仕上がります。浸水時間は、夏は30分、冬は1〜2時間くらいが目安。
乾燥した古米は水をよく吸うので、おいしい水を使うと、炊き上がりがワンランクアップします。
(6)お餅を入れる
「浸水する時間がない」という方には、超簡単なこちらの方法がおすすめ。おうちにある切り餅をスライスして炊飯し、炊き上がったら熱いうちに混ぜるだけ。パサッとしたお米がもちもちになり、艶も出てまるで新米のようでした。
友人に聞いたレシピなのですが、効果抜群! 我が家で「ありゃ、これ結構古いお米だな」と思ったときはこれを試しています。
もちろん餅米を少量入れて一緒に炊いてもおいしく仕上がります。その際は少し長めに浸水してくださいね。
棚田米でお酒をつくる「棚田のクラフトサケ計画」のオーナーさんたちと稲刈り。このお米がお酒になるのが楽しみ!
(7)氷を入れて炊飯
いつもの炊飯に、氷をふたかけらほど入れてみてください。甘みが出て、ふっくらとした炊き上がりになります。
お米は、沸騰するまでの時間が長いほど甘みが出やすいといわれており、すぐに沸騰しないように、氷を入れて水温を下げます。
古いお米の特性を生かしたものをつくる(8)チャーハン、パエリアをつくる
古いお米は水分量が少ないため、その特徴を生かした料理に使うとおいしくなります。
料理人の夫がおすすめする古米レシピは、チャーハンとパエリア。ベタつきにくく、さらっと仕上がるそうです。
(9)麹(こうじ)をつくる
味噌づくりのために、麹を仕込みます。
酒蔵の蔵人をしていた夫曰く、麹づくりには新米よりも水分量の少ない古いお米のほうが向いているのだそう。
米農家でもある我が家の古米は、数10キロ単位で余ることがあるので、そういったお米は麹づくりに活用しています。
その麹で味噌を仕込んだり、以前紹介した、棚田米でお酒をつくる「BATON TOUCHプロジェクト」などの原料に使ったり、余すところなく活用しています。
「古いお米は、新米に比べると食味は落ちているかもしれないけれど、加工にはすごく向いている素材なんだよ」と、夫。
おうちで麹をつくりたいと思っている方がいたら、ぜひ古米で試してみてください。
分野の垣根を超え、新たなカルチャーのつくり手をつなぐプロジェクト〈BATON TOUCH〉。写真は、棚田のお米を使って仕込んだクラフトサケです。
(10)甘酒をつくる
それでも食べきれない古米は、甘酒の材料に。
やわらかめに炊飯した古米のご飯に水を入れ、60度まで下がったら米麹を投入。炊飯器の蓋は開けたまま、濡れ布巾をかけて温度をキープしながら10〜12時間ほど発酵させると、「飲む点滴」といわれる栄養満点の甘酒が完成です。
そのまま飲むだけでなく、スイーツづくりのお砂糖の代わりとしても活躍。冷凍保存すれば1か月ほどおいしくいただけるので、まとめてつくっておくと良いかもしれません。
毎年庭で行う味噌仕込み。お米も麹も自分たちでつくったものです。
古いお米といっても、新米が登場するまでは毎日食べていたお米。まだまだおいしく食べられるものばかりです。今回のレシピを活用して、楽しく食べてもらえたらうれしいです!
また、「自分がつくったおいしい新米を食べてみたい!」という方はいつでも、誰でも、参加できる棚田オーナー制度も、ぜひ覗いてみてくださいね。
美しい糸島でお待ちしています!
information
いとしまシェアハウス
公式サイト
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森