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【漫画】祖母が漏らした床を拭く日々。躁うつ病で狂いそうになりながらも、何とか生き延びた私と俳句の話【作者に聞いた】

  • 2024年9月17日
  • Walkerplus

「中学校2年生から高校1年生までのはっきりした記憶がない」

そう語ったのは、書評ライターや連句人として俳句や文芸情報をX(旧Twitter)で発信をしている高松霞さん(@kasumi_tkmt)。

家族の不幸に無意識に追い詰められていた日々と、それにより発覚した躁うつ病との日々を綴ってもらい、その心情にぴったりな俳句とともにコミカライズ。

作画は、自らのことを「霊感のようなものがある人間」と紹介する漫画家・桜田洋さん@sakurada_youが担当。その柔らかで心に染み入る絵のタッチと、鮮やかな色づかいが魅力だ。

今回は、高松霞さんを取り巻いていた家族の悲惨な状況と、躁うつ病が発覚した当時を、その心情に寄り添う俳句とともにお送りする。





――今回の話で、一番読者に伝えたいことは何ですか?

高松霞さん(以下、高松):まず、私の生まれ育ちを書こう、という気持ちがありました。躁うつのこともですが、特に在宅介護、ヤングケアラーに関しては、「これが普通の生活だ」「みんな耐えて生きているのに泣き言を言ってはダメだ」と信じて生きてきました。現在の主治医に「それは違いますよ」と諭されて「え?そうなの?」と知ったのです。みんなそれぞれの地獄で生きているよね、ということが言いたかったのかもしれません。


――漫画になった率直な感想を教えてください。

高松:綺麗!なるほど!すごい!(笑)。

エッセイは、私も、そしてきっと担当編集さんも「これどうやって漫画にするんだ?」と悩んでいたと思います(笑)。桜田洋さんは、ただ文章を絵にするのではなく、エッセイの意図を汲んで、想像以上の作品を上げてくださいました。私の生きてきた道が肯定されるような感覚があったというか……。とても感謝しています。


――1つ目の俳句「星合いの……」について、どのような思いで選んだのでしょうか?

高松:挿入されている俳句は、俳句の友人である西川火尖さんと松本てふこさんにいくつか候補を上げていただき、その中から私が一句選ぶという工程を踏んでいます。

「星合の〜」は、たぶん動物園の夜のことだと思います。誰にでも「わかる」言葉で書いていながら、とても幻想的ですよね。火尖さんに『サーチライト』という句集があるのですが、「わかる」句でありつつ、作者にどこか遠くを指さされているような、不思議な寂しさがある句をつくる方です。


――2つ目の俳句「錠剤を…」について、どのような思いで選んだのでしょうか?

高松:これも「わかる」言葉で書かれていますよね。「遠足」というハッピーな日常の中に紛れ込む、「錠剤」という病体。ちょっとだけの不穏な雰囲気。てふこさんの句集『汗の果実』をぜひ読んでいただきたいのですが、笑っていいような、笑っちゃいけないような、松本てふこらしい面白い句だと思います。


――3つ目の俳句「人間を……」について、どのような思いで選んだのでしょうか?

高松:この句は「人間を絞れば水や」で切れているんですね。「藤の花」はただ添えてあるだけ。初句の「人間を」って、すごく大きいことを言っている。それが「藤の花」に着地する。てふこさんと火尖さんから紹介されたとき、すごい句だ、絶対これにする、と連絡先を探しました。まずお電話して、お手紙を書いて、転載にご快諾いただきました。


鮮やかでありながらも毒々しい色合いの藤の花から、弟の顔を「プチ」と取るシーンが印象的だった。


第1話では、高松さんの家庭環境と、躁うつ病が確定したエピソードについて綴ってもらった。人とは異なる視点で眺めた世界と、じわっと心に染み入る俳句が織りなす情景を、じっくり味わってみてほしい。


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