
昔から嫁姑問題というのは話題にのぼりやすい。核家族化が進み、夫の両親と同居する家庭は減ってきているが、それでも義両親と馬が合わないといった話はよく聞くものだ。
「どちらかの家庭が崩壊する漫画」で登場する薬師寺ユイも、義母との関係性に悩む女性の一人。エリートサラリーマンの夫・シュウの母は、決して悪意を向けてくるわけではない。ただ、約束をせずに突然家にやってきたり、「リエちゃん(ユイの娘)に似合うと思って買ってきたの」と微妙なデザインの洋服をプレゼントしてきたりするのだ。
そしてまた別の日もやってきた義母はリエのために離乳食を作ってくれる。そして、離乳食の熱さを確認するために口をつけたスプーンを、そのままリエに使おうとする。それを止めたユイに対して「もォ〜、怖いわねェ〜、リエちゃん!ばあば、ママに怒られちゃったァ〜!」とちゃかすような受け取り方をして、ユイは「ダメだ、この人」と義母に話が通じないことを悟るのだ。
一方、ユイのママ友である毒山海(ぶすやま・まりん)は、ゴンの母の店で働くことになるが、よい関係性を築いているようだ。対照的な義母像について、作者の横山了一(@yokoyama_bancho)さんに話を聞いた。
■関西らしいビジュアルの毒山家の母は作者の義母がモデル!
――以前、薬師寺家の義母や義母にまつわるエピソードは、SNSでの体験談から作り上げていったとうかがいました。毒山家の義母はどうなんでしょうか?
ビジュアルは妻(漫画家の加藤マユミさん)の母がモデルです。ヒョウ柄を着るタイプで威勢がよく、きっぷがいい人。実在の人物をモデルにしているのは、毒山家の母だけですね。
――カラー版になって判明しましたが、毒山家の母は髪の毛が紫なんですね!
関西のお母さんといえば、ヒョウ柄に紫で決まりという感じで。X(旧Twitter)で「大晦日にどちらかの家庭が崩壊する漫画」として連載していたときはモノクロで、荒く描いていたんですが、書籍化するにあたって描き直して、いい感じに色もつけてもらいました。
――義母エピソードには実体験はないということですが、横山さんの母はどんな感じなんでしょうか?
僕の母は僕に対しての評価が低いんですよ。なので、妻の味方をするんですよね、「こんなどうしようもない息子と結婚してくれてありがとう」って(笑)。我が家はそれぞれの母との関係は良好ですが、シンプルに相性がよかったのかなと思います。うちの母は嫁さんをすごく立てるし、義母も僕のことをしっかり立ててくれる。結婚した当初は僕の仕事も不安定でだいぶ心配をかけたと思いますが、「了ちゃんはきっと大丈夫!」と、どっしりと構えていてくれました。本当に感謝しかないですね。
薬師寺家の母に悪意はない。孫に会いたいし身内だからという気安さで“アポなし訪問”をするし、よかれと思ってプレゼントをくれるし、離乳食を作ってくれる。ただ、そこに相手がどう思うかという想像力がない。自分がよかれと思ったことは相手もよいと思ってくれるに違いないという楽観的な思い込みだけで動いてしまっている。ユイが義母と今後どうなっていくのか、親戚とのよい距離感はどういったものなのか、考えながら読んでいってはどうだろうか。