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「フエキくん」って何者!?「135年間のりのことばかり考えている」大阪発の文房具会社を直撃

  • 2021年3月23日
  • Walkerplus

つぶらな瞳の黄色い犬のキャラクターがデザインされた「でんぷんのり」。きっと多くの人が子供の頃に一度は見たことがあるのではないだろうか?その犬の名前は「フエキくん」といい、大阪・八尾市にある文房具会社「不易糊工業株式会社」が生み出したものだ。

そんなフエキくんをモチーフとしたグッズが、文房具や雑貨、コスメなどで幅広く展開されるほか、コンセプトショップも続々と登場している。今回はフエキくん誕生のきっかけとなったでんぷんのりの開発秘話やグッズの発売経緯について、企画開発室の渡辺哲也さんを直撃。フエキくんの人気の秘密に迫った!

■世代を超えて愛されるロングセラー文房具
でんぷんのりのシリーズのひとつ「どうぶつのり」は、登場以来ロングセラーを誇っている。主原料とうもろこしでんぷん100%にこだわっていて、小さな子供が安心して使用できるのも長く愛され続ける理由だ。

「『どうぶつのり』が誕生してから45年が経ちましたが、3世代にわたって愛用しているとのお便りをいただいたこともあります」と渡辺さん。5色のカラー展開がされたかわいい「どうぶつのりカラー」も登場している。

そんな世代を問わず愛されてきた看板商品の誕生のきっかけは、1886年(明治19年)の創業にさかのぼる。

■安心安全を求め、のりのことを考え続けた135年!
『創業135年のりのことばかり考えてます。』がキャッチコピーの不易糊工業株式会社。明治初期には一晩経てば腐って液化してしまう「姫糊」が普及していたが、1895年(明治28年)にでんぷんの老化防止などに効果的な化学薬品「ホルマリン」が伝わり、安定して使用できる「不易糊」を世に送り出すことに成功。商品名は“永遠に変わることがない”という意味である、中国の筍子の「萬世不能易也」にちなんで命名されたという。

その後は学童用として販売が拡大され、1975年(昭和50年)には犬、ゾウ、ウサギをモチーフにした「どうぶつのり」が発売された。そこで生まれたのが「フエキくん」だ。しかし世間に浸透し始めた頃、ホルマリンによる発がん性リスクを指摘され、ホルマリン不使用の研究に踏み切ることに。研究者3代にわたって開発が進められ、1986年(昭和61年)には防腐剤にホルマリンを使わない“安心安全な新しいでんぷんのり”が誕生した。17年もの歳月をかけて、かわいいパッケージはそのままに成分の安全性も実現されたのだ。

■のりの成分を生かした体に優しいコスメが大ヒット
フエキくんグッズにはでんぷんのりはもちろん、メモパッドや付箋、ボールペン、マスキングテープなどのステーショナリーのほか、ハンドクリームやリップクリームなどのコスメもそろう。自社のオリジナルアイテムの数は約30種にもおよび、バラエティ豊か。そのなかでも、シリーズ累計約500万個を売り上げ、「どうぶつのり」を上回る人気商品が「やさしい薬用クリーム」だ。

でんぷんの持つ保湿効果もプラスされた、大人も子供も全身に使える薬用クリーム。保湿力に優れたシアバターと馬油を配合し、しっとりと潤うのが特徴だ。サラッとしたテクスチャーで、ベタつきがない塗り心地のよさも人気の理由のひとつ。

「1990年代に入ってから『フエキくんのグッズを作ってほしい!』とのファンレターが届くようになり、社内ではキャラクター化を意識するようになりました。そして、営業担当からのあと押しもあってキャラ化が提案されましたが、その時はボツになってしまいました」と渡辺さん。しかし、当時は文房具商品の売り上げが減少傾向だったこともあり、2000年頃から現社長の指示により新たなビジネスとしてコスメの研究に踏み切ったという。

そして、「転機は2007年に訪れた」と渡辺さんは話す。「ある社員から私に、『新しいサイトを作ったら教えてくださいね』と連絡が入ったのです。私が『何のこと?』と確認したところ、ウェブ上で“不易糊工業株式会社を応援するサイト”というページを社員が偶然発見し、私が作成したものだと勘違いして連絡してきたと。『こんなん知らんで!』と調べたところ、フエキくんファンの方が作成したものだと判明しました。とりあえずは作成者からのアクションを待とうと放置していましたが、2カ月後に『あくまで応援サイトとして作りました』と連絡があり、そこでサイトの存在を了承したんです」

「同時期に、フエキくんに注目していた大阪のライセンス管理会社・エフォート株式会社から、『ぜひともどうぶつのりをキャラクター化してみませんか?』と企画を持ち込まれました。ファンサイトの存在も明らかになったタイミングで、『これはもう進めるしかない』と現社長のプロジェクトチームを中心にトントン拍子で商談がまとまり、2008年から正式にフエキくんのライセンス販売が開始されました。すぐに5~6社との契約が決まりましたね」(渡辺氏)その後、ライセンス会社からユニークでキュートなフエキくんグッズが続々と登場し、あっという間に注目を浴びるようになった。

またライセンス販売と同時期に、とあるフエキくん好きの社員が「どうぶつのりの容器を利用したコスメを出せば、絶対売れますよ!」と発案。そこで、自社企画として誕生したのが、家族みんなで使える「なかよしハンドクリーム」だったという。

「なかよしハンドクリーム」は、2008年1月から販売を開始して3カ月で40万個受注の大ヒット商品となった。その後に「やさしいシリーズ」として販路を拡大し、「やさしいハンドクリーム」はフエキコスメの定番商品に。会社のシンボルとしてフエキくんのキャラクター化が社内決定していたことと、ファンサイトの存在が明かになったこと。その2つの出来事が絶好のタイミングで重なったことで、フエキくんが広く知られるようになったのだ。

■香港にも専門店がオープン!国際的なキャラクターへ
フエキくんのとりこになるファンは増え続けており、「デスクにフエキくんを置くだけで癒やされます!」「母親の影響でフエキくんファンになりました!」など、年代を問わずうれしい反響がたくさん届いているという。

そんな評判を受けて、2017年には任天堂のゲームソフト「どうぶつの森」とフエキくんがコラボ。ゲームのキャラをモチーフにした「どうぶつののり」を発売し、またもや大ヒットを記録した。

コラボ商品などでも注目を集め、2020年11月には心斎橋PARCOに「フエキショップ-Fueki shop-」がオープン。さらに2021年に入ってからは香港・湾仔(ワンチャイ)に店舗を出し、本格的に海外進出を果たした。

渡辺さんは、「香港には2009年からフエキくんグッズが輸出されていて、今では現地でメジャーなキャラクターに成長しました。現地社員も在駐し、香港オリジナルのグッズも開発しています。今後は大阪を代表するキャラクターとして、2025年の大阪万博に採用してもらいたいです!」と、万博デビューも狙っているという。

「今後はメジャーな製品とのコラボも積極的に取り組みたい」と意気込んでいる不易糊工業株式会社。大阪発のフエキくんが日本を代表するキャラクターとなる日を心待ちにしたい。

取材・文=左近智子(glass)

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