粘土で作ったポケモンフィギュアがスゴイと話題のねんどよしりんさん。“フィギュア”と言っても驚くべきは、そのサイズ感。ポケモン図鑑に載っている高さを参考に、実寸大で制作したものがほとんどだ。また、実生活で役に立つ「機能付きポケモンフィギュア」も多数制作。今回は特に反響が大きかった作品を紹介しながら、その制作秘話やこだわりに迫る!
■まるで生きてる!?実寸大シェルダーにメロメロ
彼の作品のなかでも最も反響があったのが、高さ約30cmの実寸大シェルダー。Twitterでは「結構デカい!」「本物のシェルダーだ!」と盛り上がりをみせ、約10万いいねを獲得するほどの人気作品に。サイズだけでなく色や質感、フォルムまでもが完全再現されており、今にも動き出しそうだ。
今や代表作ともなっているシェルダーだが、作った当初はここまで話題になるとは思わなかったそう。
「実は1年以上制作途中で放置していた作品で、今作っているキャラクター『マリィ』の前座として出したんです。それがまさか、こんなに話題になるとは…!いろいろな対応に追われ、未だにマリィが完成しません(笑)」
大学生時代、年に1〜2作品程度を制作していた粘土フィギュア。本格的に作り始めたのは約3年前だという。きっかけについて「『バズってみたい』というシンプルな理由ですね(笑)」と話す、ねんどよしりんさん。
「入社から2年ほど経ったころ、仕事にも慣れて落ち着いてきたので『何か新しい事をしたい』と強く思うようになりました。みんなに注目してもらうにはどうすればいいか。考えた結果、老若男女に大人気の『ポケモン』にたどり着いたんです」
当時、アニメポケットモンスターサン&ムーンを見ていた彼は、「ロトム図鑑」というお腹にモニターが付いているキャラクターが好きだったそう。「これをiPadケースにしよう!」と考えついたのが、初めてのポケモン作品「ロトム図鑑」だ。
材料となるのは石粉粘土と紙粘土。道具はいろいろ使うが、「とりあえずスパチュラとヤスリとエアブラシがあればだいたいは作れます」とのこと。制作時間は物によってまちまちで、2週間で終わるものもあれば、1か月以上かかるものもあるという。
■とにかくデカい!アローラナッシーのプランター
アローラのすがたのナッシーも、人気作の一つ。中はプランターになっていて、特徴である長い首はなんと本物の植物!
メイキング動画を撮るために真夏の琵琶湖の浜辺で仕上げたというこの作品。「その日はとにかく暑くて、汗だらだらで死ぬかと思いました…(笑)」と、制作の裏話も教えてくれた。プランター部分はパーツが分割できるようになっており、植物を入れ替えると普通のナッシーにもなるのがポイント!
植物を使った作品はほかにも。キレイハナのプランターは頭の部分に花を活けられるようになっており、季節によって多彩なバリエーションを楽しめる。「完成したあとも、フィギュアにはさまざまな可能性があると感じさせてくれた作品です」と語る。
プランターシリーズでは、何度も作っているというナゾノクサ。「実は5体目の作品で、何か変わったことができないかと思い、片足で立たせてみることに。念のため台座も用意したのですが、まさか自力で立つとは!」と、予想外の出来事だったそう。
■こだわりは「ツルンとした質感」。絶妙なツヤ感がリアル!
ねんどよしりんさんの作品の特徴でもある、質感の美しさ。ヤスリで何度も丁寧に粘土を削り、スマホでピンチされても問題ないくらいきれいにするよう意識しているという。ツルンとしながらもマット感のある「ポケモンってこんな感じなんだろうな」という絶妙な質感が、ポケモンたちをよりリアルに、生き生きとみせてくれる。
また、今まで作ってきた作品のなかでも「ピカチュウ」と「ヨワシ」はコンテスト応募のために作ったもので、特に思い入れがあるそう。
「過去に『ポケモンカードイラストグランプリ』という企画があって。グランプリになれば自分の作品がポケモンカードになるというもので、立体作品も応募可能だったので挑戦してみたんです。結果としては一次で落ちたのですが、作品を作るだけで終わりではなく、写真を通して『どう撮ってあげればその作品が一番魅力的に見えるのか?』と、見せ方を考えるいい機会になりましたね」と、思い出を語ってくれた。
■作品のヒントはポケモンたちが教えてくれる
ロトム図鑑のiPadケースやナゾノクサのサプランターなど、フィギュアと既存のものをうまく組み合わせて作品にする彼の発想には驚かされる。作品の発想やアイデアは、どこからヒントを得ているのか。
「私が考えるというより、ポケモンが教えてくれる感じですね。ポケモンって、この世に存在する『神羅万象』が形を変えたものなんです。必ず元があるので、そこからイメージして作っています」
■「ポケットモンスターDJ」計画が進行中
最後に、今後作ってみたい作品について聞いてみた。
「ポケモンたちを使って部屋をクラブみたいにする予定で、実はロトム図鑑以降はそれを意識して作るポケモンを選んでいます。最初のロトム図鑑を中心に、アマカジでスモーク、シェルダーでレーザー、バケッチャ・ヒトモシ・ミミッキュで照明、それらの電源としてデンヂムシまでができているので、あとはドゴームスピーカーとメタモンDJコントローラーで完成の予定です!」
また、最近は造形だけでなく動画編集にも凝っているそう。「私の作品の良さは、完成してからがスタートだと思うんです。実際に使えますから(笑)」とねんどよしりんさん。最近撮ったものは制作過程のほかに実際の使用動画もつけているとのこと。ちなみに筆者のお気に入り動画はナゾノクサのプランターだ。
みんなを楽しませてくれる作品を数多く生み出してきたねんどよしりんさん。今までの集大成となる「ポケットモンスターDJ」の完成が楽しみだ。
取材・文=江口琴音(glass)