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第1回 インタビュー 環境デザイナー 今井澄子さん
国際的に環境デザインを手がける今井さんに「LOHAS」を聞きました。

  • 2005年10月1日
 

美しい環境と 豊かな生活の実現に向け、
形で表す通訳、それが環境デザインです。

環境デザイナー / 東京大学講師 今井澄子さん

--環境に配慮したライフスタイルは、LOHASの基本カテゴリーのひとつです。そういう意味で、環境デザインはLOHAS的だと思うのですが、今井さんが考えるLOHASとはどういうものですか?

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九州の佐賀市役所、メインホール。役所のイメージを払拭する曲線を多用し、やわらかで格調のある空間を創造


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タイヤのリサイクルゴムを使った車止め。夜も視認ができる発光フィルムをデザインし、レイアウト


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サンフランシスコ総領事館のインテリア、家具をデザイン

 「『LOHASとは○○です』と言い切ることは難しくて、身の回りのことやちょっとした行動を積み重ねてきた結果が実はLOHASだった、という感じではないかしら。だからLOHASとは何気ないもので、そんなに大袈裟なことではないと思いますね。物質的なことや現象そのものではなくて、心の豊かさや、安心さのようなものではないでしょうか。

 ここでちょっといいお話をご紹介しますね。世界的なデザイナーであるチャールズ・イームズの事務所で働いていたときの夫人のレイの事をお話しします。レイは、毎日のように花を摘んできては、仕事場の私たちにおはようといって一輪くださるのが日課でした。それを知ったご近所の人たちは、レイが通りがかりにいつでも花が摘めるようにと、家の塀の外にも花を植えたのです。やがて夫人が事務所へと通う道は、四季を通じて美しい花々が咲き誇るようになりました。これがLOHASな心遣いですよね。他人への思いやりや、自然はみんなのものであるという意識があったからこそ生まれたステキなエピソードだと思います。また、私たちのために毎日花を摘んできてくれたレイの心遣いもすばらしいですよね。人をもてなしたり、楽しませることは難しいことではないんです。思いを形にすることは、ちょっと意識さえすれば誰でもできることなんですね。これはLOHASにも共通していえることではないでしょうか」

--では、自分たちの住まいや、身の回りの環境にLOHAS的要素を取り入れたい場合には、どのような努力をしたらいいのでしょうか?

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都電、荒川線を子供たちの絵でラッピング、都営のラッピングバスも今井作品

 「本当の自分の『心の目』で見て感じることかしら。背伸びしたり、世の中の肩書きや見栄を張ることなくホンモノをたくさん見て、自分のサイズで選んでいく、要するに整理整頓。物も心も含め優先順位を考えることが実生活にLOHAS的要素を入れることかしら」

--今後はどのようなお仕事を積極的にしていく予定ですか? また、21世紀をむかえた今、環境デザイナーとしての使命(役割)をどのように考えていますか?

 「今までは大人と向かい合っていたので、これからは仕事を通じて積極的に子供たちと接していきたいですね。最近の日本はいろいろな事件があって、子供は大人を警戒しているし、安心して遊べる場所も少ない。だから、経験が豊かで高い志を持つ大人たちが、一生懸命子供たちとコミュニケーションすることが必要になってくると強く感じています。子供時代の心が真っさらな状態のときに、親以外の大人たちが、人生にはいろいろな選択肢があることや、上質な知識をインプットしてあげること、何かに悩んだり迷ったときに背中をポンと押してあげることが大切だと思うんですよね。そして、環境デザインというツールを上手く利用して、地球に住む人間同士が国境を越えて互いの存在を認め合い、思いやりがもてる関係を築いていくためのサポートをすることが、環境デザイナーとして21世紀での重要な役割になると思っています」

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日比谷駅プロムナード、両壁面、円柱、パブリックファニチャー、キオスク等をトータルデザイン

■インタビュー後記

雑談中に今井さんから『衣食足りて礼節を知る』という言葉を教えていただきました。その言葉は、まさにLOHASの核となる部分を表現したもの。「LOHASに関してはまだまだ不勉強なのよ」とおっしゃいながらも、今までの豊富なご経験から、心の中にはLOHASの礎が築かれているのだなと、深く感じました。

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