会話が一方的になりがち。これがいつものこととなると、発達障害の傾向がありそうです。
「会話は言葉のキャッチボール」とよく言われますが、ASDの人にとっては、このキャッチボールが難しいことがあります。
一見いろいろ話しているようでも、相手の反応を気にせず自分の話ばかりしてしまったり、逆に一方的に質問を投げ続けてしまったり。ボールを投げてばかりで、相手からのボールを受け取らなかったり、無視してしまったりすることがあるのです。
そのため、「お互いに聞いて答えて」といった相互的なやりとりにならず、会話が一方通行になってしまいがちです。
また、相手がどう感じているかに気づきにくいという特性もあります。たとえば、初対面の相手にパートナーの勤務先や出身校などを尋ねるのは、一般的には失礼とされていますが、それがわからないのです。
もちろん、海外では初対面でもざっくばらんに話しかけてくる文化もありますが、それとは少し違います。ASDの人の振る舞いは、しばしば一方的、あるいは自己中心的に見えてしまうことがあるのです。
いわゆる「不思議ちゃん」と呼ばれるタイプの人の中にも、こうした傾向が見られることがあります。たとえば、顔見知り程度の人に突然「これおいしかったから」と大量のインスタント食品を渡したりする。
普通なら驚かれるような行動でも、その“距離感”がわからない——それもASDの特性のひとつです。
ASDの人は、「なんとなく」「適当に」「いいあんばいで」といったあいまいな言葉では、何を求められているのかがわかりにくいことがあります。
特に、人との距離感をつかむのが苦手な場合には、「具体的に何を言えばいいのか」「どう行動すればいいのか」といった“マニュアル”を自分なりに作っておくことがおすすめです。
その際には、信頼できる家族や友人、カウンセラーなどに協力してもらうと安心です。
たとえば、「初対面の会話にふさわしい話題のリスト」や、「相手に断られやすいように“よろしければ教えていただけますか?”と添える」など、会話の定型文やテクニックを整理しておくと、実際の場面で役立ちます。
ASDの人は、アドリブや臨機応変な対応が苦手でも、あらかじめ決まったパターンをなぞることは比較的やりやすいといわれます。
英会話教室でフレーズを覚えるように、日常の会話も練習を重ねることで、少しずつできるようになっていきます。
会話を通じて、相手との距離を無理なく縮めていけるといいですね。
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