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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第69回 バイオ燃料をめぐる国内外の概況

  • 2009年10月15日

第69回 シンポジウム報告/バイオ燃料と土地利用〜持続可能性の視点から
基調講演1
バイオ燃料をめぐる国内外の概況
東京大学大学院工学系研究科教授 山地 憲治さん

無断転載禁じます

シェアは小さいが急速に伸びるバイオ燃料

 バイオマス全体の中でバイオ燃料がどう位置づけられているのか、現状も含めて見てみましょう(下図)。薪や大型水力など在来型のものを除く新再生可能エネルギーの供給量は約17EJ(エクサジュール)、一次エネルギー全体の3.6%です。割合としては小さいのですが、年成長率は11.51%と、一次エネルギー全体の1.60%に比べると、ボリュームとしては小さいけれども非常に急速に伸びています。新再生可能エネルギー全体の17.26EJ(2005年)のうちバイオマスが半分以上を占め、9.18EJです。太陽光や風力が脚光を浴びているのですが、新再生可能エネルギーのうち実は半分以上を占めるバイオマスは重要です。
 バイオマスの内訳(2005年)を見ると、バイオ燃料であるバイオエタノールが0.73EJ、バイオディーゼルは0.13EJと、モダンバイオマス(薪など在来型のバイオマスを除く)の中ではバイオ燃料は小さいのです。しかし、成長率を見るとモダンバイオマス全体が2.5%に対して、バイオエタノール、バイオディーゼルは16%と34%となっています。
 エネルギー全体の流れの中での再生可能エネルギーは小さいけれども急速に拡大しているように、モダンバイオマスの中でバイオ燃料は小さいのですが急速に拡大していると言えます。再生可能エネルギーの中でバイオマスは自動車の燃料に使えるという特徴があり、まだ非常に小さいけれども重要だと思っています

新再生可能なエネルギーの生産量と成長率/日本のバイオマス資源の利用可能量と賦存量
※クリックすると拡大画像が表示されます。
(作成=ポンプワークショップ)

日本の新再生可能エネルギーで大きなシェアを占めるバイオマス

 わが国の新エネルギー導入目標はパブリックコメントを得て昨年の5月に正式に決まりました。2010年目標としては石油換算にして1,910万kl、日本の一次エネルギー全体の3%程度です。現状としては2006年度で1,262万kl、2.2%です。
 この中でバイオマスがどのくらいあるかというと、発電分野では586万kl、熱利用分野で308万kl、両方合わせると約900万kl弱で全体の半分ぐらいです。さらにその他には、紙パルプ業界の黒液、廃材が未利用エネルギーとして含まれています。実はこれもほとんどがバイオマスなので、実はわが国の新再生可能エネルギーの政策目標、あるいは現実においてもバイオマスというものは実は一番大きなシェアを占めているのです。バイオマスエネルギー導入量の推移を見ると、着実に伸びてきています。2002年で68万kl(熱利用)だったものが2006年に倍以上になっています。
 わが国のバイオマス資源の賦存量と利用可能量を見ると(上図右)、下水汚泥や建築廃材などの廃棄物系と林地残材や間伐材稲、麦わらなどの未利用系、さらにそれ以外に資源作物系があります。利用可能量まで入れると多いのは林地残材や間伐材ですが、それでも200ペタジュールで、500万kl分くらいのものです。

各国のバイオ燃料政策と国際的取り組み

 米国は前のブッシュ政権の時から、トウモロコシからのバイオエタノールの拡大に熱心で、2012年までに75億ガロン(約2,800万kl)、2022年に360億ガロン(1億3,600万kl)、さらにオバマ政権では2030年までに600億ガロン(約2億kl)を生産する計画を立てています。これはわが国のガソリン使用量の何倍にもなります。ブラジルでは第一次オイル危機の時からずっと、ガソリンへのバイオエタノール混入を行っています。これはサトウキビ由来で、アメリカのトウモロコシ由来のエタノールと比べると二酸化炭素(CO2)削減効果から言えば、ずいぶんと評価は高くなります。 欧州ではバイオディーゼルに関する指令が出ています。バイオ燃料比率を2010年末では5.7%、それを2020年までに10%にするという目標が欧州議会では採択されています。
 国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)は、温暖化対策が本格的に取り上げられた、2005年のイギリス・グレンイーグルズサミットで立ち上げが合意されたものです。ブラジル、中国、インドなどの発展途上国が入ったG8+5のフレームワークの中で、バイオエネルギーの持続的な発展を図ることを目的に2006年5月に設立されました。昨年の洞爺湖サミットにおいて、「GBEPの作業を支持しバイオ燃料の生産と使用について科学に基づく基準と指標を策定するためにGBEPが他の利害関係者とともに取り組むことを呼びかける」という文章が首脳宣言文に盛り込まれました。3月末には温室効果ガスタスクフォースレポートを、4月末には持続可能性に関するタスクフォースレポートを完成させて、イタリアで開催される今年のサミットに報告するというスケジュールです。
 持続可能性の基準策定については、EU(欧州連合)の再生可能エネルギー指令(2008年12月採択)では、ライフサイクルで化石燃料に比べ35%以上の温室効果ガス削減、炭素貯留の多い土地では生産されていない——などの条件がつけられています。また、イギリスでは再生可能輸送用燃料導入義務制度(RTFO: Renewable Transport Fuels Obligation)が、ドイツではバイオマス持続可能性条例(BSO: Biomass Sustainable Ordinance)などさまざまな基準策定の動きがあります。
 バイオ燃料の持続可能性において考慮すべき要件としては、一つは今日のメインテーマである土地利用、とくに食料生産との競合の観点です。また、土地利用改変に伴う温室効果ガス排出が、バイオマス利用による削減量をはるかに上回る可能性が十分に高い。また、プランテーションにおいてとくに窒素肥料の施肥を行うと一酸化二窒素(N2O)がたくさん出ると言われています。アメリカのとくにトウモロコシ由来のバイオエタノールでは、燃料製造工程におけるCO2等の排出問題もあります。
 森林生態系の保全や生物多様性の問題、それから地域社会の持続可能性なども重要な議題だと思います。エネルギーシステム評価を行っている人間から言わせると、そのベースに供給安定性と経済性というものを備えた上で、持続可能性があるということが重要です。

(グローバルネット:2009年4月号より)

 

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