内閣官房の国家戦略室内に置かれたエネルギー・環境会議は、2011年12月に基本方針「エネルギー・環境戦略に関する選択肢の提示に向けて」を決定した。同会議はこの基本方針に基づき、2012年9月14日に「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した。省エネルギーと、再生可能エネルギーなどのグリーンエネルギーを最大限に引き上げることによって、原発への依存度を減らし、化石燃料への依存度を抑制することを基本方針としている。
当初は閣議決定されるとみられていたが、同日に閣議決定された「今後のエネルギー・環境政策について」に付された文書扱いとなった。閣議決定では、「今後のエネルギー・環境政策については、『革新的エネルギー環境戦略』を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を解得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」としている。新戦略は、国民からのパブリックコメントや意見聴取会による意見を踏まえて、次の3つを柱とする内容となった。
第一に、原発に依存しない社会の早期実現を達成するために、3つの原則を定めている。原発の40年運転制限制の厳格な適用と、再稼働には原子力規制委員会の安全確認が必要であること、原発の新・増設を行わないことだ。これらを基本として、2030年代に原発稼働をゼロにするため、あらゆる政策資源を投入するとしている。ただし、その過程で安全性が確認された原発については重要電源として活用するとも書いてある。
第二に、グリーンエネルギー革命の実現をあげている。消費者などさまざまな担い手が主役となる新たな仕組みを構築することで、グリーン成長戦略を推進する。また、グリーンエネルギーが普及・拡大していくような社会システムへの変革を、国民の協力のもと進めていく。具体的には、節電については2030年までに2010年比で1100億kWh以上の削減を実現する。その際にピーク需要に関しては、スマートメーターやHEMS、BEMS、デマンドレスポンスなどを活用する。省エネについては、最終エネルギー消費量ベースで、2030年までに2010年比で7200万kl以上の削減を目指す。
第三の柱が、エネルギーの安定供給だ。第一と第二の柱を実現するためにも重要な課題であり、化石燃料などのエネルギー源について十分な電源を確保するとともに、熱的な利用も含めて高度な効率化を図る。それとともに、次世代エネルギー技術の研究開発を加速する。また、これら3つの柱を実現するために、電力システム改革を断行するとしている。市場の独占を解消して競争を促し、発送電を分離することで分散ネットワーク型システムを確立する。
さらに、地球温暖化対策を着実に実施していくことも表明している。政府は、以上の内容を踏まえて、原子力やグリーンエネルギー、電力システム、温暖化対策などに関する計画や大綱をまとめる方針だ。