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人気のリカバリーウェアはなぜ生まれた?シリーズ累計販売数210万枚を突破、業界先駆者の「ベネクス」に躍進の理由を聞く

  • 2025年6月3日
  • Walkerplus

長時間の労働、仕事量、人間関係、睡眠不足…これらのストレスが原因で、慢性的な疲労を抱えているという人は少なくないだろう。そんな人たちに向けた着用して休むことで疲労回復をサポートしてくれる「リカバリーウェア」が市場を拡大している。

「リカバリーウェア」を最初に世に放ったのがVENEX(ベネクス)。2010年から販売をスタートし、シリーズ累計販売数は210万枚を突破。アスリートや著名人の愛用者も多数いる。ベネクスはなぜ、「リカバリーウェア」という新しいジャンルの商品を作り出せたのか?株式会社ベネクスの代表取締役 中村太一さんに話を聞いた。

株式会社ベネクス代表取締役の中村太一さん。ベネクスのリカバリーウェアはアスリートの間で人気に火がつき、今ではスポーツ業界に限らず多くのファンを持つ
株式会社ベネクス代表取締役の中村太一さん。ベネクスのリカバリーウェアはアスリートの間で人気に火がつき、今ではスポーツ業界に限らず多くのファンを持つ / 【写真撮影=樋口涼】

■床ずれ防止用マットは売れず。ピンチからの大逆転劇
中村さんがベネクスを立ち上げたのは2005年。大学卒業後コンサルティング会社に勤めたのちの起業だった。

「高校2年生のとき、ラグビーの試合で脳内出血を起こす怪我をして生死をさまよったんです。これがきっかけで『やれること、やりたいことを全力でやる』という志が生まれました。3年後には起業をすることを目標に、コンサルタント会社に勤め、そこで介護業界のことを知り、ビジネスチャンスがあると考えました。寝たきりの方の多くの悩みは“床ずれ(褥瘡 じょくそう)”です。同じ姿勢で寝ていることで、体とマットの接触部分で血行不良が起きて内出血や水ぶくれができ、ひどいときは壊死してしまいます。ベネクスを立ち上げたとき、この床ずれを解消する介護用マットの開発に着手しました」

床ずれを防止するための手法として、血流を阻害しないよう体圧を分散させるマットを考案。しかし、「高齢者、しかも寝たきりの方は血流が悪いので体圧の分散だけでは問題の根本的解決につながらなかった」のだそう。

血流自体を改善する必要がある。そこで注目したのが遠赤外線を出すプラチナをはじめとする鉱物素材だった。当時、材料を100ナノメートル以下の細かい粒子にした“ナノ素材”が注目を集めた時期でもあり、プラチナなどの鉱物をナノ素材にし、それをさらに繊維に活用できればいいと考えた。全く新しいアイデアだったため、素材をナノ化し、血流改善に最適な特殊素材を開発することも、その特殊素材を繊維にすることも協力会社を得るのに苦労したが、2007年に商品開発までこぎつけた。

ベネクスの商品にはすべてナノプラチナなどの鉱物を含んだ「DPV576」を練り込んだPHT繊維を使用している。0.016ミリメートルという細さで作った繊維は、鉱物からできていると思えないほど柔らかな手触りだ
ベネクスの商品にはすべてナノプラチナなどの鉱物を含んだ「DPV576」を練り込んだPHT繊維を使用している。0.016ミリメートルという細さで作った繊維は、鉱物からできていると思えないほど柔らかな手触りだ / 【写真撮影=樋口涼】

「特殊素材『DPV576』はプラチナをベースにし、複数の鉱物を組み合わせることで血流改善に最適な遠赤外線を発してくれます。これをPHT繊維にするにあたっては、リラックスには肌触りが非常に大事だと考えたので、0.016ミリメートル、髪の毛の5分の1の細さに仕上げました。作り上げたPHT繊維を使用したリカバリーウェアの開発においては、体温変化、血流量の測定などを行い、エビデンス取得にも注力しています」

こうして、苦労の末に床ずれ防止用マットができあがったが、なんと全く売れなかった。「10万円で販売しようとしたんですが、『物はいいけど高い』と購入を見送りにされてしまいました」と中村さん。

では、どうやってリカバリーウェアは誕生したのだろうか?

「床ずれマットは全く売れませんでしたが、そこで得た技術が思わぬ形で活かされ、現在につながっています」と話す中村さん
「床ずれマットは全く売れませんでしたが、そこで得た技術が思わぬ形で活かされ、現在につながっています」と話す中村さん / 【写真撮影=樋口涼】

「布を開発するとけっこうな量を作ることになるので、布が余ります。そこで、介護士向けにケアを目的としたウェアを作ったんです。介護士の仕事はハードなので、体調を崩されてしまったり、離職率が高かったりといった問題がありました。そうした方々のサポートになればいいな、ということで参考出品として『ケアウェア』の名前で介護業界の展示会に出したんです。そうしたら、大手フィットネスクラブチェーンのゴールドジムのバイヤーさんが『スポーツのリカバリーに最適だ』と注目してくださいました。当時、“リカバリー”という言葉は一般的ではなく、私たちも『リカバリーって?』という状態だったんですが、その方から『激しい運動によって生じた疲労状態から元の状態に戻すためのプロセス』だと教えていただきました。予想外のところから引き合いが来ましたが、そこからは口コミでどんどん評判が広がっていきましたね。都内の有名百貨店のバイヤーさんが、メンズ館のゴルフ売り場にリカバリーウェアを置いてくださったのですが、顧客に経営者の方が多く、皆さん普段からお疲れだったので、リカバリーウェアをゴルフ着としてではなく、休養のために着てくださり、その口コミが広がる。いい流れができて、どんどん広まっていきました」

■休養は睡眠だけじゃない。さまざまな休養法に合わせた商品を展開
発売当初はスポーツ業界からの引き合いが多かったが、顧客層の広がりと共にアイテムの幅も広がっていった。

2023年に発売された前開きの「リカバリーパジャマ ニットサッカー」(手前)は、顧客からのリクエストから生まれたシリーズ。綿とPHT繊維を合わせることで、機能性をそのままに、衣服内の汗を外に逃がして快適に就寝できるパジャマになっている
2023年に発売された前開きの「リカバリーパジャマ ニットサッカー」(手前)は、顧客からのリクエストから生まれたシリーズ。綿とPHT繊維を合わせることで、機能性をそのままに、衣服内の汗を外に逃がして快適に就寝できるパジャマになっている / 【写真撮影=樋口涼】

「休養というと多くの方が睡眠であると思われますが、実は休養って日々のいろいろなシーンでとれるものなんですね。休養のシーンを拡張してアイテムを提案していくことを意識しています。年齢、性別、職業などさまざまなニーズに応えられる商品ライナップにしています。お客様からもこういうものを作ってほしいという声が毎月のように寄せられ、そこから形にしていったアイテムもあります」

顧客からの声で商品化したもの一つが縦70センチ、横130センチの一枚布タイプの「リカバリークロス+」1万1000円。アウトドア用品店で勤める人からのリクエストで生まれた。ピンク、ネイビー、ブラックの3色展開
顧客からの声で商品化したもの一つが縦70センチ、横130センチの一枚布タイプの「リカバリークロス+」1万1000円。アウトドア用品店で勤める人からのリクエストで生まれた。ピンク、ネイビー、ブラックの3色展開 / 【写真撮影=樋口涼】

「登山中にリカバリーウェアを着たい。でも、荷物を増やしたくないということで、一枚布の商品が欲しいというリクエストでした。登山中に腰がつらくなったら巻いたり、寝るときはブランケットとして使えたりします。ボタンもシリコン製のものを使っているので、肌当たりが優しい上に、割れにくく温度変化にも強いです」

アウトドアの発想から生まれた商品だが、座り仕事が多く、血流が悪くなりがちなオフィスワーカーの人たちにも好評なんだそう。

入浴剤「VITALISE BATH(バイタライズバス)」1個550円、8個3740円(左)とゲル「VITALISE GEL(バイタライズゲル)」3740円(右)
入浴剤「VITALISE BATH(バイタライズバス)」1個550円、8個3740円(左)とゲル「VITALISE GEL(バイタライズゲル)」3740円(右) / 【写真撮影=樋口涼】

「睡眠以外の休養に対してのアプローチとしては、2024年11月から“塗るベネクス”としてゲル『VITALISE GEL(バイタライズゲル)』、“浸かるベネクス”として入浴剤『VITALISE BATH(バイタライズバス)』をリリースしました。いずれもDPV576を含有していて、肌に直接触れるので、よりリラックスした時間を過ごしていただけます」

リカバリーウェアの元祖はベネクスだが、現在同業他社が渦巻いている。いわゆるライバル会社の出現にはどう思っているのだろうか?

「ベネクスの商品は“一般医療機器”の届出を完了しているものがあるんですが、この制度は2022年に新設されました。これにより、明示的にお客様にベネクスの商品のよさをお伝えすることができるようになりました。リカバリーウェアを作っているのがベネクスだけだったら、厚生労働省が一般医療機器というカテゴリーを新設してくれなかったと思います。今後も、ベネクスは真摯なものづくりの姿勢を変えることなく、お客様のニーズに合った商品をお届けしたいと考えております」

リカバリーウェアをただ作るのではなく、“休養”というものを深く考え、“休養”に対してのアプローチを模索しているベネクス。これからもリカバリーウェア業界を牽引する存在になりそうだ。

取材・文=西連寺くらら

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