
右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をわかりやすくコミカルな漫画で描いてきたキクチさん(kkc_ayn)。なかでも、母親の自宅介護と看取りがテーマのコミックエッセイ「20代、親を看取る。」では、自宅介護の現実や、“親との死別”と向き合うなかで複雑に揺れ動く感情が描かれており、同じ経験がある人や親の老いを感じ始めている同世代などから大きな反響を集め、2023年に書籍化された。
コミックエッセイ「父が全裸で倒れてた。」は、母を看取ってから約2年後、今度は父が病に倒れてしまう話だ。母の介護・看取りを経たことで落ち着いて対応できることは増えたものの、あのときとは違い、一人っ子として頼れる家族がいないなかでさまざま決断を迫られることになるキクチさん。いつかは誰もが直面する“親の老いと死”についてお届けする。
今回は、父の保険金を受け取るために必要なことや国の補助金に関するエピソードを紹介。
第18話1-1 / 作=キクチ
第18話1-2 / 作=キクチ
第18話2-1 / 作=キクチ
第18話2-2 / 作=キクチ
第18話3-1 / 作=キクチ
第18話3-2 / 作=キクチ
■父の保険の「指定代理請求人」にしてもらうためサインをもらいに…!
父の保険金を受け取るためには自分を代理人に指定してもらう必要があると、代理店の担当者からアドバイスをもらった作者のキクチさん。民間の保険に入ってさえいれば安心というわけではなく、こういった落とし穴があることに早い段階で気づけたことは幸運だったかもしれない。
「父のように被保険者本人が病気などの特別な事情があるときに、保険金を請求できるのが“指定代理請求制度”というもの。ただ、事前に“指定代理人”を設定しておかないと、いざ被保険者が倒れてしまってからでは初動が遅れてしまう…と痛感しました。母が亡くなった際に保険を見直す機会があったようですが、指定代理人の項目を見落としていたので、家族の形が変わったタイミング(子どもが遠方に引越したなども含め)でチェックすることが大切だと感じました」
第18話4-1 / 作=キクチ
第18話4-2 / 作=キクチ
第18話5-1 / 作=キクチ
第18話5-2 / 作=キクチ
第18話6-1 / 作=キクチ
第18話6-2 / 作=キクチ
透析治療に関する費用補助、「高額療養費制度」や「限度額適用認定証」など国の制度はさまざまだ。ある種、介護とは情報戦であるとも言える側面が垣間見えたが、高額な医療費の心配が減っただけでも気持ちは楽になっただろう。
「治療内容で不安になるたびに、周囲の人に聞いたり、ネットで調べたりしました。調べれば調べるほど、国からの補助が手厚いことを実感。情報が複雑で細かすぎて、補助の対象になるのか・どのように申請したら良いのか、ということを理解するには時間がかかりましたが、最近だとこういった情報はAIがうまく分析してわかりやすくまとめてくれます。特に、検索エンジンと紐づいたAIを活用すれば、“わからないことによる不安”が減っていくと感じました」
代理店をあとにして病院へ向かうと父はICUの個室に移っており、座ることもできている様子。個室の差額ベッド代は気になるものの、ICUに戻って以降で考えると父親の容体はかなり安定しているようだ。果たして、このまま無事に代理人指定のためのサインはもらえるのか…⁉
「ICUの個室はさらに衛生面の管理が徹底されており、父の免疫力が最低まで落ちていると推測できました。面会時に足湯をしてくれていた看護師さんは、父との相性がバッチシ。ちゃきちゃきとしたお姉さんで、『キクチさん、ちょっと座ってみよっか!寝たままよくないよ!』と愛のある厳しさ(笑)。こういう姉御肌な人が大好きな父なので、身体の状態は最悪でも、心は元気で、頑張るエネルギーが湧いているんだろうなと思いました」
保険の落とし穴や、医療費に関する国の補助について描かれた今回のエピソード。つらい状況も淡々と、ときにクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。