
巨大な猫と、捕まった少年の種を超えた交流に心癒やされる短編「猫神オカンはお世話したい」 / 野愛におし(@nioshi_noai)
WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。「ポンコツお嬢様と陰キャ世話係」を連載中の漫画家の野愛におし(@nioshi_noai)さんのオリジナル作品「猫神オカンはお世話したい」もそうした漫画の1つだ。同作は、小さなころから決して涙を流すことのなかった少年「ノボル」が、母の墓参りの日、人の何倍もの巨体の猫に追いかけられる場面からはじまる。自分の死を覚悟し、涙が出かかるノボルだったが、猫は彼を捕まえると、親愛の表現である毛づくろいでお世話。その様子に「デッカイ猫のオカンだ!」と感激するとともに、亡き母の面影を垣間見て感極まるノボル。だが、猫のその優しさにも理由があって……、という物語。人と猫、種は違えどお互いの喪失を癒やす光景に胸が突き動かされる短編だ。そんな同作の制作背景を、作者の野愛におしさんに取材した。
■少年が出会ったのは、子を亡くした巨大猫!涙なしでは読めない感動作
「猫神オカンはお世話したい」01 / 野愛におし(@nioshi_noai)
「猫神オカンはお世話したい」02 / 野愛におし(@nioshi_noai)
「猫神オカンはお世話したい」03 / 野愛におし(@nioshi_noai)
もともとジャンプ+の連載争奪企画に向けて制作されたこの作品。惜しくも結果は2位に終わったが、作者の野愛におしさんは「より主人公に人間味が出るようになったり、どのテンポ感が自分の作品に合っているかを再確認できた」と振り返る。
猫のオカンを描くにあたっては、「本当に存在するかのように見せたい」とリアルさを徹底的に追求。毛の質感や触ったときのつぶれ具合まで細かく意識し、パーツひとつひとつにこだわったという。実際の猫にはあまり見られない額の模様や、耳の毛に人魂のようなデザインを加えるなど独自性を演出したとのことだ。さらに、表情を柔らかくし、目を細める描写を多く使うことで、メスらしさを自然に感じられるよう工夫されている。
野愛さんはX上で「当時のいろんな挑戦が含まれている作品」とも語っている。本作は、漫画の描き方を模索していた時期に取り組んだ作品で、王道のストーリーと技術を自分のものにするために、見開きの使い方や時間経過の表現、ページをめくった際の温度差などを意識的に盛り込んだという。なかでも、セリフのないコマで表情だけで感情を伝える演出は大きな挑戦だったが、「意外としっくりきたので、これ以降は自作品にもよく取り入れている」と話す。本作は野愛さんにとって思い入れのある作品であり、「今読み返すと改善点も多い」としつつ、「いつか一から描き直して、もっと心に残る作品にしたい」と語ってくれた。
家族を失った悲しみと向き合いながら、少しずつ現実を受け入れ前に進んでいく。そんな想いが丁寧に描かれた本作「猫神オカンはお世話したい」。興味のある人はぜひ一度読んでみてほしい。
取材協力:野愛におし(@nioshi_noai)
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