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【マンガで学ぶ相続手続き】相続手続きで重要な戸籍と「検認申立て」について相続の専門家が詳しく解説

  • 2024年5月24日
  • Walkerplus

こんにちは。G1行政書士法人 代表の嶋田裕志です。相続・遺言専門の行政書士として10年以上、年間1000件を超えるご相談にお応えし、行政書士の範囲だけでなく、相続税や不動産など相続に関する幅広い知識をもって各専門家とともに相続手続きを代行しています。

突然ですが、皆さんは、身内の方を亡くされた経験はありますか?

亡くなった人が近しい関係であればあるほど、皆さんは「当事者」として死亡後の手続きに関わることになります。具体的には、その亡くなった瞬間から、通夜、葬儀、役所での手続きなど、とにかく時間に追われながらたくさんの手続きをしなければなりません。

悲しくて、寂しくて、つらくて、耐えがたい状況であっても、手続きは待ってくれません。特に死亡後すぐの手続きには期限があるものも多く、慣れない手続きで心身共に疲れてしまい、体調を崩してしまうという方もたくさんおられます。

ここでは、いざ皆さんが「当事者」になったときに困らず相続手続きができるよう、詳しく解説いたします。

今回は、手書きの遺言書があった際に必要な「検認」の手続きについてお話しします。

法務省の言葉を借りると、戸籍とは「人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもの」です。つまりそれは、その人の親族関係を公的に証明する書類であり、出生・死亡はもちろん、婚姻・離婚・縁組などの重要な身分関係が記載されています。

日常生活の中で戸籍を見る機会はあまりないかもしれませんが、相続においてはそれを取得して読み解き、相続関係を明らかにすることが必要になってきます。その際、戸籍を取得してはじめて家族ですら知らない事実が判明する、ということも少なくありません。

ここではまず、戸籍の取得によってそういった状況に遭遇した事例をいくつか紹介しつつ、自筆証書遺言を見つけたあとの「検認」の手続きにおける必要書類と流れを解説します。

■戸籍を読み解いて初めてわかることもある

相続手続きに必要な戸籍を取得していくなかで「初めて知る事実に遭遇した」というケースのうち、比較的よく遭遇する3つのケースをご紹介します。

【ケース1:故人に離婚歴があった】

戸籍には、婚姻・離婚の事実が記載されます。

もちろん本人が過去の経験を伝えていることも多いと思いますが、たとえそれを伝えていなかった場合でも、戸籍を取得していくことで過去の婚姻・離婚歴がすべてわかります。

なお、婚姻中の配偶者には相続権がありますが、離婚していれば相続権はありません。

【ケース2:故人に子どもがいた】
上記の婚姻・離婚とも関連しますが、過去の婚姻期間中に子どもを授かっていたり、婚姻していなくても認知した子どもがいたりすれば、もちろんその事実は戸籍に記載されています。そして、たとえ異母兄弟(異父兄弟)であったとしても、故人の実子であれば相続人になります。

想定していない相続人がいた場合、遺された家族は面識の有無にかかわらず一緒に相続手続きをしなければならず、その労力は大変なものになります。

【ケース3:相続人が他界していた】
あまり付き合いがなかった人であれば、戸籍を取得して初めて他界していたことを知ることもあります。

当然ですが、相続人は「今、生きている人」です。
・故人よりも先に他界していた場合
・故人よりもあとではあるが、故人の相続手続きが終わる前に他界していた場合
など、相続人が存命かどうかで相続関係も大きく変わります。

相続手続きにおいて最も重要なことは、相続関係を明らかにすることです。取得した戸籍を読み解くことで、想定していた相続関係と異なってくることもありますので、決して他人事と思わず、一つひとつ戸籍をしっかり確認しましょう。

■検認の申立てに必要なもの

自筆証書遺言が法務局以外の場所で保管されていた場合に必要となるのが、家庭裁判所での「検認」です。ただ窓口に遺言書を持参すれば受付されるわけではなく、必要書類をそろえて提出する(申立てする)必要があります。

この手続きは、ご自身ですることもできますし、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。 ここでは、検認の申立てをする際に必要となるものをご説明します。

1.家事審判申立書(遺言書の検認の申立書)・当事者目録

書式は裁判所のホームページからダウンロードできます。記入例も記載されていますので、それを参考に記入しましょう。
「申立ての趣旨」については定型で問題ありませんので、「遺言者の自筆証書による遺言書の検認を求めます。」と記載します。

「申立ての理由」については、遺言書をどのように発見して(または預かり)、保管していたのか、遺言者の死亡の事実や申立てにいたった経緯を記載すれば問題ありません。

なお、申立書には別紙として当事者目録(相続人等の情報を記入する用紙)を添付する必要があります。 この目録には、相続人全員の住所や氏名、生年月日などを記入します。 検認の申立ての前には戸籍の取得を行い、相続関係を明らかにしておきましょう。 家庭裁判所は、これに記載された住所地へ検認についての案内を送付しますので、正しく記載しましょう。

裁判所に提出する書類というとすごく難しいものと想像されるかもしれませんが、記入例を参考にすれば、それほどつまずくことなく書くことができるでしょう。

2.相続関係を明らかにする戸籍謄本等

検認は、遺言者の法定相続人「全員」に参加する権利(※義務ではありません)がありますので、申立てに際しては、法定相続人「全員」が誰なのかを戸籍上で明確にする必要があります。

具体的には、
・遺言者の出生から死亡までの一連の戸籍
・相続人の現在戸籍
を漏れなくそろえるということですが、一番のポイントは「誰が相続人か」です。

たとえば本来相続人になるはずだった人が遺言者より先に他界していた場合は、遺言者だけでなく、先に亡くなっている人の出生から死亡までの一連の戸籍も必要になります。なぜなら、代襲相続といって、先に亡くなっている人の子や孫が相続人になる可能性があるからです(※遺言者の父母が相続人であり、かつ、どちらか一方だけが先に他界している場合は、その先に亡くなっている人の一連の戸籍は不要)。

また、前述のとおり、戸籍を取得する中で新たな相続人が判明するケースもありますが、当然その人も法定相続人のひとりとして検認に参加する権利があり、また相続する権利を有することになります。

こうして必要な戸籍をすべてそろえ、「誰が相続人か」が確定したうえで初めて申立てが可能になります。ひとつの役所ですべての戸籍がそろうというケースもありますが、遺言者の出生から死亡までの一連の戸籍を集めるためには1カ月以上かかることも往々にしてありますので、ある程度の時間がかかることを認識したうえで準備を進めましょう。

3.収入印紙800円(※遺言書1通につき)
検認の申立書(家事審判申立書)には収入印紙を貼る必要があり、遺言書(封書の場合は封書)1通につき800円と定められています。郵便局だけでなくコンビニや裁判所の売店でも購入することができますので、必要な分だけ購入して申立書に貼り付けましょう。

4. 裁判所からの連絡用の郵便切手
検認期日(家庭裁判所で検認する日)が決まると、家庭裁判所から申立ての関係者(法定相続人等)に対して検認の案内が通知されます。その際の郵便切手を申立ての時点で前もって裁判所に渡しておきます。

金額は通知する人数によって異なりますので、申立ての前に裁判所に問い合わせて、切手の種類と枚数を確認しておきましょう。

なお、
・申立ての関係者全員
・相続人全員
は必ずしもイコールを意味するとは限りません。
たとえば、遺言書を相続人「以外の人」が保管していた場合、その保管者が検認を申立てる人(検認の申立人)になりますが、必ずしもその人が遺言書の中で財産を受け取ることになっているとは限らないからです。

■検認の申立てをしたあとの流れ

必要書類の準備ができたら、家庭裁判所にそれらを提出(申立て)します。申立てはどこの家庭裁判所でもよいわけではなく、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。裁判所のホームぺージに管轄が掲載されています。

住まいと対象の家庭裁判所が遠く離れていたり、なかなか窓口に足を運ぶ時間がない場合は郵送でも受付をしています。希望する方は直接問い合わせてみましょう。

検認期日の決定(裁判所→申立人)
家庭裁判所が申立てを受け付けし、必要書類に不備のないことが確認できれば、書記官の方から申立人に対して検認期日についての相談の電話が入ります。申立人は検認への参加が必須ですので、裁判所を訪れることができる日を書記官の方と相談して決めます。

地域や裁判所によって異なりますが、たとえば「検認する曜日を決めている裁判所」や、「1カ月先まで予約がいっぱいの裁判所」など状況はさまざまです。検認がかなり先の日程になってしまうことも想定しておきましょう。

検認期日の通知(裁判所→申立ての関係者全員)
検認期日が確定すると、申立ての関係者全員に対して家庭裁判所から通知書が送られます。そこには、検認の日付、時間、場所、注意事項などが記載されています。裁判所によっては事件番号や遺言者名なども記載されており、形式はさまざまです。

この通知書を受け取った人全員に、検認に参加する権利がありますが、欠席した場合は遺言書の内容を確認することができません。後日、申立人やほかの参加者に連絡をして内容を確認するか、裁判所へ「検認調書」を請求して内容を確認することになります。

ここまで、自筆証書遺言の検認の申立てについてお話ししてきました。次回はいよいよ検認の当日の流れについてお話していきます。

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