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【最終回】保護者参観日におばあちゃんの前で読んだ、家族についての作文。バッドボーイズ清人が描く家族の物語「おばあちゃんこ」【作者に聞いた】

  • 2024年4月5日
  • Walkerplus

お笑いコンビ・バッドボーイズのボケ担当でおなじみの清人さん。地元・福岡の海沿いの町で過ごした幼少期の日常と家族のことをテーマにした漫画「おばあちゃんこ」を描き始めた。かなり特殊な家庭環境にあって、さらに身体に障碍を抱えながら、幼い清人さんを育てる哲子ばあちゃんがこの物語の主人公。



連載最終回となる今回は、保護者参観の日の一コマ。「僕の家族」という作文をきよっぴがおばあちゃんの前で読み上げます。小学3年生当時と現在の、家族に対する思いの変化を作者のおおみぞきよとさんに語ってもらいました。

■みんな人間臭く一生懸命生きていた

――保護者参観に来てくれるのは、いつもおばあちゃんだったんですか?

そうですね、近所のおばちゃんに学校まで連れてきてもらって。他のお母さんたちと年齢差があまりに違うんで、やっぱり目立ってしまって、教室がざわついてました。

――きよとさんとしては、ちょっと恥ずかしい感じだったんですか?

「来ないで」とまでは思わなかったですけど、恥ずかしかったですね。あと、やっぱり保護者参観の日は少し寂しかったです。「僕にもお母さんがいたらな」とか思ってしまいました。

――それにしても、小学3年生が「天国と地獄」について作文を書いていると大人はちょっと心配になりそうですね。

これが意外と大絶賛だったんです。先生から始まって、他の現場にいたお母さんたち、口コミで(ばあちゃんの次男の)かーぼの耳にも入って、あとで褒められたのを覚えています。

――天国とか地獄とか、いつも感じていたんですか?

本とかで「天国と地獄」の話が出てきた時に、それを信じられなかったんです。どちらも一般的にあの世にある設定じゃないですか。でも僕は「今」をあえてあの世として描いているのかな、とか考えたりしてたんです。今振り返ると、目の前に地獄も天国もあるじゃん!って考えている子どもはちょっとヤバいですよね(笑)

――マンガで描いている以上の地獄を当時感じていたんですか?

やっぱり(ばあちゃんの長男の)マサおっちゃんのことが子ども的には辛かったですね。僕には危害を加えないものの、酔って帰ってきては大声出して暴れて、ばあちゃんを引きずり回して……。保育園の時からずっと、「家帰るのイヤだな、マサおっちゃんいるのかな」って悩んでましたね。

――マサおっちゃんがいなければいいのに、と?

うーん、めちゃくちゃ難しいです(笑)。愛おしい部分は絶対にあるんです。第三者から見たら「こいつはなんなんだ⁉」って絶対になるんですけど、僕はそこまでは思えなかった。憎めないっていうか……。マサおっちゃんの存在が地獄というよりも、お父さんもお母さんもどこにいるのかわからないとか家が貧しかったりとか食べたいものを食べられないとか、そういうことが蓄積したうえで、マサおっちゃんがトドメになっていた、というのが正確なところでしょうね。僕の周りにはいいことが一個もないのに、マサおっちゃんあんたまで……っていう。

――そんな過酷な家庭環境の中で、それでもおばあちゃんのことを笑わせたいと思えるってすごい愛情ですね。

なんでそんなにばあちゃんのことを好きだったか、あんまり覚えてないんです(笑)。でも、今の芸風とはかけ離れているんですけど、女の人のふりをして踊ったりして笑わせようとしてました。まあ、ばあちゃんは見えないんですけどね。

――そんな孫がいることは、おばあちゃんにとってもきっと天国だったでしょうね。

よく笑ってくれて。ばあちゃんが亡くなるまでずっとその関係のままでした。大人になってから老人ホームにばあちゃんを訪ねた時も笑わせようとしてました。いじり過ぎて、ばあちゃんが怒りだしちゃう時もあったりして。……難しかったです(笑)。

――単行本の『おばあちゃんこ』を出したことも、あの世のおばあちゃんを笑わせようとすることなのかもしれませんね。

でも、今回作品にするにあたって「美化しない」ということを強く心掛けたんです。目が不自由なのに親代わりになって孫を育て上げた聖人のような素晴らしい人、ではなくて、50も離れた孫に対して時に理不尽に怒ったり拗ねたりもするっていう人間らしい不完全な部分をリアルに描けたと思うんで……だから笑ってはくれないかもしれないですね。

――一冊描き終えてみて、当時の家族についてあらためて気づいたことはありましたか?

どう取り繕っても、ただただ地獄だったんですよ。「なんだ、この大人たちは!?」とか、ばあちゃんに対しても「なんで子ども相手にここまでキレたりするんだ⁉」っていう消化できない気持ちがずっとあったんです。でも描き終えたら、家族に対して言葉で表せない愛おしさというか、地獄のようなあの頃を包み込めるような自分に気づいたらなってたんです。本を描く以前は許せていなかったことも、「そっか、みんな人間臭く一生懸命生きていたんだな」ってなんか温かい気持ちが初めて感じられたように思います。

本連載の最終回を飾ったこのお話は、単行本では序章として巻頭に掲載されているもの。単行本でしか読めないエピソードもたくさんあるので、よかったらぜひ手に取ってくださいね。ではまたお会いしましょう!





■おおみぞきよと
X(旧Twitter):https://twitter.com/kiyotomanga

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