
つらくても「食べる」、「食」を通じて心の病から少しずつ自分を取り戻していく、そんな経験を描いたコミックエッセイ「心曇る日は ご自愛ごはんを」。連載第2回目は、あるものでちゃちゃっと作った“てきとう”みそ汁。どうしてもご飯を作るのがしんどい、でもほっとする味がほしい。そんなときにぴったりの一品を紹介する。
会社員として忙しくも充実した日々を送っていたある日、ふとした仕事のミスをきっかけに体調を崩してしまった作者のうめやまちはる( @umeyama_chi )さん。病気がもとで退職したあと、結婚。専業主婦をしながら回復に専念するも、なかなかよくならないことに不安を感じていた。病気の症状とわかっていても「あたりまえにできていたことができない」せいで、どんどん自信を失っていく。そんなとき、そっと寄り添ってくれたのは毎日の「食卓」だった。生きるために食べる。食べるために料理をする。そのささやかな繰り返しに、少しずつ心がほどけていく。
うめやまさんが自身の経験をもとに綴った本作は、第11回新コミックエッセイプチ大賞を受賞。「食」を通して取り戻していく日常の中に、大切な何かをきっと見つけることができるはず。
■てきとうにするって、むずかしい
「てきとうでいいよ」そんなふうに言われても、そのてきとうがうまくできないことに悩んでいたうめやまさん。特にうつのときは判断力が低下するため、ささいなことが決められなくなってしまう。おかげで夕飯の買い物にも一苦労。何を買えばいいかわからなくなりスーパーを2時間もさまよったあげく、結局はお弁当を買って帰ることに。
疲れ果て、ぐったりとソファに座り込みながら思い出したのは会社員時代の苦いエピソード。あの頃も、てきとうにできない自分に生きづらさを感じていた。
■自分の経験をもとに描く「心曇る日は ご自愛ごはんを」
ちょっとした工夫で、とたんに食卓がいきいきすることがある。スーパーで買ってきたお弁当に、汁物を一品付け加えるだけで、ほっとした瞬間が生まれる。真面目に考えすぎてしまうことに悩んでいたはずが、毎日の料理のことだったら意外にすんなりと「てきとうに」ができることに気がついたのだ。「心曇る日は ご自愛ごはんを」に登場するエピソードについて、作者のうめやまさんに聞いた。
――「心曇る日は ご自愛ごはんを」はコミックエッセイとのことですが、ご自身の経験をもとに描かれているのでしょうか?
自分の経験したことや感じたことをベースに、伝わりやすいように構成し直して描いています。
――汁物はとてもほっとした気持ちにしてくれます。うめやまさんが好きな汁物、おすすめのレシピがあればぜひ教えてください。
鯖缶のお味噌汁が好きです。お鍋に鯖缶と水と根菜類と味噌を入れてぐつぐつ煮て、最後にカイワレをいれます。具沢山でおいしいです。
――食は生活の基本のように思います。会社員時代、大変だったころはどんな食生活でしたか?当時も自炊されていたのでしょうか。
働いていたころはスーパーでネギトロを買ってごはんにのせるだけとか、トーストにホイップクリームとチョコソースをかけて食べるのとか、栄養のことは考えずに好きな味で手軽に食べれるものばかり食べていたように思います。
――読者に向けてメッセージをお願いします。
てきとう味噌汁、とっても簡単なので、ごはんに汁物を足したいときやちょっと小腹がすいたときなどに作ってみてほしいです。
料理が得意な人も、そうでない人も、ふと作ってみたくなる、食べてみたくなるような心に沁みるレシピが登場する「心曇る日は ご自愛ごはんを」。今後も連載形式でお届けしていく。
取材協力:うめやまちはる(@umeyama_chi)