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総いいね1000万超えの話題作「気になってる人が男じゃなかった」。好きなもので通じ合うJKが尊い!【担当編集に聞いた】

  • 2023年8月5日
  • Walkerplus

好きなものがあったとき、人はその話をしたくなるというもの。ただ、その好きなものがニッチで周囲の人に理解されにくいものだった場合、自分の気持ちを押し殺してしまうこともあるかもしれない。好きなことをひとりで抱え込んでいた2人が出会い、女性同士の愛情を深めていく姿を描いた新井すみこさん(@agu_knzm)の「気になってる人が男じゃなかった」がTwitterで評判だ。

女性高校生の大沢あやには最近気になっている人がいる。それはCDショップの店員。黒ずくめのファッションに身を包んだ“彼”はクールで、あやは彼を“推している”。しかし、彼の正体は、学校であやの隣に座っている古賀みつきで、彼ではなく“彼女”だった。

いわゆる“陽キャのギャル”が推しているのが学校では“陰キャ”で、しかも女性。あやは推しの正体に気づくのか?2人の気持ちはどこに向かうのか?先が楽しみになる展開の漫画は瞬く間に評判になり、第1話には7.5万RT、43万いいねがついた。2023年4月に単行本が発売され、新人漫画家として異例の初版12万部を記録した。担当編集者に、本作の魅力を聞いた。

■絵で魅せる!登場人物たちの心情がリアルに迫る
1つのツイートで投稿できる画像枚数は4枚。この制限に合わせて、本作は毎話4ページで進行している。そのため、1つのエピソードで語られる物語は短めで、その分あやとみつきの心情が丁寧に描かれている。

本作は投稿されるたびに100以上のリプライが寄せられているが、海外ユーザーからの声も目立つ。登場人物たちの細かい心情の変化を表情などでしっかりと表現しているため、直接的にセリフの文字が読めなくても、内容が理解できるのかもしれない。西條さんも本作の最大の魅力は絵だと感じているそう。

「なんといっても絵の魅力が凄まじいと毎回思います。画力はもちろんのこと、キャラクターの表情、構図、演出から物語を感じさせます。この子たちをもっと見ていたいと思わせる。情報が濁流のようにあふれているツイッターでも、思わず目をとめてタップしたくなる力があると感じます」

また、本作で印象的なのは黒と鮮やかな黄緑の2色で描かれているところだ。背景に黄緑が入ることで、タイムライン上でパッと目を引く効果を生んでいる。書籍化にあたっては、この黄緑の再現にこだわったとのこと。

「本作は鮮やかなグリーンがなんといっても欠かせない要素です。RGB(光の三原色であるレッド、グリーン、ブルー)のWebとCMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、黒)の紙では色の表現の仕方が違うので、デザイナーさんや印刷会社の方々に知恵と労力を尽くしていただき、Twitter投稿とギャップのないグリーンが再現できたと思います。書籍の描き下ろしでは物語上、重要なエピソードが収録されています。冒頭はフルカラーなので、カラー版みつきとあやをぜひご覧いただきたいです」
■一方的に助けてもらってばかりではない。主人公2人の関係性が尊い!
あやとみつきの共通点は洋楽ロックが好きなこと。しかし、2人ともそのことを誰かと共有することができないままでいた。学校で友人らしい友人がいないみつきはもちろんのこと、あやも仲のいい友人に自分の好きな音楽の話をしても「てかフツー聴かないっしょ」と言われてしまう。そして、みつきは自分がCDショップの“おにーさん”であることを明かすことができないまま、“おにーさん”とあやは洋楽ロック好きとして交流を深めていく。

あやとみつきの関わりのなかで、重要な役割を果たすことになっていくのが「俺にとって世界で一番イージーなことは女子に助けてもらうこと」と豪語するクラスメイトの成田くんだ(とは言っても、みつきとあやは成田くんになびかない)。一見、成田くんはあやとみつきの仲を引っ掻き回すヒール的な役割を担うのかと思いきや、その反対で、あやとみつきの仲を押してくれるキューピット的なキャラになっていく。成田くんの優しさが際立つのが「つかまえて」のエピソード。西條さんに一番好きなエピソードを聞いたところ、「難しい質問ですね……」としつつも選んでくれた回でもある。

「正直全話お気に入りなのですが、特に思い入れがあるのは『つかまえて』です。読んでいただきたいので詳述はしませんが、あやに“おにーさん”の正体がバレて、避けられてしまうという一連の流れの中でのお話です」

自分の感情を押し殺すことで、つらい、寂しいといったネガティブな感情を持たないですむと考えてるみつきは、あやとの関係をなかったことにできたら…と思ってしまうシーンだ。

「『何も感じたくない』とみつきが泣いてしまうページ。みつきに共感する人も少なくないのではないでしょうか。すごくつらいことがあったとき、感情を殺してしまえば痛みを感じないままやり過ごせるかもしれない、と思う。自分の殻に閉じこもろうとする。そこに他者が割って入ってきて、『それでいーの?』と呼びかけてくれるのは、すごくいい話だなと思います。人によってはお節介に思うかもですけど、境界線を越えて声をかけてくれる人に救われることもありますよね」

陰キャだと自称するみつきは、コミュニケーション能力に長けたキャラクターではない。あやに正体を明かさないまま付き合いを続けてしまったり、陽キャに対して苦手意識があるせいで、学校でのあやとの接し方もぎこちなかったりする。成田くんや、CDショップの店長でもあるおじのアドバイスを受けて、あやと向き合っていく。しかし、みつきは一方的に助けてもらってばかりではない。ニッチなものが好きであることを表に出せないでいるあやの寂しさを救っているのがみつきなのだ。その関係性が、多くの読者に2人を“尊い”と言わしめる理由なのだろう。「気になってる人が男じゃなかった」は現在もTwitterで週末に更新中。あやとみつきの尊い関係がどこに発展していくのかに注目だ。

取材・文=西連寺くらら

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