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なぜパンをカニの形に…?「かにぱん」がパンダやうさぎを抜いて唯一の生き残りとなったワケ

  • 2023年4月8日
  • Walkerplus

スーパーやコンビニのパンコーナーで見かける「かにぱん」。その名の通りカニの形をしたパンで、子供から大人まで幅広い世代に愛されている商品だ。およそ50年前に誕生して以来、味も形もほとんど変わっておらず、長年贔屓にしているファンも多いという。

しかし、「なぜ“カニ”の形を模しているのか」を考えたことはあるだろうか。当たり前のようにパンコーナーに並ぶその素朴なたたずまいに、そんなひっそりとした疑問が生まれた。

そこで今回は、三立製菓株式会社企画課の望月沙枝子さんに、かにぱんの誕生秘話を取材。 果たして、かにぱんが愛され続ける理由とは?

■実は貴重な“生き残り”!「かにぱん」の誕生秘話
かにぱんが生まれる前、三立製菓は関西を中心に「サンリツパン」という商品を販売していたという。これは通常のパンより日持ちするうえ、糖分も多いので“そのまま食べてもおいしいパン”として人気を集めていた。そのノウハウを生かして国内で初めて発売したのが、金型でさまざまな形にくり抜いた「カットパン」だった。

「当時ブームになっていたボウリングのピンから着想を得た『ストライクパン』や、うさぎの形の『うさぎぱん』、パンダやSLなど、多くのカットパンを世に送り出してきました。かにぱんはその1つとして1974年に誕生しました。なぜカニの形に落ち着いたのかは定かではありませんが、いろんな形のパンにチャレンジした末、最終的にカニが1番人気になったようです」


パン生地をくり抜く金型は職人がすべて手作業で作っており、よりカニらしく見えるように工夫を凝らしたそうだ。表面だけでなく、裏面に本物のカニのおなかのような溝があるのもこだわりなんだとか。望月さんは「カニらしいビジュアルにこだわったり、均等に火が入るように調整したりなど、計算し尽くして型を完成させました」と話す。

さらに、かにぱんはほぼ長方形であるため、パンをカットした後のロスがとても少なく、無駄がないところも長く販売できる理由だという。三立製菓は過去にさまざまなカットパンを発売してきたが、そのなかでかにぱんは唯一の“生き残り”と言える。

「かにぱんが現在まで販売されていることは本当に偶然ではありますが、ほかのパンにはない、ちぎって食べられる楽しさと手軽さから人気になったのではないかと推察しています。あと、日本人がカニ好きなのも要因なのではないかと思いますね」

望月さんが言うように、ほかのパンと一線を画すかにぱんの魅力といえば“ちぎれること”。カニの足をちぎることで好きなサイズにして食べやすくできたり、ちぎった足を組み合わせることでカニから変身させられる楽しさがある。 そのため、三立製菓はかにぱんを用いた知育活動に力を入れているそうだ。

「カニの足のちぎりかたによっては、トンボやカエルにもなるんです。足のちぎりかたをパッケージにも載せていて、“楽しみながら食べられるパン”ということをより多くの消費者に知ってもらえるように工夫しています」

■乳酸菌の配合も…かにぱんの見えない変化とは?
かにぱんは発売当初から形を変えず販売されており、素朴な味わいが特徴だ。長年食べている人は「昔から味が変わっていない」と感じるかもしれない。しかし、基本的な味は変えないようにしているものの、風味や食感は改良を重ねているそうだ。

「ファンのみなさまに気づかれないように、こっそりとマイナーチェンジを続けています。突然味を変えてしまうと、長年愛してくださっている消費者を裏切ることになりますから…。そのため、ところどころは改良を加えつつも、変わらないおいしさを提供しています」

直近の大きな変化は、「乳酸菌」が配合されたことだ。しかし、それ以外の風味や食感に関することは特に記載されておらず、改良も必要最小限に抑えられている。時代によって人間の味覚や好みなどは変化していくからこそ、三立製菓は誰にも悟られないマイナーチェンジを繰り返しながら、いつ食べても変わらないおいしさと安心感をファンに届けている。

「もう1つ、大きく進化したのは『保存技術』です。もともと消費期限は長く設定していたのですが、最近では包装を改良して45日とさらに長期間保存できるようになりました。その特徴から、長距離を移動するトラック運転手の方などからもご好評いただいていると聞いています」

■“多くの人が安心して食べられるパン”を目指す
最近では「かにぱんお姉さん」という新たなキャラクターが生まれ、SNSやテレビで活躍しているそうだ。主な活動としては、かにぱんのアレンジレシピの発信や、食育と知育を担うイベントの開催など。 さらに根強い人気を誇るかにぱんはグッズ展開も行っている。もはやパンの域を超えた活躍ぶりだ。

また、アレルギーを持っている人への配慮もアップグレードを続けている。これまでは「卵を使った製品と同一ラインで製造しています」という表記をどうしても抜くことができなかったという。 しかし近年は他製品との製造ラインを完全に分離し、アレルギー表記は小麦粉・乳・大豆のみとなった。

「原材料の選定は徹底しているので、給食に出しても謙遜ないのかなとも思います。今後も、たくさんの人に安心して食べてもらえるように取り組みを続けていきたいです」

2024年には誕生50周年を迎えるかにぱん。今こそ、誕生時から変わらない味を楽しんでみては?

取材・文=織田繭(にげば企画)

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