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コーヒーで旅する日本/九州編|一度は諦めかけた夢が導いた、コーヒーへと真っ直ぐに伸びる道。「YOAKE COFFEE」

  • 2022年12月5日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第54回は、大分市中央町の「YOAKE COFFEE」。JR大分駅から徒歩約5分、ガレリア竹町というアーケード内に店を構え、同じ建物内にはドーナツショップと惣菜店もある。建物はTAKENISHI TERRACEという名称通り、店内のイートインスペースに加え、テラス席を備える街の憩いの空間だ。店を営むのはバリスタの宝満洋平さん。地元である大分にコーヒーショップを開くことを夢見て、そしてそれを叶えた宝満さん。これまでの歩みを聞くと、コーヒーに傾ける情熱も自ずと見えてきた。

Profile|宝満洋平(ほうまん・ようへい)
1985(昭和60)年、大分県宇佐市生まれ。大学卒業後、一度はサラリーマンとして働くも、海外で暮らす夢を叶えるために一念発起し、退職。ワーキングホリデー制度の年齢制限を迎える直前の29歳でオーストラリアへ。現地で1年間暮らす中で、日常的にコーヒーがあるオーストラリアのカフェカルチャーに魅了され、いつかは自身のコーヒーショップを開くことを決意。帰国後、長野県の丸山珈琲で約2年、その後、福岡市のハニー珈琲で約3年、バリスタとして腕を磨く。2021(令和3)年3月、大分市内に「YOAKE COFFEE」をオープン。

■オーストラリアでの経験が人生を変えた
「YOAKE COFFEE」の宝満洋平さんの人生を変えたのは、中学生の時。語学研修のため2週間滞在したオーストラリアでの経験を大人になっても忘れることはなかった。「その時の体験をきっかけに『いつかは海外で暮らしてみたい』という夢が芽生えました。ただ、徐々にその目標も薄れていったんですが、普通にサラリーマンとして働いていた20代半ばで『やっぱり海外で暮らしてみたい』という思いを強くしました。やらずに後悔するぐらいなら、失敗しても良いからやってみようと決意して、28歳で会社を辞めました」と宝満さん。

その後、すぐにワーキングホリデー制度を利用し、オーストラリアへ渡った宝満さん。その当時はコーヒーは普通に好きという程度で、自身がコーヒーに関わって生きていこうとは考えていなかったそうだ。ただ、オーストラリアは世界的にみてもコーヒーが身近にある国。現地の人々は出勤前にコーヒーをテイクアウトし、仕事の合間にコーヒー片手にミーティングをし、仕事終わりにまたコーヒーショップに立ち寄るなど、コーヒーと日々の暮らしは切っても切り離せない。その暮らしを間近で目にした宝満さんのベクトルは一気にコーヒーに向いた。

■正攻法にこそ自身の答えがある
「バリスタになる」という確かな目標をもって帰国した宝満さんは、まったくの未経験ゆえに、しっかりと勉強できるコーヒーショップで働くことに決めた。それが、長野県の丸山珈琲。言わずと知れた日本を代表するコーヒーショップの一つだ。「九州を離れることはまったく気になりませんでしたし、一から勉強するならしっかりと学べるコーヒーショップが良いと考えました」

この選択からして、宝満さんのマジメな性格がうかがえる。やるからには然るべきところで修業したいと考えるのは当たり前かもしれないが、一切の躊躇なく、夢を叶えるために一直線に進み始めたのは、宝満さんの性格あってのことだろう。

30歳とやや遅咲きでバリスタの道を歩み始めただけに苦労もたくさんしたそう。ただ、「丸山珈琲で働いた2年間は、今の僕の土台になっています。コーヒーの入口が丸山珈琲で良かったと今も強く思いますし、サラリーマンを一度辞めて退路を断ったことも逆に良かったのかもしれません」と長野で過ごした2年間を振り返る。

■リスペクトの心を忘れずに
次のステップとして選んだのは、福岡のハニー珈琲。コーヒーの基礎は丸山珈琲で学ぶことはできたが、まだまだ深いところまで勉強をしたいと考えた上での転職。そんな話を聞いて感じるのが、宝満さんの堅実さだ。「ほかのコーヒーショップを見てみたい」「もっと知識を深めたい」といった向上心に加え、「自分はまだまだ」と過信することなく、福岡でのバリスタ修業はスタートした。

ハニー珈琲ではアイランドシティの店舗を任されるなど、日々コーヒーを淹れることで、バリスタとして着実に成長。「そういった機会を与えてくれたハニー珈琲さんには感謝しかない」とも話す。

その後、ハニー珈琲のアミュプラザおおいた店(現在は閉店)にて店長として約1年半勤めた。ただ、すでにこの時、宝満さんは地元の大分で開業する目標を明確に持っていた。「アミュプラザおおいたの店舗に異動する際、近いうちに独立したい旨を会社には伝えていました。それでも店舗を任せていただけたのはありがたかったですね」と宝満さん。

■今の自分ができる100%を抽出に込めて
そして2021(令和3)年3月、「YOAKE COFFEE」がオープン。ハニー珈琲店舗統括マネージャーの井崎さんが会社在籍中から開業に際し、さまざまな相談にのってくれたそうで、そんな縁から「YOAKE COFFEE」ではハニー珈琲のコーヒー豆を使っている。

「生豆の品質も素晴らしいですし、なにより素材本来の味わいを生かした焙煎をされています。たまに『自家焙煎はされないんですか?』とお客様に聞かれることもありますが、僕にはハニー珈琲さんのような焙煎は間違いなくできません」と宝満さん。

店を開いてから自家焙煎にシフトするのはコーヒー業界ではよくあることだが、現時点では宝満さんは一切それは考えていないそうだ。それよりも自身が惚れ込んだコーヒーの味わいをどれだけ邪魔することなく、ストレートに液体に落とすことができるかという点に重きを置いて日々抽出している。新しいことに挑戦するのはもちろん良いことだが、宝満さんはバリスタとしての技術をどれだけ高められるかを重視しているということだろう。この潔さも、愚直なまでに真っ直ぐな宝満さんらしい。

豆のラインナップは深煎りのジェノバブレンド、中煎りのシングルオリジン2種の計3種。コーヒー系のメニューはエスプレッソベースのアメリカーノ(500円)、カフェラテ(600円)、カプチーノ(550円)など定番系がメインで、それにドリップコーヒー(500円)があるだけ。メルボルンのチャイ(600円)、長野県の信州りんごジュース(500円)などコーヒー以外のドリンクもあるものの、メニュー構成は非常にシンプルだ。

「選択肢が多いのはもちろん魅力なのですが、僕としてはそれよりも絶対の自信をもってご提供できる一杯に絞っていきたいぐらいに考えています。どれだけ余計なものを削ぎ落とせるか。それが今の僕が理想とするコーヒーですね」

■宝満さんレコメンドのコーヒーショップは「Rainyday’s Coffee」
「『Rainyday’s Coffee』の店主、近藤さんも一人で店を切り盛りしていることもあり、いろいろ情報交換をする間柄です。僕の店はコーヒーなどドリンクが主体ですが、『Rainyday’s Coffee』さんは焙煎も自家で行い、スイーツも手作りしている。よく一人でそれだけのことができるな〜、って尊敬しています」(宝満さん)

【YOAKE COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/なし
●抽出/ハンドドリップ(Kalita ウェーブドリッパー)、エスプレッソマシン(VICTORIA ARDUINO BLACK EAGLE)
●焙煎度合い/中煎り、深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/250グラム1620円〜




取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

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