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70年以上の歴史を持つケンミンの「焼ビーフン」はなぜ“今”人気?きっかけはコロナ禍での機転力

  • 2022年10月28日
  • Walkerplus

小麦に含まれるたんぱく質の一種を摂取しない食事法「グルテンフリー」の需要が高まり、米粉を使った食材に注目が集まっている。パンやスイーツ、パスタなど多彩な米粉グルメが登場するなかでも、今新たに話題となっているのが米めんを代表する「ビーフン」だ。

注目されるきっかけを作ったのは、神戸・元町に本社を構える「ケンミン食品」。国内ビーフン市場でトップシェアを誇る食品メーカーで、SNSでは「ケンミンのビーフンはびっくりするくらいおいしい」「簡単でうまい」「お弁当にもぴったり」など、食べてみたくなる感想が多く寄せられている。

今回は知られざるビーフンの魅力に迫るべく、ケンミン食品 広報担当の平奥恵里菜さんに取材。会社の歴史、商品の開発秘話、注目されたきっかけ、今後のビーフンの可能性など、気になるアレコレを聞いてみた!

■ビーフンにこだわり続けて70年以上。ギネス世界記録にも!
1950年に創業されたケンミン食品。戦後、台湾や東南アジアから引き揚げた日本人から寄せられた「現地で食べたビーフンの味をもう一度食べたい」という声に応え、台湾出身の高村健民氏が神戸で事業を立ち上げたことから歴史は始まった。

創業時は配給米だったインディカ米(日本で言うタイ米)を使用し、高村氏宅の土間で生ビーフンを製造していたという。地元の中華料理店で販売をはじめ、神戸の人々に少しずつビーフンを広めていった。しかし、1958年に日清食品が世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売し、状況は一変。瞬く間にインスタントラーメンブームが巻き起こり、数々のメーカーがインスタントラーメン市場に参入した。他社が即席麺の開発に注力するなか、ケンミン食品はビーフンの製造にこだわり続けたという。

そして1960年、現在の看板商品の1つであり、3分間炒めるだけで簡単に調理できる「ケンミン焼ビーフン」が誕生した。「『どうやって作ればいいか分からない』『作っても失敗する』というお客様の声を受けて、フライパン1つで調理できる味付きのビーフンを作りましたが、開発に至るまでにはさまざまな苦労がありました」と平奥さん。

「ラーメンは瞬間油熱乾燥法(麺を高温の油に入れて乾燥させる方法)で即席麺を開発する一方、ビーフンは油で揚げるとパフ化してしまい、油を使用できないのが課題でした。試行錯誤の結果、熱風で乾燥させる“熱風乾燥法”を考案し、ノンフライのビーフンが実現しました」

数々の困難を乗り越えて開発された焼ビーフンは、鶏ダシが利いた醤油味で味付けされ、ゆで戻しと調味料も不要。“世界一簡単に美味しく料理できる米めん商品”としてロングセラー商品に。今では、1番人気の「鶏だし醤油」をはじめ、「こく旨塩」や「幻のカレー」など種類豊富に展開している。そして発売60周年を迎えた2020年には“最も長く販売されている焼ビーフンブランド”としてギネス世界記録に認定された。

60周年を記念し、“焼ビーフンの思い出”を募集したところ、反響は社内の想像を上回り3000通以上のエピソードが寄せられたという。

「『母から私、私から娘へと三世代にわたって受け継いでいる味です』という感想をはじめ、『小学校の給食で初めて食べた時、そのおいしさに衝撃を受けました』『野菜嫌いの子供が焼ビーフンをきっかけに野菜が好きになり、大人になって野菜ソムリエになりました』『男手ひとつで育ててくれた不器用な亡き父親が、誕生日会にビーフンを出してくれたのが懐かしい』など、たくさんの心温まるお話をいただきました」

感想を見ると、いかにビーフンが家庭で親しまれてきたのかがよく分かる。ちなみにビーフンは地域によって消費量が異なり、西日本を中心に親しまれているそう。特に九州地方での個人消費量が多く、関東地方と比べると約2倍の量が食べられているんだとか。ケンミン本社のある兵庫県でもソウルフードとして馴染み深いので、兵庫県民にとっても特別な味なのではないだろうか。

■コロナ禍で「冷凍ビーフン」の自動販売機が大バズり
ロングセラーを誇るケンミンの焼ビーフンだが、コロナ禍をきっかけに楽しみ方に変化が訪れたという。「巣ごもり需要を受けて『野菜がたくさん食べられる家庭料理』として浸透してきたと思います」と平奥さん。

「カット野菜と合わせてレンジで完成する時短商品『VEGE BE-FUN』(ベジビーフン)をはじめ、豆苗で有名な『村上農園』や、宮崎県産のピーマン『グリーンザウルス』とコラボした商品をコロナ禍で展開してきました。焼ビーフンを販売した当初は『簡単に調理ができる』という点で購入いただいていましたが、現在は『野菜が手軽に食べられ、肉と野菜をバランスよく食べられる食材』としてお楽しみいただく方が増えたと思います」

“ビーフン×野菜”を積極的に打ち出したことに加え、2021年9月にはビーフンメーカー初となる「冷凍ビーフンの自動販売機」を設置したことでも話題となった。

「ケンミン食品本社1階で経営している中国料理店『健民ダイニング』が、コロナ禍で客数が激減しました。そこで社長が『何か新しいチャレンジはできないか』と着目したのが、当時続々と登場していたギョーザの無人販売店や冷凍食品の自販機でした」

業界初となる冷凍ビーフンの自販機はすぐさま話題となり、販売するやいなや1日200食を売り上げ、多数メディアにも取り上げられた。設置後わずか10日間で月間販売目標をクリアし、同年11月には兵庫・丹波篠山市に2台目を取り付けた。現在は全国で6台を稼働させ、日本各地でケンミンのビーフンが楽しめるようになっている。注目された理由について平奥さんは、「コロナ禍でも利用しやすい非対面式かつ24時間購入が可能になったことだと思います」と話す。

「ビーフンの新しい販売チャネルとして、近隣住民との接点拡大や認知向上を目的に自販機を設置しました。2022年6月末時点の累計売り上げは1500万円を突破し、目標の1.5倍を達成しています。コロナ禍前の2019年から大きく業績を伸ばしています」

自販機の登場でビーフンが手軽に食べられるようになっただけでなく、公式サイトでは「米めんレシピ」としてビーフンの多彩なレシピを公開している。

「購入後の調理も楽しんでもらいたいと『KENMIN KITCHIN〜一日一レシピ〜』と題し、毎日米めんレシピを発信しています。ビタミン豊富な豆苗や無限ピーマンを使ったビーフン、簡単カレービーフンなど幅広いレシピを公開していて、SNSでは『カボチャのビーフンを作りましたが、ちょっと和風な感じでほっとする味でした。ビーフンのレシピは無限ですね』など、レシピを見て作ってくださった感想をいただくこともありうれしいかぎりです」

販売チャネルを広げるだけでなく、アレンジ自在なレシピも発信することで、ビーフンの楽しみ方がさらに広がっているようだ。生クリーム不使用のカルボナーラ風、海老のパッタイ風、じゃがいものガレット風など、食欲そそる魅力的なレシピが豊富なのでぜひ挑戦してみてほしい。

■「みんなが一緒に楽しめるように」グルテンフリーへの思い
ケンミン食品では「お米めんメーカーだからこそできること」を追求し、2019年からグルテンフリー食品の開発に取り組んでいる。2022年4月には、静岡にあるグループ会社の工場を約1年がかりでグルテンフリー工場として生まれ変わらせたことを機に、唯一小麦粉が使われていた調味料の醤油を「米しょうゆ」に変更。グルテンフリーの焼ビーフンを完成させた。それにとどまらず、2022年5月には2年がかりで開発したライスヌードルとグルテンフリー工場で製作したスープを合わせた、日本初の冷凍グルテンフリーラーメンを販売。8月には、麺もソースも小麦粉不使用の冷凍グルテンフリー焼きそばを発売したことでも注目を浴びた。

「『GF RAMEN LAB(グルテンフリーラーメンのオンラインショップ)』の所長である大西益央さんと共同で、ご家庭で簡単に食べられるグルテンフリーラーメン『TURUMEN×GF RAMEN LAB黄金の鶏油(チーユ)しょうゆラーメン』を開発しました。今後もグルテンフリー商品の開発を検討しています」と、平奥さん。

今後の展望は?の質問には、「アレルギーや食習慣に隔たりなく、みんなが一緒に楽しめるようにグルテンフリー商品の拡充に力を入れていきたいです」と語る。

「創業72年の歴史を持ち、米めん市場シェアNo.1の企業として培ってきた米めん製造技術を活用し、世界で増えている小麦アレルギーやセリアック病といったグルテン不耐症の疾患のある方に、安心して召し上がっていただける食品を提供していきたいです。世界的に類のないオンリーワン事業として成長させていきたいと思います」

アスリートの健康管理法やダイエットとしても注目を集めている、グルテンフリー。まだ取り入れていない人に対しては「『ゆるグルテンフリー』という食事法を提案したい」とのこと。

「マヨネーズ、味噌、めんつゆなどの調味料にもグルテンは含まれているので、完全にグルテンを排除するのは大変です。そこで、調味料に含まれる小麦は除去せず、めんやパンを小麦不使用の食事に置き換える『ゆるグルテンフリー』という食事法をおすすめしたいです。めんをビーフンに置き換えるだけで糖質制限ができるのでダイエットにも最適です。『時々グルテンを抜いた食事をしましょう』という考え方も広げていけたらと思います」

70年以上、全国の家庭の味として親しまれ続けたビーフンが、ダイエット食、健康管理食、小麦アレルギー対応食としての役割も担い、安心安全な食事を実現させていく。日本だけでなく、ケンミン食品のビーフンが世界中の食卓に並ぶ日を楽しみにしたい。

取材・文=左近智子

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