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好きな人の顔もよく見えない…目の病でどん底の漫画家を救い出した一言に「むちゃむちゃいい話」の声

  • 2022年10月26日
  • Walkerplus

「ビジュアルスノウ」という言葉をご存知だろうか。「視界砂嵐症候群」とも呼ばれる、視界に細かい点がかかったように見える病気だ。原因が分かっておらず、世間的な認知度もまだ低いビジュアルスノウを患ったある漫画家が、当時を振り返った漫画に「泣いてしまいました」とTwitter上で感動の声が集まっている。

■視界にノイズがかかるビジュアルスノウ、支えになった「大丈夫」の言葉
漫画『アスメシ』(講談社)の原作やLINEマンガ『アーチェリーボーイ』などの作品がある漫画家・見原由真(@ace7kg)さん。Twitter上では夫でアニメーターのタッペイさんの様子を描いたコミックエッセイを投稿し人気を集めている。

今回注目を集めたのは、見原さんが昨年描き、再掲として9月に投稿した「人生に絶望した漫画家が、アニメーターの恋人の一言に救われた話」というエピソード。タッペイさんと結婚する以前、当時既に漫画家として活動していた見原さん。心身にかかる負荷を押しのけるように仕事をしていた見原さんはある日突然体調を崩してしまう。

その時、大きな異変があったのは、漫画家にとって腕と同じぐらい大切な商売道具である「目」。光に過敏になってしまうのと同時に、テレビの砂嵐のように視界にノイズがかかる「ビジュアルスノウ」に陥ってしまったのだ。

人によってノイズの現れ方はまちまちだが、見原さんの場合は「24時間陽炎の中にいるような」視界だったという。その影響は深刻で、家の中でも帽子とサングラスが欠かせないほど目に負担がかかり、日常生活もおぼつかない状態に。漫画の執筆も困難となり、当時決まっていた新連載の企画は立ち消えとなってしまった。

なにより見原さんにとってショックだったのは、倒れる直前に恋人のタッペイさんからプロポーズを受けていたこと。幸福に包まれているはずの時期なのに、病のせいでタッペイさんの重荷になってしまうと、婚約の解消や実家への出戻りを覚悟するまでに追い詰められていた。

そんな心境で、自分の現状をタッペイさんに明かした見原さん。だがタッペイさんは「大丈夫なんとかなるよ!」と、一緒に暮らそうと迷いなく告げた。普段は理屈っぽいところもあるタッペイさんのストレートな一言に心の底から救われたという見原さんは、病と付き合いながらタッペイさんと同居。近くに住むタッペイさんの両親も親身になって接してくれ、“生きよう”とどん底から前を向くことができた。結婚した今でも目の状態は完全に元通りではないけれど、漫画家として再起し、そしてなにより大好きなタッペイさんとの時間を過ごせているのだった。

■「どん底の景色も遠く小さく」漫画の後も長く続く大切な後日談
見原さんがTwitterで描くコミックエッセイシリーズのはじまりにあたる同エピソード。目の症状が徐々に回復してきた頃、再び漫画を描くリハビリとして大好きなタッペイさんをテーマに描いたのが本作だ。

見原さんに話を聞くと、発症当時は自分の症状が何なのか分からず、ネットで調べた結果「ビジュアルスノウ」という名前と症状の存在を知ったという。

「ビジュアルスノウは今でこそテレビなどでも取り上げられるようになりましたが、当時は世間的にも医学的にもあまり浸透しておらず、なかなか症状を理解してもらえなくてつらかった記憶があります。病院にかかっても、検査上は異常が見つからないのがこの症状の厄介なところで…。私の場合は、ネットで見つけたビジュアルスノウに関する論文を眼科の先生に見てもらうことで、そういう病気があること、その症状に陥っていることを認識してもらえました」

2022年現在、多少の症状は残りつつも、月刊ニュータイプ誌上で『五畳半アニメーター録』を連載するまでに回復した見原さん。人により症状はまちまちだが、見原さんの場合は、症状が現れてから再び絵を描いてみるまで、そしてそこからリハビリとしてこの漫画を描くに至るまでにそれぞれ約2年ほどのスパンがあいたそう。認知度と比例しないビジュアルスノウの苦しみの一端がうかがえた。

昨年の初掲載時と負けず劣らず、今回の再掲でもいいねの数が1万件を超えるなど注目を集めた作品。「むちゃむちゃいい話」「素晴らしい」と、病に向き合った見原さんと寄り添ったタッペイさんの姿に感銘する声や、同様の症状を体験した人からの感謝のコメントが多く寄せられている。

こうした反響に、「一年前に比べると、アニメ関係者や漫画・アニメに興味のある方、同じビジュアルスノウの持つ方の反響をいただいた印象です」と話す見原さん。

「この漫画は制作した当時は、症状に苦しんでいた当時を思い出しながらだったので描くのが辛い部分もあったんですが、今あらためて読むと 病気でつらかったりしんどかったりした記憶が、今の自分の中では心の容量をそんなに圧迫しなくなっているなと気付きました」と、漫画の制作当時から1年ほどの期間を置いて本作を振り返る。

「タッペイとの結婚生活で車輪を一緒に漕いでいるうちに、どん底の景色もずいぶん遠く小さくなったなという感じです。タッペイとの生活があってこその心境の変化だと思います」と、見原さんは寄り添ってくれたタッペイさんへの感謝の気持ちをあらためて語ってくれた。

取材協力:見原由真『五畳半アニメーター録』連載中(@ace7kg)

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