サイト内
ウェブ

人生の「残り時間」はどのくらい?夏休みの自由研究を描いた漫画が大人を恐怖に突き落とす

  • 2022年9月15日
  • Walkerplus

気付けばノスタルジーを感じるほど遠い日となった平成初期。そんな平成一桁年代に小学生はどんな夏休みを過ごしていたのか?漫画家の大塚志郎(@shiro_otsuka)さんが描く漫画「平成小学生の日常」は、当時を過ごした人なら思わず「あるある」と共感してしまうシリーズだ。

『びわっこ自転車旅行記』『漫画家アシスタントの日常』(竹書房)、『射~Sya~』(スクウェア・エニックス)などの作品がある漫画家の大塚志郎さん。「平成小学生の日常」シリーズは、商業作品のかたわら、2021年から個人制作として大塚さんが発表しているものだ。大塚さんの当時の記憶や取材をもとに描かれる90年代の情景にはノスタルジーを感じられる一方、なかには大人が読むと心に刺さるようなネタも。今回は時の流れを感じさせる「自由研究」のエピソードを紹介したい。

■自由研究で「ジャネーの法則」を検証開始!子供と大人の「時間のズレ」が突き刺さる
同級生とともに夏休みの自由研究の題材を考えていた小学生男子の「ジロー」。そんな時、友人の女の子「マキノ」が挙げたのが“ジャネーの法則”だった。

フランスの哲学者ポール・ジャネが考案したジャネーの法則(※作中通り「ジャネの法則」とも)は、重ねた年齢に反比例して、歳をとるほどに一日を短く感じるようになるというもの。この法則の検証を研究テーマにすべく、ジローたちは身近な大人に時間の流れ方をたずねて回ることにする。

まず声をかけたのは、ジローの母。32歳とまだまだ若い母だったが、85歳まで生きると仮定してこの法則を当てはめると、残りの人生の体感時間が「今まで生きてきた32年の体感時間の大体半分」という計算に。それを聞いて「いやいや!!まだ50年あるのよ私には!!」と笑い飛ばしたジローの母だが、内心では大きく動揺。自身でも計算し、時間の長さの感じ方が法則に近いことに気付き衝撃を受ける。

さらに、42歳のジローの父も人生の体感時間が残り3分の1以下であると知り、母と同じような反応を見せる。2人とも「けっこう当たってる」と答えたことで手ごたえを感じ、さらなるデータを取ろうと祖父母に電話しようとするジローたち。祖父母の残りの寿命の体感時間を計算し伝えようとするジローを、両親は揃って「やめなさい!!」と慌てて止める。それが年長者にどれだけ精神的なダメージを与えることかよく分かっていない子供たちは「え~学校の宿題なのに!」と不満を漏らすのだった。

■「大人の視点で平成時代を俯瞰」漫画ならではの描き方
夏休みの自由研究から始まった子供たちの好奇心が、無自覚に大人の心をえぐっていく、悲しくも笑えるエピソード。作者の大塚さんによれば、「30歳を過ぎてから時間の過ぎる速度が異常に速くなった実感がありまして、それはなぜかあれこれ調べていくうちにジャネーの法則に辿り着きました」と、大人としての実体験から着想を得たという。

「子供の頃、夏休みなどに祖父祖母に会った時、大人が『あっという間』という言葉をよく使っていて、子供ながら時間感覚のズレをよく感じましたが、この法則だったかと。とてもしっくりきて面白かったので、どうにか漫画にできないかなあと考えました」

同シリーズは「90年代初期の小学生を描こう」というコンセプトのもと、当時子供だった人には共感できるエピソードが多い一方、今回紹介した作品のように、中には子供と大人、昔と今の違いなど、大人になった読者の心に突き刺さるネタやオチもちらほら。こうした描写は、「大人の視点で平成の時代を俯瞰しつつ描く」というスタイルを守っていることと、当時と現在とを比較することで、その頃を知らない読者にも伝わって読者層が広がるのではないかという狙いがあるという。

同シリーズの新刊を個人誌として9月に刊行したほか、9月15日にはストーリアダッシュ(竹書房)にて連載された『チャリっこ』のコミックス第1巻が発売されるなど、精力的に活動を続ける大塚さん。「平成小学生の日常」シリーズとともに、「今後は大人になった現代の自分の漫画創作にまつわる漫画なども同時に描いていこうと考えています。そちらの漫画もぜひ期待してください!」と、漫画制作の今後についても教えてくれた。


取材協力:大塚志郎(@shiro_otsuka)

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.