サイト内
ウェブ

木村文乃「30代半ばっていろいろ迷う時期」最新作でこれまでと異なる芝居にアプローチ

  • 2022年9月11日
  • Walkerplus

矢野顕子のアルバム「LOVE LIFE」に収録された同名楽曲をモチーフに、愛と人生に向き合う夫婦の物語を描いた映画『LOVE LIFE』。『淵に立つ』や『よこがお』などの深田晃司が監督を務めた本作で主演を務めた木村文乃に、撮影秘話や共演者とのエピソード、さらにはオフの日の過ごし方などを語ってもらった。

■自分がやるべきことのすべては「台本に書かれている」
――本作のオファーを受けた時はどんな心境でしたか?

【木村文乃】オファーをいただいた時は、これまで自分がやってきたのとは違うお芝居のアプローチに挑戦したいと思っていた時期だったので、深田晃司監督の作品ならばそれができるのではないかと思いました。なので、すごくいいタイミングで声をかけていただけてありがたかったです。

――深田監督の作品に対してどのような印象を持っていましたか?

【木村文乃】何人かで観賞しても同じ感想を持つ人がひとりもいないというか、“観る人によって異なる解釈ができる作品を撮る監督”という印象を持っていました。

――実際に監督の演出を受けてみていかがでしたか?

【木村文乃】とても繊細な演出をされるので、“監督の言葉をひとつでも聞き漏らすと大変だ”という緊張感が常にありました。例えるならば細〜いピアノ線の上をゆっくり歩いていて、ふとした瞬間に足がツルッと滑って落ちてしまうような感覚というか(笑)。集中力が試される現場でしたね。

――木村さんが演じた妙子は息子を連れて再婚し、そのあと、ろう者の元夫と再会するという複雑な展開となっていきますが、どんなことを大事に演じましたか?

【木村文乃】本作は監督が20年間温めた作品なので、“自分がやるべきことのすべては台本に書かれている”という意識で挑みました。窮屈さを感じることも特になかったですし、もしもわからないことがあっても監督に聞けば明確な答えが返ってくるので、とにかくワンシーンワンシーン丁寧に表現することを大事に演じていました。

――監督とのやり取りの中で印象に残っているエピソードを教えていただけますか?

【木村文乃】監督は、台詞の言い方に関して基本的にはこちらに任せてくださったのですが、ラストで妙子が言う「行こうか」だけは「トーンを抑えて言ってみてください」とリクエストがありました。だけど妙子を演じていく中で、どうしても明るいトーンで「行こうか」を言いたかったので、そのことをお伝えしつつ抑えたトーンと明るいトーンの両方をやらせていただいたんです。

それで完成を観たら明るいトーンの「行こうか」を採用してくださっていたのでホッとしましたし、正直な気持ちをぶつけて良かったなと思いました。

■曖昧なニュアンスがない手話は「私に合っている」
――劇中で、息子の敬太くんや元夫のパクさんと手話で会話をするシーンがありましたが、挑戦されてみていかがでしたか?

【木村文乃】劇中では韓国語の手話をやっていたのですが、特に難しさはあまり感じませんでした。おそらく日本語の手話を先に覚えていたら逆に覚えるのが大変だったのではないかと。手話に挑戦してみて思ったのが、言葉よりも自分の感情を伝えやすいということ。

手話には“たぶん”のような曖昧なニュアンスがないので、日本人特有の“多くを語らずに察してもらう”みたいなことがなく、そのほうが私には合っているなと思いました(笑)。

――夫・二郎役の永山絢斗さん、元夫・パク役の砂田アトムさんとは現場でどのようにコミュニケーションを取っていらっしゃったのでしょうか?

【木村文乃】永山さんは年が近いこともあって、「最近どう?」みたいな身の上話で盛り上がっていました(笑)。砂田さんとは台詞で覚えたことや簡単な手話での会話になりましたが、とてもポジティブで明るい方なので私もスタッフさんも元気を貰っていました。

クランクアップの時に砂田さんが「きっとやりにくかったと思うけど、みなさんがちょっとしたことでも手話で会話をしてくれたのですごくうれしかったです」と仰っていた言葉が印象に残っています。

――パクさんは奥さんと子供を置いて失踪してしまうような人ですが、砂田さんが魅力的に演じられているからか憎めないキャラクターに感じました。

【木村文乃】「お芝居中は“お茶目さ”を抑えめでお願いします」と監督から指摘されるほど砂田さんはチャーミングな方なので、それがパクさんのキャラクターにも反映されているのかもしれませんね(笑)。手話で冗談を仰っているのがわかるほど現場で砂田さんが楽しそうにされてる姿を見て、“素敵な方とご一緒できて良かった”と何度も思いました。

――お芝居の部分で砂田さんから刺激を受けたことはありましたか?

【木村文乃】現場で手話の先生と砂田さんがやり取りしているのを見ていると、「ここが違う」とか「この表現はこのほうがいいんじゃないか」と手話で議論しているのがなんとなくわかるんです。それはすごく参考になりました。というのも、先生から教えていただく手話は丁寧な言葉遣いと似ていて、日常で使われる手話とは少し違ったりするんですよね。

でも手話の先生と砂田さんのやり取りはリアルな手話の会話なので、見ているだけで“こういう風にやればいいんだな”といろいろ気付けたりするんです。そういう意味でとても刺激になりましたし、参考にさせていただきました。
■朝食や昼食を作る時は「tricolorを聞きながら料理しています」
――本作が制作されるきっかけとなった矢野顕子さんの「LOVE LIFE」を最初に聞いた時はどう思いましたか?

【木村文乃】お話をいただいたあとすぐに聞いたのですが、“なにかすごいことが始まるぞ!”と思ったのと同時に、曲の世界観に引き込むパワーが強い曲だという印象を受けたのを覚えています。少しでも「LOVE LIFE」の世界観を掴みたかったので、撮影期間中は毎朝このアルバムを聴いてから現場に向かっていました。

――普段はどのような音楽を聞かれますか?

【木村文乃】朝食や昼食を作る時は、tricolorという3人組のバンドの曲を聴きながら料理しています。お天気のいい日に窓を開けて心地よい風を感じながら、アイルランド音楽をベースにした彼らの曲を聞くと幸せな気持ちになりますし、楽しくお料理ができるのでおすすめです。

――木村さんのインスタはおいしそうな手料理の写真が多く、見ているとお腹が空いてしまいます(笑)。お気に入りのレシピ本はありますか? 

【木村文乃】本ではないのですが、E・レシピというサイトはたまに見ます。旬の食材を使った料理が好きなので、食材でレシピ検索して作ったりしています。

――オフの日は家でのんびり過ごすタイプですか?

【木村文乃】いえ、分刻みでスケジュールを詰め込むことが多いです(笑)。体のメンテナンスや運動など時間を大事にしたくて。自分で決めたスケジュールを全部やりきった時は最高にハッピーな気持ちになります(笑)。

――ドラマや映画など多忙な日々を送る木村さんですが、今後の俳優としての理想像はありますか?

【木村文乃】いま34歳なのですが、30代半ばっていろいろ迷う時期なんですよね。年齢を重ねてくると、必然的にお仕事に関しての選択肢が少なくなりますし、決断を迫られることも増えてくる。しかも自分だけでは決められないこともあるので“どうしたらいいんだろう”と悩むことも多くて。

でも、とにかく“明日は今日よりいい自分でいよう”という気持ちでコツコツと頑張れば道は開けてくるはずなので、時には流れるままに動いてみたりしながら、一つひとつの出来事と丁寧に向き合っていきたいと思います。


取材・文=奥村百恵

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.