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犬が旅した?プチプラコスメがあった?江戸時代の庶民を描くイラストが興味深い!

  • 2022年2月18日
  • Walkerplus

よくドラマや映画の舞台になっている江戸時代。大名や武士は登場するけれど、庶民の日常生活が描かれることはさほど多くはない。彼らの食生活やファッション事情は、どうだったのだろう?

そんな庶民の生活をかわいいイラストと簡潔な解説でわかりやすく伝えてくれるのが、笹井さゆりさん(@chiyochiyo_syr)がSNSで投稿している「江戸時代のちいさな話」シリーズだ。

■江戸の庶民の暮らしを、イラストと解説で投稿
笹井さんは編集者兼イラストレーター。教材編集の仕事に携わる傍ら、好きなことや気になったことをイラストにまとめて、SNSで発信している。もともと「本で学んだことを、図やイラストを交えてノートにまとめるのが好きだった」という。せっかくならSNSで発表しようと、5年ほど前から投稿をはじめた。

現在、江戸時代の市井の人の暮らしを描いた「江戸時代のちいさな話」シリーズを日曜に更新中。江戸時代に関心を持ったきっかけは、文筆家で漫画家の杉浦日向子さんの本との出会い。「教科書には載らないような、時代劇なら背景にいて見切れてしまうような市井の人が生き生きと描かれていて。どこか遠いと思っていた江戸時代が急に身近に感じられて、驚きました」と、笹井さんは振り返る。

さらに同時期、Animation Aidという絵のオンラインクラスを通じて、町にいる人をスケッチする楽しさにも気付いた笹井さん。「もしも江戸時代の人をスケッチしたらどんな感じになるだろう?」と思ったことも、シリーズをはじめるきっかけになったそう。

■イヌのこんぴら参りや江戸時代のプチプラコスメも登場
そんな経緯で誕生した「江戸時代のちいさな話」シリーズ。の第1回の投稿テーマは「こんぴら狗」だった。笹井さんが「1作目なので印象に残っています」と語るこの作品は、金刀比羅宮に犬が飼い主の代わりに参拝するという、不思議な風習を描いたもの。犬を世話する人たちの優しそうな笑顔と、犬のかわいらしさが際立つイラストだ。

カラフルな短冊と夕景が美しい「七夕」は、「もっと!もーっと高く上げてくれよ」「むり…」という母子の会話に、思わずこちらの頬までゆるんでしまう。江戸時代の七夕の日には、家々に笹が高く掲げられたそう。そして、寺子屋の普及により庶民の行事になったことまで解説されていて、知識欲も満たしてくれる。

男女のデートシーンにドキっとする「笹紅」は、当時のお化粧事情がテーマ。紅を重ねて唇を笹色(玉虫色)に光らせる「笹紅」は当時のスターである花魁発の流行メイクだが、「高価な紅は庶民では手に入らないため『墨』でそのメイクを再現したとか」と笹井さん。知恵と工夫でプチプラコスメを駆使して、憧れのスターのメイクを再現する現代人の姿にも通じるものを感じる。

■刀をなくした武士や、雪の結晶にハマったお殿様も!
「江戸時代のちいさな話」シリーズは基本的に庶民の姿を描いているが、時には武士が登場することも。「武士の刀事情」はそんな1枚だ。刀を出先に置き忘れたうっかりものの武士と共に、背景の町の人々まで生き生きと描かれているのも笹井さんの作品の魅力。思わずじっくり眺めてしまう。

もう一つ、庶民ではなくお殿様を描いているのが2021年12月19日に投稿された「雪の結晶にハマったお殿様」。お殿様の楽しそうな表情はもちろん、家臣の表情にも注目だ。雪の結晶に興味津々の人物と、寒さに震え鼻水を垂らしながら耐える人物、どちらも実在しそうな気がする。

この作品は特に話題となり、「読者の方々から教えていただいたのですが、このお殿様が統治していた茨城県古河市には、今も町のあちこちに雪の結晶がデザインされているそうです。素敵ですよね」と、追加情報も寄せられた。

■江戸時代のファストフードに、暗い夜の過ごし方
特に描くのが楽しい作品を聞いてみると、「食べ物は調べるのも描くのも楽しい」と教えてくれた。なかでも「握り寿司」からは、その楽しさが伝わってくるよう。「日本食を代表する食べ物・握り寿司は江戸時代の屋台から生まれました」と笹井さん。しかし冷蔵技術がなかったため、保存のきかないトロは食べずに捨ててしまっていたそう。現代人からすると、なんとも勿体ない話だ。

江戸の人たちのオシャレがよくわかるのが「ファッション事情」。華美な服装は取り締まられるため、シンプルな柄や地味な色を粋だと楽しむ人々の姿は、規制の中で新たな流行が花開くことを教えてくれる。「奢侈禁止令で庶民が派手な着物を身に着けられなかった時代。服装の規制があって大変だな…と思いきや、目いっぱいおしゃれを楽しんでいます」と当時に思いを馳せる笹井さん。

電気やガスがなかった江戸時代の人々の苦労や工夫を描いたのが「冬の暖房事情」や「灯り事情」。灯り事情を描くときには「夜は深い闇に包まれたろうと思います。いまではなかなか味わうことのできない闇を絵で表現するため、部屋を真っ暗にして暗闇を観察してみたりと頭を悩ませました…」と笹井さんは明かす。その甲斐あってか、「自分が江戸時代の夜を過ごすならこうする!というお声をたくさんいただきました」と反響も大きかったようだ。

■面白いと思ったテーマを、信頼性の高い情報で
笹井さんの投稿はイラストと解説だけにとどまらず、後続の投稿で参考文献や参考サイトまで教えてくれる。参考文献なら書名に加え筆者や出版社まできちんと記載されているので、関心を持った事柄をさらに深掘りでき、学びがあるのも魅力の一つだ。

笹井さんは「江戸時代に関する書籍を読む中で、自分が面白いと思ったことをそのままテーマに取り上げています。複数の文献やWebサイトを参考にしつつ、なるべく信頼性の高い情報をお届けできるように」心がけているという。

また、イラストに添える解説文の書き方も気を付けていることの一つ。「『◯◯年ごろ、江戸は~だった』という書き方だと、歴史の参考書を見ているような距離感になってしまいます。もちろん、客観性は大切ですが、読む方には江戸時代にタイムスリップしているような、江戸の風景を覗き見ているような感覚を味わっていただきたくて…。『こういう店が多い』『芝居小屋に行こう』など、当時の風景を目の前で紹介しているような書き方にこだわっています」

■毎回手探りだけど、さらに調査を重ねたい
さまざまな文献を基に知識を深め作品を生み出している笹井さんだが、その姿勢は謙虚だ。「江戸時代は奥深く、私が知っていることはまだまだ少ないです。今後もさらに調査を重ねて、理解を深めていきたいです。また、いつ踏み出せるかはわかりませんが、江戸時代の先、江戸から移り変わっていく明治・大正の時代にも関心があります。それぞれの時代にそれぞれの市井の人の景色があったと思うんです。これからも、そうした何気ない風景を大切に描けたらよいなと思います」

また、いつも見てくれるファンの人には感謝を述べつつ「毎回手探りのなか発信していますが、少しでも楽しんでいただけたら、江戸時代を身近に感じていただけたらうれしいです。これからもなるべく丁寧な調査と分かりやすい発信を心がけますので、どうぞよろしくお願いいたします」とやはり謙虚。

すでに20作以上が投稿されている「江戸時代のちいさな話」シリーズ。今後もどんなエピソードが登場するのか、期待大だ。

取材・文=鳴川和代

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