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工場や廃墟に佇む少年少女たち。想像力を掻き立てる、モノクロトーンのイラストを描き続ける理由とは

  • 2022年3月9日
  • Walkerplus

大阪アミューズメントメディア専門学校の卒業生で、現在はフリーランスのイラストレーターとして活動している無添加さん。第26回電撃大賞「イラスト部門銀賞」を受賞するなど順風満帆かと思いきや、一度は筆を折り大好きだったはずの絵と距離を置いていた時期があったという。今ではより自由に、自分らしくいられるスタイルを確立して、楽しみながら絵の発信を続けている。工場や廃墟を舞台にいきいきと闊歩していたり、憂鬱げに佇んでいたり、印象的な少年少女の絵はいかにして生まれたのか。そして挫折してもなお、なぜ描き続けているのか、無添加さんに話を聞いた。

■自分らしく、楽しみながらひとつひとつ丁寧に描いていきたい
ーー絵はいつ頃から描き始めたのですか?

幼稚園の時から当時のアニメや漫画を真似したり、『ポケモン』ばかり描いていました。妹のために描いてあげたりもしていましたね。それからどんどん漫画やゲームが好きになって、ゲームの『キングダム ハーツ』にハマって、今の作風にも通じる、かっこよくてかわいい雰囲気のキャラクターデザインに影響を受けました。

ーー幼少期から好きだった絵を描くことが、今ではお仕事に。どういった経緯で活動をスタートしたのでしょう?

高校卒業後に、絵を描きたくて芸術大学のキャラクターデザイン系の学科に入学したのですが、絵とは全く関係のないところに就職して。でも、やっぱり好きだったゲームに携わる仕事がしたくて専門学校に入って、卒業後は憧れのゲーム会社でキャラクターデザインなどを手掛けていました。それからいろいろあって、ようやく覚悟ができたので2021年の11月ぐらいからフリーランスとして絵を描き始めました。最近は、ネットで絵を見てくれた人から依頼を受けて、イラストを描いたりしています。

ーー無添加さんの中でターニングポイントになっている作品は?

女の子が袋を持って荒廃した道を歩いている絵です。実は、仕事に疲れて絵から離れた時期もあって…。自分の好きなものがわからなくなってしまっていたのですが、「そういえば私はこういう絵が好きだった」と思い出せたというか。塗りの雰囲気もガラッと変えて、改めてスタート地点に立てたような、今の方向性が固まるキッカケになった作品です。

ーー大好きだった絵と距離を置いて、改めて描くことと向き合い、生まれた作品なのですね。

昔は当たり前に思っていた、描くことが楽しいという気持ちを、やっと思い出せた作品ですね。疲れていると描いていても楽しくないし、筆を折っていましたから。今は描いていてとても楽しいです。

ーー特にどういった絵が楽しくて好きですか?

廃墟や工場のようなものを描いている時間ですね。人がいて賑わっている風景よりも、昔は賑わってたんだろうなとか見る人によっていろいろな想像ができるところに魅力を感じます。おもちゃが落ちているけど、昔はどんな子が遊んでたんだろうとか。考察が好きなので、好き勝手に想像できる余地があって楽しいんですよね。人物もキャラクターがポーズをとってる絵より、座っているけどどんな意味だろうとか、考えたくなるような絵が好きなので、そういう考察心理をくすぐれる絵を心がけています。

ーーモノクロチックで暗めなトーンで統一されているのは?

こういうトーンが好きだからというのもありますが、心が疲れてしまった時にカラフルな色使いができなくなってしまって…。見るのも億劫になっていた時に、モノクロの表現があることを知って描いてみたら気持ち的にも楽になれたので、自分にも合っているなと。今は心身ともに心地よく描けています。差し色を入れれば、グッと目を惹きますしね。

ーーファッションやアイテムも個性的ですよね。

最近はサイバーパンク的な服や、タクティカルファッションという、そもそもは軍服のような機能性重視でファッション性のなかった服装やアイテムに魅力を感じます。蛍光色のワンポイントが入っていたり、ビニール感があっておしゃれになっていたり。自分では着れない服がたくさんあるので、そういったファッションを絵に取り入れていきたいなと。

ーー描く上で、大事にされていることや気をつけられていることは?

まずは、構図ですね。サムネイルで表示されて小さくなると、構図がよくない絵は目を惹かないし、印象的によく映らないので。あとは、無添加らしい空気感だったり雰囲気をポイントで入れるように心がけています。最近は絵が上手い人たちってめちゃくちゃ増えているので、自分らしく、楽しみながらひとつひとつ丁寧に描いていきたいなと思っています。

ーー実際にイラストをSNSで発信されている中で、特に嬉しかった反響は?

自分の作品を発表して、「あなたの絵で描いてほしい」と言われることがなにより嬉しいです。去年の11月に、海外の方から「私の考えたキャラクターを絵にしてほしい」と連絡をいただいて、フリーランスとして初めて依頼を受けた時のことは忘れません。とても喜んでくださり、リピートでお願いしていただけています。まだまだSNSでの反響は多くないですが、こうやって私の絵が好きで、求められるようになっていきたいなと思いました。

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

今はまた絵を描けなくなるのが怖いので、周りの評価や流行を気にせず、描き続けることを目指したいです。やっと描きたい方向性が決まってきたので、まずは作品を増やしていかないとなと思っています。自分の好きな世界観の作品がまとまったら、画集や本といった形だったり、展示したりしてたくさんの人に見ていただけるような機会を作りたいです。そしてまたいつか、大好きなゲームの仕事もしたいですね。そのためにもまずは、絵を描き続けて、作品を発表し続けたいなと思います。

取材・文=大西健斗

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