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コーヒーで旅する日本/九州編|「3 CEDARS COFFEE」、大分から新たなコーヒーカルチャーを

  • 2021年12月27日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第5回は、大分県・大分市にある「3 CEDARS COFFEE」。当連載で取材した店主たちからは “三杉さんの店(3 CEDARS COFFEE)が気になる”といった声も多く聞かれるなど、大分から新たなコーヒーカルチャーを発信している、九州でも注目の一店だ。

Profile|庄司三杉
1978(昭和53)年、大分県大分市生まれ。大学進学を機に福岡へ。エスプレッソの抽出に興味を持ち、シアトル系のコーヒーショップからコーヒーの道に入る。その後、manucoffeeにて勤務。バリスタを経て、ロースターを経験。2015年に前職を退職し、2016年3月に「3 CEDARS COFFEE」を開業。

■当たり前に始めたダイレクトトレード
庄司三杉さんの名前からとった屋号「3 CEDARS COFFEE」。コーヒー業界では“三杉さん”の名で呼び親しまれ、「三杉さんが焙煎した豆はおいしい」という声もよく耳にする。もともとmanucoffeeの初期メンバーで、5年ほどはバリスタとして店頭に立っていた庄司さん。

「そのころからコーヒー豆の産地に行ってみたいと思っていて、2006年ぐらいに機会をいただき、コスタリカとパナマに行きました。当時はバリスタでしたが、コーヒー豆がどんな場所で育てられているのか純粋に見てみたいと思ったんです。それから、2011年ぐらいに生豆の買い付けにも行き、そういった経験が『3 CEDARS COFFEE』の一つのアイデンティティになっていると思います」(庄司さん)

「3 CEDARS COFFEE」で扱う生豆は、庄司さんが農園から直接仕入れたものがメイン。新型コロナウイルスの影響で2020年、2021年は渡航が叶わなかったが、毎年必ずホンジュラスとニカラグア、ルワンダへ。さらに、2年に1回はエチオピアに生豆の仕入れに行くのが、現在の庄司さんのライフワークになっている。

2015年に前職を退職した際には、辞めた翌日に中米に渡航したというから、そのバイタリティには驚かされる。「独立にあたり、まだ店舗も決まっていませんでしたし、焙煎機も手に入れてなかった。ただ、焙煎機は同じ大分県にあるコーヒーショップが貸してくれると言っていたので、とりあえず、開業後を見据えて生豆だけは仕入れて来ようと思いまして。原料さえあれば、どうにかなると考えてのことで、『3 CEDARS COFFEE』を開く前から、自分で買い付けてきた豆を使うという店の方向性は定まっていましたね」と庄司さん。

■ローカルに合ったコーヒーを自分のカラーで
そんなスタイルの「3 CEDARS COFFEE」だけに、原料へのこだわりがフォーカスされがちだが、コーヒー業界の人々が一目置く理由はそれだけじゃない。庄司さんは一見すると淡々とした雰囲気だが、焙煎に対する熱意は人一倍強い。しかも、すべての工程に関して、感覚的ではなく、ものすごくロジカルだ。

焙煎機は1968年製のPROBAT UG22。いわゆる“オールドプロバット”と呼ばれるラインのもので、蓄熱の良さなどから、ロースターとして独立するならこのマシンと決めていたそうだ。庄司さんは「50年以上前の機械のため、純正品だと火力がやや弱いというのは実際に使っているロースターの方に聞いていました。なので、導入当初からフラットタイプのバーナーの2連仕様にカスタムし、火力のパワーコントロールを微調整できるようにしました」と説明。さらに、2020年にはドラムの回転数を調整できる機器を後付けしたことで、より庄司さんが理想とする焙煎が可能になったという。

もともと開業してから数年は浅煎りを中心に、中煎り程度までの豆をラインナップしていたが、現在は深煎りも用意している。ただ、深煎りと言ってもいわゆる苦味やボディ感が主張するものではなく、飲み口は軽やかで、クリーンカップ(※1)も素晴らしい。さらにすっきりとしたアフターテイストにも驚かされる。まさに、深煎りのイメージを一変させる味わいだ。

「2021年12月現在、浅煎り4種、中煎り2種、深煎り3種というラインナップにしています。もともと僕自身、浅煎り〜中煎りぐらいが好みでしたし、生豆が本来持っている香りや味わいが最も引き出されるという考えがあったため、深煎りは敬遠していました。ただ、当店があるのは大分市内で、東京や福岡などとはお客様のニーズも違います。深煎りは以前からお客様から要望されていましたが、なかなか自分が納得できる焙煎ができなくて。それでドラムの回転数を調整できる機器を新たに採用したのですが、これが奏功しました。深めに焼いても生豆が持つ華やかさを損なわないなど、理想的な焙煎ができたと思っています」と庄司さんは話す。

■飲む人たちにとってベストな一杯を
「3 CEDARS COFFEE」は現在、大分市内に2店舗を展開し、ともに豆売り専門。

庄司さんは「上質なコーヒーが常に身近にある暮らしを提案していきたかったので、豆を買っていただいて、ご自宅で楽しんでもらうコーヒー豆専門店にしました。ただ、開業当初はジレンマもありました。ご自宅で豆を挽いてもらい、ハンドドリップなどで一杯ずつ淹れていただくのがおいしいという考えは今も変わりません。ただ、お客様にそれを強要することはできないんです。お客様それぞれに時間の使い方がある。例えば、毎朝、豆を挽いてハンドドリップする時間なんて作れないという方もいらっしゃるでしょう。コーヒーメーカーで淹れるのが楽で良いという方もいらっしゃいます。僕たちが『淹れる直前に豆を挽いて』とか、『ドリッパーはこれが良い』『お湯の温度も1度単位で調整を』なんて言うのはエゴでしかないと気付いたんです。もちろん、どんな風に淹れたら良いかアドバイスを求められれば、全力で最適なレシピをお伝えしますが、お客様にとって適したコーヒーライフがあるなら、それを僕らがどうこうはできない」と語る。

だからこそ、庄司さんはどんな淹れ方をしてもある程度の味わいを引き出せる焙煎を心がけているという。「そのためには味わいのアベレージをできる限り上げることが大切」と庄司さん。そうやって、すべては飲む人のことを考えて焙煎された「3 CEDARS COFFEE」のコーヒー。真摯な姿勢は味わいを通して伝わり、人づてにおいしさは広まり、今では大分県内外から多くの人が豆を求めて訪れる人気店となった。

■いつかはすべてのコーヒー生産国へ
最後に今後の展望を聞いてみた。

「自分自身で、少なくとも年に1回は産地に足を運ぶようにしているのですが、それ以外でも商社さんからお声がけいただくなど、産地に行けるチャンスがあれば、必ず行くようにしているんです。たとえ、それが1週間後というイレギュラーな場合でも。そうやって、いつかはコーヒー豆を生産しているすべての国に足を運ぶのが今の目標。生豆は商社さんや問屋さんから仕入れることもできますが、やっぱり生産者さんがどんな思いでコーヒー豆を栽培しているかを直に見ることで、僕自身、コーヒーとの向き合い方が変わった気がします。生産者さんが一生懸命育てた生豆を焙煎し、お客様にお届けする責任というのでしょうか。それが、味わいとして良い形で表現できていたら良いなと思っています」と庄司さんは話す。

2022年には、カフェスタイルの店舗出店も計画中という「3 CEDARS COFFEE」。大分から上質で特別なコーヒーが身近にある暮らしをますます広めていってくれそうだ。

■庄司さんレコメンドのコーヒーショップは「suzunari coffee」
次回、紹介するのは大分県・臼杵市にある「suzunari coffee」。

「開業して2年ほど、焙煎機を借りていたこと、さらに同じ大分県内の同業者ということで繋がりが強いお店です。『suzunari coffee』さんはオーナー・ロースターの匹田くんの独特の世界観が表現されたお店で、雰囲気も良い。コロナ前は『suzunari coffee』さん含めて、大分県内の数店舗合同でカッピング会を行うなど、切磋琢磨している仲間でもあります」(庄司さん)

【3 CEDARS COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/PROBAT UG22
●抽出/なし
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/なし
●豆の販売/シングルオリジン7種、ブレンド2種、200グラム1512円〜

※1…口に含んだ際の味わいがクリーンで、雑味がないこと




※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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