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母がうつ病に。突然の発症から回復へと向かう様を、漫画で描いた理由とは

  • 2021年11月4日
  • Walkerplus

ある日突然、実の母親がうつ病を発症。暴れて入院生活を送ることになったという、実体験に基づいた漫画「母とうつと私。」がSNSを中心に大きな反響を呼んでいる。作者は、関西を拠点にエッセイ漫画を手がける笹川めめみさん。苦しみながらもうつ病と向き合い、乗り越えていこうとする母の姿をありのままに描いた作品だ。

■うつ病や支えてくれる周りの人と向き合い、対話することが大事
鮮明な描写が続く物語に、読者から「うつ病の人を偏見の目で見ていたけど、こんな病気だったんだ」といったメッセージが多数寄せられたという。

「当時は小学生だったこともあり、お母さんがうつ病で暴れたり、苦しんでいる時になんでそうなってるのかよくわからなくて…。いま思うと申し訳ないのですが、怠けているように見えたんですよね。『なんで寝てばかりで起きないの?』『私のお母さんだけ、なんでこんなことになってるの』と。実際に私もうつ病になった今では、『そりゃなにもできへんわ、無理やわ』『こんなに苦しかったんやな』と、当時の母の苦しさが理解できるようになりました。自分も苦しんだからこそ、漫画にすることができたんだと思います」

勤め先がブラック企業だった影響で、笹川さん自身も軽度のうつ病を発症。療養期間に自己を見つめ大好きだった漫画の道へと進み、通院しながら漫画の連載を続けている。

「うつ病は“心の病気”というけど、実際に発症した私の感覚では脳みそが言うことをきかない感じなんです。ネガティブな思考の溝にはまって、もがいて抜け出せない。そうすると、ふさぎこんで起きれなくなって、今まであたり前にしていたこともつらくて、最悪の場合は息をしているのもつらくなる。あくまでも様々な症状がある中で、私と母の経験に基づいているので参考程度に、漫画を通してどういう病か知ってもらうことで、みんなの理解が深まればいいなとありのままに描いています」

うつ病を患った母を支え、自身も夫に支えられてきた笹川さんだからこそ、支える側と支えられる側の双方の思いが作品には込められている。

「うつ病という病は支える側、支えられる側のどちらも大変なので、一概に『理解して!』『支えてあげてね!』と言い切れないんですよね。支える側としては、『どう接したらいいかわからない』『どういう言葉をかけたらいいのか、正解なのかがわからない』と悩む声が多く寄せられました。悩んだ結果、私はとにかく母を否定せず受け入れて、話を聞くことが大事だと思い、コミュニケーションをしっかりとることを心がけていました」

また、うつ病とうまく付き合うためには、対話するなどコミュニケーションをしっかりとり、相手と向き合うことが大事だと教えてくれた。

「私も今では夫に支えられる立場になり、『こんな嫁で申し訳ない』と自責の念にかられることばかりですが…。1人になると余計なことを考えるので、しっかり誰かと話すことを心がけています。誰かと話していると気がまぎれるんですよ。平日はほぼ毎日、漫画を描きながら同業の友人たちとオンラインで話していますね」

本作の終盤では、誰かと話すことで回復へと向かっていく姿が描かれている。うつ病に限らず、人間関係においても、しっかりと対話し向き合うことが解決の糸口になるのかもしれない。

「漫画でも描いたのですが、『人は喋らないといけない生き物だと思った』という母の言葉が印象的で。話すことは、うつ病と付き合いながら暮らす上で、とても大事なことだと思います。自分に合った薬を飲んでいれば、楽になって体調もよくなるんですけど、だからといって治ったということでもない。波があるので、うつ病とうまく付き合いながら、家族や友人など周りの人たちと向き合って、対話しながらお互いの理解を持つことが必要かなと思います。母のうつ病の原因となった、父の単身赴任で変化した夫婦仲も子育てにしても、互いに向き合い対話することで解決していたかもしれません。つらい時こそ向き合う、そして話してみてほしいですね」

過去のショッキングな出来事を基にしているだけに、描きながら何度も挫折しそうになったそう。それでも描き続けることができたのは、読者からのメッセージがなによりの栄養剤になったからだという。

「『経験したことや伝えたいことを、漫画を通して知ってもらいたい』という思い、今回は母が伝えたいことでもあったのでやりきることができました。そして何より、応援してくれている人、メッセージや感想をくれる人たちが本当に励みになりました。『がんばってください!無理をしないでください!』って、あたたかいコメントを見ると、どんなときも頑張ろうって気持ちになるので、栄養剤にさせていただいています」

ブログとインスタグラムでの連載は、全108話で無事完結。現在はWeb漫画サイト「Vコミ」で、同漫画を作り直して連載中だ。

「読者の人からは『もっと読みたかった!』という声を沢山いただいたので、番外編を描いてみようと思っていました。そんな最中、『Vコミ』さんから掲載の話をいただいたので、絵もいちから描き直して、クオリティも納得のいく漫画らしい漫画となって再連載しています。新しいエピソードも盛り込んでいるので、楽しみに読んでいただけたうれしいです」

※漫画で描かれてる症状はあくまで一例であり、うつには様々な症状があります

取材・文=大西健斗

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