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「まずい棒」はほんの一例、“自虐ネタ商法”手掛ける銚子電鉄の開発秘話とは?

  • 2021年5月14日
  • Walkerplus

「銚子電鉄」を「自虐」というキーワードでインターネット検索する人も多いと聞く。銚子電気鉄道株式会社代表取締役社長・竹本勝紀社長も日頃から自虐ネタをあいさつ代わりにしているし、「電車屋なのに自転車操業」は、鉄板ネタの一つだ。

しかし自虐ネタは、銚子電鉄にとってはあいさつや、話題づくりだけにとどまらない。というのも、自虐ネタをふんだんに取り入れた商品を大まじめに製作し、実際に販売し、なおかつ次々とヒットさせているのが現在の銚子電鉄なのだ。もはや自虐ネタなくしては銚子電鉄の経営は成り立たない。

ここでは、「経営状態がまずい」から開発されたスナック菓子「まずい棒」以外の自虐的商品を紹介していく。

日本全国のローカル線関係者の皆さま、さらには昨今のコロナ禍で苦境に立つ中小企業経営者の皆さまの参考になるものが一つでもあればと願いつつ。
※本稿は『廃線寸前!銚子鉄道 “超極貧”赤字鉄道の底力』(著:寺井広樹)の一部を再編集したものです。

■「経営状況が痩せ細っている」から、「ガリッガリ君」アイス

2020年(令和2年)、「経営状況がガリッガリに痩せ細って冷えまくり」という自虐から、「ガリッガリ君」というアイスを考案した。もともと、同年8月公開の映画『電車を止めるな!』(詳しくは第7章)のスピンオフ映画の劇中に登場する予定だった『幻の氷菓』を実際に製品化したものだ。

新型コロナウイルス感染症拡大で、銚子電鉄の乗客数が前年比80%減、売上高が50%減まで落ち込み、あわや倒産という予断を許さない状況の中、なんとか現状を打開しようと案を練って捻り出した。

キャラクターデザインをどうするかという段階に進んだが、キャラクター制作のプロに頼むお金はない。やむなく私が描くことになった。私は怪談蒐集家でもあるので、デザイン案は、国内外の妖怪を参考に考えた。

考えた結果が、見た目は吸血鬼に似た妖怪で、その名も「金欠鬼(きんけつき)」だ。銚子電鉄の制帽を被っていて、いつも金欠でガリッガリに痩せ細っていることにした。金欠鬼は実はまだ子供の妖怪で、犬吠駅のアイスケースに棲んでいる。主食はアイスを食べ終わった後の棒で、常に栄養不足……といった設定だけでは心もとないので、「ガリッガリ君が棲みつく会社は、経営危機から復活すると言われ、一部の地域では守り神とも考えられている」という設定にした。

味については、「銚子電鉄ではSuicaが使えない」ことと、「経営が赤字で真っ赤」ということから赤いスイカ味にした。

諸般の事情により商品ではなくノベルティという位置づけで製造し、2020年8月8日に犬吠駅限定で先着600本、ぬれ煎餅などの商品を税抜3000円以上購入した人にプレゼントする予定だった。

しかしながら、さらなる事情が生じ、その企画も中止となってしまった。スピンオフ映画の『幻の氷菓』は、またも幻として霧散する結果となった。

「ガリッガリ君」プレゼント企画、さらにその先の企画中止のお知らせは、Yahoo!ニュースなどでも取り上げてもらった。コメントも多数あったし、楽しみにしていた方も多かったのではないかと推測する。

この事態に対し、ホームページ上で「皆様にご迷惑をおかけしました」と掲載し、竹本社長は、「アイスは溶かしてしまったが、会社は溶かさないようにこれからも経営改善に取り組みたい」と自虐した。

いっそのこと、「アイスの棒だけを販売しようか」とも考えた。何が起ころうとすべてを自虐にできる。


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