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不気味かわいさで400万再生の大反響!円盤猫「バルン」さんの生みの親が語る「違和感」

  • 2021年3月26日
  • Walkerplus

首を動かし、ロボット掃除機のように床を滑るように動く謎の猫――。2月22日の猫の日に投稿されたとある奇妙な動画がTwitter上で話題になっている。投稿された動画は400万再生を数え、いいねの数も19万以上と大反響。「この可愛い生物は何!」とかわいさを評価する声がある一方、「怖い」「ビビった」と驚きのコメントもあり、海外ユーザーも多くのリプライを寄せた作品の正体は、羊毛フェルトと電子工作で作られた人工の猫「バルン」さん。かわいさと異質さが同居する独特な猫を生み出した人工猫ウ -ArtificialCat-(@sacocho)さんに、バルンさん誕生のきっかけや制作の狙いを聞いた。

■「ウミウシみたいな猫」が「ルンバ猫」に
――ロボット掃除機のように動く円盤型の猫「バルン」さんが話題です。制作のきっかけを教えてください。

「もともとは、2017年ごろに“ウミウシみたいな猫“を作りたいと思ったのがスタート地点です。ただ、その頃は羊毛フェルトの技術もアニマトロニクス(生物の動きを再現するロボット技術)の経験もまだまだ足りていなくて、自分の目標を最初から達成するのは難しかったんです。

そこで、既製品を流用してまず動くものを作ろうと考え、ちょうど自宅にあったルンバをベースに、フェルトで作った猫を乗せたプロトタイプがバルンでした。2018年に投稿した時にも反響をいただいたのですが、試作品だったので話題になるとは思っていなくて。ルンバに本物の猫が乗っかっている動画もまったく意識していませんでした」



――今回話題となったバルンさんは、首の動きなどかなり精巧になっていますね。

「今のバルンはバージョンアップしたもので、実は中にルンバは入っていないんです。全体をプログラムでちゃんと管理したかったので、車輪のついたオリジナルの筐体(きょうたい)を用意して、本体の動き、首の動きを連動して動くようにプログラミングしています。だから外見的には一見同じなのですが、先日動画で投稿したバルンの中身は全然別物になっています」

――TwitterやInstagramではバルンさん以外にも奇妙な羊毛フェルトの作品を投稿されています。そもそも作品作りを始めたきっかけは?

「学生時代からもともと絵を描いていて、美大を目指したいとも思ったのですが、大学は工学系の学部に進んだんです。大学で電子工作の団体に入ってものづくりをしているうちに、電子工作と自分の作りたいものとはちょっとずれているなって思うようになりました。

ちょうどその頃、デザフェス(※デザイン・フェスタ。東京ビッグサイトで開催されるアートイベント)などでアート的な制作物にまた触れるようになって、そうしたアート作品に電子技術を組み合わせたら面白いなと思ったんです。最初は猫に限定したわけではなくて、ポメラニアンがお尻をひたすら振るマシーンなんかも作っていました」

■奇妙な猫がそこに存在する違和感を狙った“世界一癒されない猫カフェ”

――そこから猫を主な題材に選んだのにはどんな理由があったのでしょうか。

「僕は奇妙なものが好きで、現実に存在する猫がありえない動きや姿をしていることで生まれる違和感をつきたかったんです。現実の猫自体、なかなか奇妙な生き物だと思っていたので、犬よりは猫だろうと」

「それに、羊毛フェルトの世界ではドラゴンや幻獣みたいなファンタジーの生き物を製作する作家さんは多いんですけど、どうしてもファンタジーの生き物は『現実には存在しない』ってフィルターがかかってしまうので、猫の存在感がちょうどよかったんです」"

――確かに、作品への反響には「怖い」という声も多いですね。

「そういう違和感は狙いどおりですし、予想どおりでした。まあ、怖いだろうと(笑)。もちろん、たくさんの反響をいただけたことはとてもうれしいです」

――こうした奇妙な猫を集めて「世界一癒されない猫カフェ」というイベントも開催されたんですよね。

「作品をギャラリーに展示するような形ではなく、奇妙な猫がすぐそこにいて動いている、という空間を作りたくて、そこに猫カフェというアイデアがマッチしたので、2019年にカフェギャラリーをお借りして開催しました。猫カフェで癒し以外を押し出すことは普通ないので、じゃあ“世界一癒されない猫カフェ”だと(笑)。それに、ギャラリーだとどうしてもアートが好きじゃないと入りにくいというイメージがあるのも、猫カフェという入り口を選んだ理由のひとつです」

■よく分からない猫を、よく分からないまま世に出したい

――作品制作でのこだわりや思いを教えてください。

「こうして紹介していただくときによく『猫型ロボット』と書かれるんですが、自分ではあまりロボットって言いたくないんです。ジャンルとしてはアニマトロニクスなんですが(笑)」

「作っている自分でも、この奇妙な猫は一体なんなのかよくわからないまま、『こういう変な猫がひょっとしたらどこかにいるかもしれないですよ』という感覚を押し出せたら面白いなと思うので、あまり作品感を出さずに、技術紹介やキャプションをつけたりもしないでポンと世に出したいです」

――とは言え、羊毛フェルトと電子工作の掛け合わせでの制作は苦労する点も多そうですね。

「苦労の9割は羊毛フェルトです。プログラミングみたいな技術的な部分は再現性があるので、ネットで調べてその通りに作れば同じものが作れますが、自分の手を動かす部分はどれだけプロの動画を見ても同じようにはできないので。それにもともと手芸をやっていたわけではなくて、奇妙な猫を作るために手芸をはじめたので……。2018年から今まで、ひたすら猫の顔のクオリティアップに努めていました。これまであまり新しい作品を出せていませんでしたが、ようやく納得のいく作品が作れるようになってきたところです」

――今後、こんな作品や企画をやってみたいという構想はありますか?

「前回開催した猫カフェの内容をアップデートしてまたやりたいですし、動物園や水族館みたいに本物の生き物がいる場所とコラボできたら面白いなとも思っています。それと、奇妙な猫たちと実際の猫を会わせてみたらどうなるか、という企画もやってみたいですね。ただ興味本位で会わせてみましたということではなく、専門家の方に監修いただければ、学術的にも面白いことになるんじゃないかと。舵取り次第でアートやアカデミックな観点など、いろいろな見方ができると思っているので、いろいろ試していきたいです」

精巧な猫の姿に現実にはありえないような異質さを掛け合わせた、かわいくも恐ろしくもある人工猫ウ -ArtificialCat-さんの猫。これからもどんな不思議猫が生まれてくるか目が離せない!

取材協力:人工猫ウ -ArtificialCat-さん(@sacocho)

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