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「監督たるもの“営業マン”になれ」箱根駅伝2021 復路優勝の青学・原監督の真意とは?

  • 2021年1月29日
  • Walkerplus

歴史的な逆転劇が話題となった2021年の箱根駅伝。長年にわたって“国民的行事”として愛されている当レースにおいて、毎年その動向が注目されているのが青山学院大学の原晋監督だ。大学駅伝3冠、箱根駅伝4連覇など、陸上競技の指導者として数々の偉業を成し遂げてきた原監督が語る「監督たるもの“営業マン”になれ」…その言葉に込められたリーダーシップ論について聞いた。

※本稿は、原晋『改革する思考』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「スポーツビジネス=悪」という発想は、 学生のことを考えてないと思います

日本では、アマチュアリズムが尊ばれる傾向があります。スポーツビジネス=悪、と思っている人がいまだにいるのではないでしょうか。

私が提唱しているのは、スポーツ、陸上競技から生み出された利益が、監督や選手といった個人を潤すわけではなく、学習環境や練習環境の整備という、いわば活動の充実のためにお金を使いましょう、ということです。つまり、公のこと、選手を取り巻く競技環境の改善を行いたいのです。
 
私はなにも、長距離ブロックだけの充実を唱えているわけではありません。関東学連という組織全体で課題を捉え、箱根駅伝などから生み出される利益を短距離、中距離、そして跳躍や投てき部門の学生たちにも還元していく。そうした環境を用意すれば、才能豊かな選手が、野球やサッカーやラグビーではなく、陸上を選んでくれるのではないですか?

すると、オリンピックに出場し、メダルを争うようなスターが誕生するでしょう。少年少女たちは、スターを見れば憧れ、陸上に親しむようになります。この循環を作れれば陸上界はより発展するはずなのです。


■監督は、「営業マン」的資質が大切だと思うんです

これは決して夢物語ではありません。私は青山学院の近年の活動で、選手たちの可能性を大きく感じています。

とある選手には、海外のクラブからオファーが来ました。箱根駅伝、そして日本のマラソンレースは、海外から注目を集めています。新型コロナウイルスの問題で、今後は海外での活動に制約がかかる可能性はあるものの、日本の学生にはそうした選択肢が生まれているのです(だからこそ、高校時代から英語はしっかり勉強しておいて欲しいです。教科書だけではなく、生きた英語を)。

私にも、青山学院での解決すべき課題があります。お金の問題です。ざっと思いつくだけでも、活動費として次のような項目が必要になってきます。
 
・奨学金制度の充実
・運動用具の充実
・ボディケアの充実
・年間60日ほどの合宿費
・出雲駅伝への遠征費
・全日本大学駅伝への遠征費
・地方のトラックやロードレースへの参加費(パッと思いつくだけでも織田記念陸上・広島、兵庫リレーカーニバル、丸亀国際ハーフマラソン・香川など)
・海外遠征試合、合宿費
 
大会の場合、主催者からの支給もありますが、ほとんどの場合、持ち出しの方が多いのが現状です。他の大学では、マネージャーは自腹で大会に行っていると聞いたこともあります。どの大学陸上部もバイトは禁止されているでしょうから、親御さんに負担をかけているという意識を、どの大学の指導者も持っていることでしょう。

私は、青山学院の陸上部としてより充実した環境作りのため、積極的に収益構造を作っていきたいと思う。

いまは大学への予算申請があり、OBからの協力をもらって、なんとか予算のやりくりをしているわけです。お金さえあれば……2月の後期試験が終わったら、積極的に海外試合や合宿に行けるわけです。

また、経済的負担により大学進学を断念せざるを得ない学生への教育費のサポートにより、優秀な人材の確保ができると考えるのです。

学生3大駅伝を縦貫した次の目標として、世界で戦えるトップアスリートの育成に尽力することが、私の大学駅伝界での集大成としてのチャレンジになります。

そのために必要な資金は、大切なツールのひとつであると考えています。

そして、活動資金を集めるために必要なのが「ブランディング」です。

私は、大学の陸上競技部というものは、ブランディングを意識していくことで活動の可能性を広げられると思っています。大学長距離界は、他の大学スポーツよりも注目度が高いこともあり、企業にとっても魅力的なコンテンツのはずです(コンテンツというと、怒り出しそうな人がいますが)。事実、各大学ともいろいろな形で企業の協力を得て活動をしているわけです。

青山学院はアディダスの協賛を得ながら活動を行い、部としては、アディダスのプロモーションビデオなど、企業活動に協力しています。また、食品業界からも支援を頂戴して部の運営を行っていますし、企業、そして卒業生をはじめとしたみなさんからの差し入れもありがたい。
 
その収益を上げるためのチャンスが、2020年度のルール改正により生まれました。ユニフォームにもう1カ所企業スポンサーロゴをつけることが可能になったのです。

私は企業との「パートナーシップ」を進めることで、学生たちの活動をより支援できるのではないかと考えているのです。

実際、大学はこの数十年で「産学協同」を進めてきました。学校が企業との連携を深めることで、学生にチャンスを与えようとしているわけです。それなのに、スポーツの世界だけがアマチュアリズムを墨守して、お金を遠ざけるなんてことは、自分からチャンスを放棄しているようなものです。

だからこそ、私は監督たるもの「営業マン」になるべきだと思っているのです。

よりよい活動環境を作れば、選手たちの成績も上がる。そうすれば、強い選手が入学を望み、安定的な強さを発揮できるようになる。好循環を生み出すのは、監督の改革する思考、営業マインドだと私は思っているのです。


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