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「ウィズ・コロナ時代の働き方改革」ダーツバーでテレワークも?コロナ禍で飲食店が直面する“空きスペース問題”

  • 2020年9月2日
  • Walkerplus

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、大きな打撃を受けた飲食店やアミューズメント産業。外出自粛で客足が遠のき、客席の間引きや時短営業など稼働率の低下も相まって苦戦を強いられている。そんな中、減った客足を取り戻すため、カフェや飲食店がオフェススペースに変身する事例が増えている。テレワークへの流れが急速に進む中、ビジネス利用に活路を見出した店舗の事例から、ウィズ・コロナ時代の働き方と可能性を見る。

■テイクアウトや通販需要が高まる中、「場所ありき」の業態が抱える空きスペース問題
コロナ禍以降、飲食店は失った客数を補うべく、さまざまなアプローチを試みている。店内の消毒・換気の徹底や、テーブルや椅子の距離を離し、“3密”状態を回避するなどして安全な環境を確保することはもちろん、テイクアウトや通販の開始で販路を広げる店舗も増加している。だが、その場所で時間を過ごすことが大きなニーズの1つであるカフェや、カラオケといった場所ありきの業態では対応しきれないというのが実情だ。

首都圏を中心にビリヤードやダーツなどを楽しめるアミューズメントチェーン「BAGUS(バグース)」。20代から30代を中心に人気の高い同チェーンも、新型コロナウイルスで影響を受けている。

「政府の緊急事態宣言発令以降、5月ごろから順次営業を再開しましたが、再開後の業績は前年同時期と比較して減少しており、例年繁忙期となるお盆シーズンもピークとしては厳しい」と話すのは、株式会社バグースでビリヤード・ダーツ・カラオケ部門の統括事業部長を務める渡邊徹也氏。21時から23時ごろが平常時のピークタイムということもあり、特に夜間の外出を控えるムードの影響も大きい。

渡邊氏によると、コロナ禍以前は前年の業績を毎年更新するほどアミューズメント事業が盛況だったことから、これまでアイドルタイムの施策についてはそれほど注力してこなかったという。飲食を楽しみながらダーツなどの娯楽を楽しめるのがウリの同チェーンにとって、来店者数の確保は大前提となる。そうした中、空いたスペースの活用法として選んだのが、アミューズメントからは一見かけ離れた、コワーキングスペースとしての提供だった。

■コロナ禍のピンチをチャンスに!空きスペースで「テレワーク」
バグースが都内数店舗で2020年7月末から導入したのが、アイドルタイムの空席をワークスペースとしてビジネスマンに提供するサービス「ワークスルー」だ。専用のアプリを通して希望するスペースと日時を選ぶことで、登録された店舗を業務スペースとして利用することができる。15分単位での予約制のため、3密を確実に回避でき、予定した時間は確実にスペースが用意されているのがポイントだ。

一方、スペース提供側にとっては、空席を有効活用することで収益化につながるとともに、アプリ内でドリンクやフードなどのクーポンが掲載できることから、通常営業の収益性アップにも繋がるといったメリットがある。

新型コロナウイルスの影響を受け、多くの企業でテレワークの波が広がる中、高まるコワーキングスペースの需要をこうした形で既存の飲食店が受け皿となるスタイルが今、増えつつある。

「空いているスペースをビジネス利用のお客様に気に入っていただけるニーズがあるならば弊社としてもメリットがあるため、ぜひ有効に活用していければと」(渡邊氏)とサービス導入を決定したバグース。導入前にはワークスルーの事業責任者を務めるソフトバンクの加々本雄太郎氏が実際に店舗を回り、個室の内装や高級感ある雰囲気のある店舗を選定したという。

渡邊氏は「弊社はコワーキングに対する知識やノウハウがなく、バグースがワークスルーの利用者にマッチするかはまだ未知数です」と話しつつ、「道玄坂店や横浜店では、コワーキングスペースとして個室を長時間ご利用いただいている傾向は見られています。電源やネット環境があり、喫茶店より落ち着いて使えることが支持されているのでは」と、ワークスルー導入後の感触は上々のようだ。

■これまで馴染みのない店にもビジネス利用で「接点」生まれる
またこれまでの主な客層である20~30代だけでなく、40~50代の来店が見られることもワークスルー導入後の変化としてあがった。渡邊氏は、「しっかりコワーキングスペースであることを打ち出すことで、普段アミューズメントを利用しない層にも抵抗感なく受け入れられたのではないか」と要因を分析する。

「売上という点ももちろんですが、ワークスルーでのご利用で、これまでバグースを知らなかったお客様に認知していただけるのが一番のポイントだと考えています。コワーキングでの利用者が、コロナ禍が落ち着いた後、本来のアミューズメントを求めてお越しいただければ」(渡邊氏)

飲食店の情報はWEBで手軽に検索できる時代となっても、店内の雰囲気や客層は実際に入ってみないとわからないケースが多い。1人では入りづらい店や馴染みのない店でも、心理的な敷居が下がるビジネス利用を通して気軽に来店できるのも、コワーキングスペースを提供する大きな利点と言えるだろう。

■「仕事場が遊び場」となる?ウィズ・コロナ時代の働き方
ワークスルーはバグースの他、ダブリューピィージャパンが展開する「ウルフギャング・パック」やアサヒビールグループの外食事業・アサヒフードクリエイトなどがすでに導入しているほか、今後はホテルのラウンジのような飲食店以外のスペースも募集するとしている。

こうしたスペースでは、業務を終えた後、移動することなく本来の用途である食事やサービスを楽しむということもできる。外出がままならない中、単なる場所貸しにとどまらず、自宅やオフィスとは違った雰囲気やサービスといった付加価値のついた作業スペースのニーズはこれから高まっていくと考えられる。

一方、スペース提供側がテレワークにおけるニーズを把握しきれていないのは課題の1つだ。渡邊氏は「スペース提供は我々も手探り。たとえば飲食メニューは現状通常営業と同じものを提供していますし、コンセントの位置やネットワーク環境などまだまだ整えられる部分がある。お客様からニーズを拾ってサービスの質をもっと高めていきたい」と話す。

「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を掛け合わせた「ワーケーション」を政府が新しい働き方の一つとして提唱するなど、これからますます一般化するとみられるテレワーク。その中で、娯楽と作業空間が結びついたコワーキングスペースは、ウィズ・コロナ時代の働き方の定番スタイルとなるかもしれない。

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