宇部市新天町で温かい灯をともし続ける居酒屋「蘭燈(らんたん)」(TEL 0836-21-1813)が、5月1日に70周年を迎えた。(山口宇部経済新聞)
提供する「串メニュー」
1955(昭和30)年、焼け野原からの復興期、宇部出身の金光久子さん(97)が新天町商店街の脇道に店を構えたのが始まり。当初はクラブとして賑わいを見せ、開店から15年ほどたった頃からは昼間の営業も開始。芸術を愛する人々が集う場となり、地元作家の絵画や陶芸作品などを展示する「画廊らうんじ 蘭燈」として、独特の雰囲気を醸し出していた。
創業者の次女で、現在の店主を務める金光清子さんは、「母が27歳、私が3歳の時に店が始まった。焼け野原だった場所に手を引かれ、『ここでお店をやるのよ』と連れて来られた日のことを今でも覚えている。小学1年生の時に父を亡くしたが、戦後間もない大変な時代に、母は懸命に働いて私たちを育ててくれた」と、幼き日の記憶をたどりながら話す。
清子さんは高校卒業後、大阪の短期大学に進学するも、休みの日には地元に戻って店を手伝ってきたという。「結婚後、夫の転勤で東京に移住したが、母が体調を崩したのをきっかけに、35歳の時にUターンして店に立つようになった。新天町にまだアーケードがなかった頃から店を続け、今も残っている店は本当に少なくなってしまい、寂しさもある。街の景色は変わっていくが、私の体力が続く限り、この場所が皆が集う温かい場所であり続けたい」と、深い思いを込める。
2019年には「お食事処 蘭燈」として新たな一歩を踏み出した。店内をカウンター席10席に改装し、カラオケ用のステージも設けた。現在は清子さんが一人で店を切り盛りするため、火曜・金曜・土曜の夜のみ、その温かい灯がともる。
メニューは、焼き鳥を中心に、家庭的な味わいの一品料理が並ぶ。串メニューは、豚バラ、かわ、ネギま、もも、手羽先、つくね、エビ、アスパラベーコン(以上200円)、牛串(300円)など。一品料理は、定番の唐揚げ(500円)やおでん、おにぎらずのほか、日替わりで「サバのみそ煮」や「手作り豚まん」などを提供する。
70周年を記念し、5月9日から6月10日までの期間は「70周年記念月間」として、可能な限り毎日営業するほか、会計を1割引にする。
清子さんは、現在施設に入所している母・久子さんへの想いを馳せながら、「母のことを知っているお客様が来店された際には、ぜひ母を店に連れてきたいと思っている。皆で手拍子をしながら歌ったりしたクラブ時代のことや、8トラックテープを使った専用カラオケなど、当時の懐かしい思い出を語り合い、あの頃のように賑やかな時間を過ごしてもらえたらうれしい。そして、ぜひ母に会いに来てもらいたい」と、笑顔を見せる。
営業時間は、18時~22時(日によって23時頃まで)。定休日は、日曜・月曜・水曜・木曜。