伊勢神宮の社殿や神宝などを20年に1度新しくし、ご神体を新宮(にいみや)に移す式年遷宮の最初の祭典に当たる「山口祭」が5月2日、皇大神宮・内宮(ないくう)と豊受大神宮・外宮(げくう)の両宮で行われた。(伊勢志摩経済新聞)
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2033年に予定されている第63回式年遷宮は、新宮の御用材を切り出すに当たり、御杣山(みそまやま)の神に伐採と搬出の安全を祈願する山口祭が、内宮は神路山(岩井神社跡地の岩井田山)、外宮は高倉山(別宮・土宮の東)の山麓で、それぞれ執り行われた。
祭典では久邇朝尊(くにあさたか)大宮司以下の神職と造営を担当する職員が斎服を着けて奉仕。物忌(ものいみ)として奉仕する童男に、内宮は四郷小学校3年の千秋季誉(せんしゅうすえよし)さんが、童女に進修小学校3年の宮川結さんが、外宮は童女だけで厚生小学校3年の工藤千鶴さんが、それぞれ選ばれた。童男は半尻(はんじり)、童女は袙(あこめ)という装束を着け、忌鍛治(いみかじ)や小工(こだくみ)は素襖(すおう)・烏帽子(えぼし)の装束を着け、その上から明衣(みょうえ)をかけて祭典に臨んだ。
この日は早朝からの雨で神域が洗い流され、澄み切った空気に包まれた雨の中、粛々と山口祭が執り行われた。
同日の内宮では20時から、外宮は24時から、御正殿の床下に建てられる心御柱(しんのみはしら)の御用材を伐採するに当たり、その木の本の神を祭る「木本祭(このもとさい)」が執り行われ、その日に御用材が切り出された。同神事は古くより、一部の神職以外立ち入ることを許されない神秘の儀式とされ真夜中に行われる。木本祭でも、内宮の童男には千秋さん、外宮の童女には工藤さんが選ばれ、深夜の祭典を奉仕した。
「式年遷宮元年」といわれる2025年。山口祭、木本祭の後、「御樋代木(みひしろぎ)」と呼ばれる、御神体を納める器を奉製するためのヒノキを伐採する「御杣始祭(みそまはじめさい)」が6月3日、長野県の木曽谷国有林(上松町)で行われ、続いて「裏木曽御用材伐採式」が6月5日、岐阜県の裏木曽国有林(中津川市)で行われる。御樋代木は御杣山の山中で左右に並ぶ2本のヒノキを選び、3人の杣人(そまびと)が3方向から斧(おの)で切る「三ツ緒伐(みつおぎり)」という古式の作法で切り倒す。
木曽の山で切り出されたヒノキは、はるばる伊勢の地まで運ばれるが、道中、多くの市民の協力によって送り届けられる。伊勢の地に届けられたヒノキは、内宮は6月9日17時、外宮は6月10日16時に「御樋代木奉曳式(みひしろぎほうえいしき)」によって、内宮と外宮の域内の五丈殿(ごじょうでん)前に引き入れられる。