状況によって利用するサービスを変える必要も出てくることでしょう / (C)稲葉 耕太(くろまめさん)
予約のとれない介護施設『くろまめさん』をご存知ですか?
「介護×田舎暮らし」をコンセプトに、高齢者が昔ながらの生活を取り戻し、心身ともに健やかに過ごせる環境を提供しているとして注目を集めるデイサービスなんです。
そんなくろまめさんを運営する稲葉耕太さんが、介護で起こるさまざまな困りごと、大ピンチの対処法を紹介。稲葉さんの提案する「めっちゃ笑える介護!」を参考に、介護のピンチを解決していってみませんか?
自宅介護がそろそろ限界
状況によって利用するサービスを変える必要も出てくることでしょう。
段階ごとに周囲に相談をお願いします
夫の嵩さんが脳梗塞になったのをきっかけに、介護生活に突入したユミさん(77歳)。
だけどお風呂をはじめ、嵩さんのあれこれをお世話しながら家事をするのは本当に大変で、このままだと自分までまいってしまう。それで嵩さんにはデイサービスへ通ってもらうことにしたのですが、どの施設にもなじめません。相談相手もおらず、複数のデイサービスを転々としていた時期、ユミさんは強いストレスを感じていました。
ようやく嵩さんがくろまめさんを気に入ってくれ、週2回通うようになって3年目のこと。嵩さんはだんだんと衰えてきました。このままくろまめさんを利用し続けるか、それとも、24時間体制で介護してくれる特別養護老人ホームなどの施設へ移るべきか。ユミさんは再び選択を迫られます。悩んだ末にユミさんは嵩さんを説得し、特養ホームへ転所してもらうことになりました。その翌年、嵩さんはそこから病院へ入院し、最終的には寝たきりの状態となって亡くなりました。
お葬式でユミさんと久々にお会いした僕は、こんなことを言われたのです。
「お父さんはくろまめさんでお風呂に入るのが本当に好きでした。やっぱりくろまめさんに最期まで通わせてあげていたらよかった」
ほろほろと涙をこぼすユミさんに、僕もまた泣きそうになりました。
斎場の煙突から上がる煙を眺めていると「ああ~、やっぱり普通の風呂はいいなあ~」と言う嵩さんの声が聞こえたような気がしました。
■ピンチを分解
介護には大きく分けて3つの段階があります。
・第1段階は、自宅介護+デイサービス+ヘルパー(デイサービス、ヘルパーは状況によりどちらかを選択することも)
・第2段階は、ショートステイもプラスして利用する
・第3段階は、施設入所
今回のケースのように、お年寄りの状態が変化していくにつれ、施設を変える必要性も出てくるでしょう。その際大事にしてほしいのは、段階ごとになにを重視するか(例えば医療か、普段どおりの生活か)です。見学しに行った施設から勧められるがままに転所を決めてしまうと、後悔するかもしれません。それを防ぐためにも介護の段階ごとに立ちどまり、ご家族やケアマネさん、そして現在利用している施設の方にも相談してみましょう。ひとりで考えるよりも落ち着いた気持ちで判断できます。
※本記事に掲載されている情報は2025年4月時点のものです。掲載の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一本記事の内容で不測の事故等が起こった場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。
【著者プロフィール】
稲葉 耕太(くろまめさん)
1983年生まれ、京都府出身。株式会社ひだまり介護代表取締役。京都府船井郡京丹波町で介護施設『くろまめさん』(デイサービス)を運営。「介護×田舎暮らし」をコンセプトに、高齢者が昔ながらの生活を取り戻し、心身ともに健やかに過ごせる環境を提供している。介護技術を教える『介護の寺子屋くろまめさん』も開講、年16回ほどある講座はすぐに予約が埋まる。また、くろまめさんに通うおばあちゃんの料理と田舎ピザを提供する『おピザはん』を運営するなど、地域と介護をつなげる活動もしている。
※本記事は稲葉耕太(くろまめさん) 著の書籍『介護の大ピンチ解決します』から一部抜粋・編集しました。