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閉鎖的な田舎町で嫁いだ主婦の息苦しさは、やがてとりかえしのつかない悲劇へ。話題作著者インタビュー

  • 2023年6月11日
  • レタスクラブニュース


衝撃的なエピソードの数々が話題を読んでいる漫画『お宅の夫をもらえませんか』。この物語は義母の嫁いびり、夫のモラハラなど、閉鎖的な田舎町で暮らす主婦が感じる孤独や息苦しさなど、主人公が道ならぬ関係に進んでしまった背景がこれでもかとあぶり出されています。まずはこの作品のあらすじをご紹介しましょう。

『お宅の夫をもらえませんか』のあらすじは





高校時代の同級生・榎本栄一と卒業してすぐに結婚したなな子は、夫の両親と同居生活。ふたりの子どもを育てながら、家業の農業を手伝っています。夫の両親からは朝から晩まで嫌味ばかり、夫は会社勤めで家のことには無関心、しかも家事育児を手伝いもしないのに平気で「3人目の子どもを作ろう」と求めてきます。



なな子は家に居場所がなく、一日で唯一楽しい時間は子どもを保育園に預けるために家を離れる時だけ、家の中で落ち着けるのはトイレだけという、息苦しい生活を送っていました。

ある日、町にスーパーができてパートの募集をしていることを知ったなな子は、パートができたら今の生活が変えられるかもしれないと、すがるような気持ちで面接を受けます。面接官の若い店長・立川忍は保育園に最近やってきた若い父親でした。同じ園の保護者ということもあって面接は無事通過、パートに採用されることとなりました。



そして迎えたパート初日、仕事は楽しく一日があっという間に過ぎたものの、お迎えに遅れて息子には泣かれ、家に変えると先に帰っていた夫は「腹減った」と文句をいい、義母は「晩飯準備の時間には帰んなよ、何様なんだい!」と怒鳴りつける有様。パートで外の世界に触れたことで、なな子は自分の家の状況に不満を抱き始めます。

そんなある日、長女が遊びに行った友だちの家になな子が迎えに行くと、そこはパート先の店長・立川忍の家でした。おしゃれな家と素敵なインテリア、優しい夫がいてデザイナーとして働く妻の香織に、なな子は妬み混じりの羨ましさを抱きます。家に居場所がないなな子は、次第にスーパーしか居場所がないと感じるようになっていき、店長の忍に惹かれていきます。





忍もまたなな子の境遇に同情し、ふたりはやがて深い仲となってしまうのでした。しかし狭い町では噂が広がるのも時間の問題で、ついにふたりの仲を香織が知ることとなります。香織は夫のスマホになな子とのメッセージのやりとりを見つけ、夫になな子を連れてくるように告げます。そして、香織の前で夫となな子は土下座をするのでした。

閉鎖的な田舎町での醜聞で、居場所を失ってしまったふたりと、それぞれのパートナーが選択した結論は……?

『お宅の夫をもらえませんか』は、原作者のいくたはなさん、漫画のみこまるさんのおふたりの作品です。どのように作品がうまれたのか、お話を伺いました。



『お宅の夫をもらえませんか』著者インタビュー


──『お宅の夫をもらえませんか?』というタイトルもインパクトがあって、ドキドキハラハラしながら最後まで拝読させていただきました。まずはじめにこの作品を描くことになったきっかけを教えていただけますでしょうか。

いくたはなさん:
今までは自分自身の体験を元にしたコミックエッセイを書いていましたが、セミフィクションで何か書いてほしいと打診された時に、W不倫ものを書いてみたいと思いました。

みこまるさん:
原作者のいくたはな先生とは、オンラインのマンガ講座でご一緒させていただいて以来、マンガ仲間としてアドバイスをいただいたりと何かとお世話になっていました。いくた先生がこの原作の作画担当を探していらっしゃって、立候補し選んでいただいた次第です。



──なな子が、「パートができたら……」と叶わぬ夢のように思う描写に衝撃を受けました。なな子の置かれた現状や彼女のキャラクターについてお聞かせください。

いくたはなさん:
なな子は当初、幸の薄い雪女のような女性にしようと思って、作られたキャラクターです。
自己主張をすることができず弱いから、夫や夫の家族にもいいように扱われるし、忍のような人はつい助けたくなってしまう。
不倫のきっかけってどういうところから始まるのかいろいろと考えた結果いちばん描けそうな人がなな子でした。

みこまるさん:
夫の家業や昔ながらの風習に縛られて、自由な意思を持てなかったキャラクターとして理解していました。



──なな子とは対照的に幸せな家庭の主婦として登場した香織。ただ彼女は好きな仕事を辞めて家族のために夫の転勤についてきていました。香織の置かれた現状や彼女のキャラクターについてもお聞かせください。

いくたはなさん:
香織はなな子とは正反対のキャラクターにしたくて、作りこみしました。
香織は夫と対等な関係を築きながらも、好きな仕事を辞めて、家族のために自分のキャリアを犠牲にした女性です。
忍はそんな香織に感謝しつつも負い目があります。
香織はそれもわかっていて、「感謝してよね」と何度かアピールをしています。忍にとってはマウントのように感じられたのかもしれません。

みこまるさん:
「仕事は好き」だけど「家庭が一番大事」という自分の物差しを持った自立した女性ですよね。
どこでもやっていけるという強さもあるのかなと思いました。





──お二人のお気に入りのキャラクターや、お好きな場面、力を入れた場面を教えていただけますでしょうか。

いくたはなさん:
不倫がわかったときの香織の鬼気迫る表情はお気に入りです。
家庭を壊された女性の怒りと悲しみを表現できたと思います。
なな子の娘・一花は、母親をいじめる祖父母、無関心な父に囲まれ、小さい弟と明らかに差をつけられて育てられています。
幼いながらも、聡明な子なので将来は自分の価値観で選択していくことができる子になるんだろうと思います。

みこまるさん:
好きなキャラはお義母さんです(笑)。悪役に徹してもらって感謝です。どうやったら嫌味ったらしく描けるかその表情をしてみたりして描きました。
好きな場面は、忍とななこが夜の公園で待ち合わせるシーンです。足元しか描いていないのですが、2人の気持ちが重なったこのページ以降、ノリノリで描いていました。
力を入れたのは忍がななこをバックヤードで抱き寄せるシーンです。忍が理性を一瞬忘れて相手の領域に踏み込んだ瞬間なので。段ボールを描いてリアリティを出したり陰影で演出するのが楽しかったです。



──なな子と忍はお互い家庭があるにもかかわらず惹かれていきます。特になな子は姑や夫との関係でギリギリの精神状態だったこともありますが、その関係に縋ってしまいます。悪いことだと頭でわかっていながらも、忍と関係を持ってしまう感情の動きに説得力がありました。ここで伝えたかったこと、描きたかったことを教えてください。

いくたはなさん:
不倫をしたことがないので、不倫をしている人の気持ちは正直わかりません。ですが、なるべくリアリティが出るように考えて作っていました。
妻の香織が自立している忍は普段、人に頼られる機会が少ないんです。だから、なな子に頼られたことが嬉しい。
一方、なな子は自然に人に頼ることができるけど、夫は頼りにならない。
ふたりの欠けた部分がうまく重なるように描きたかったのと、その土地の持つ風土のようなものが二人を結びつけたように、読者に読んでもらえるといいなと思っていました。

みこまるさん:
夫婦も初めは寄り添ったり支え合ったりしているけれど、慣れてくるとそれが当たり前に感じて相手のことを大切に思いやれなくなることがありますよね。そんな時に気づいてくれる誰かがいたら、もしそれが誰かの伴侶なら…。
だからもう一度、自分の本当のパートナーを見つめてみませんか。そんな気持ちで描きました。



──夫が不倫しているかも、と疑いはじめた香織。彼女にとっては信じられない悪夢だったと思います。彼女の心情を改めて教えていただけますでしょうか。

いくたはなさん:
もし自分だったら、と思うと、とても普通ではいられないですよね。
香織は家族のために好きな仕事を辞めて、いわば犠牲になったのに、こんな仕打ちをされて、言い表せない怒りを感じたと思います。
また、物語の冒頭で可哀想だと、憐れんでいたなな子が不倫相手だったから、尚の事、屈辱だったのではないでしょうか。



みこまるさん:
香織は仕事より家庭を大切にする女性です。家族のために仕事も幾らか犠牲にしてきた。それなのにそれを脅(おびや)かされて、自分の安全基地が崩れていく危機感があったのかなと思って描いておりました。

──最後に、読者のみなさんへ一言お願いいたします。

いくたはなさん:
明確な悪い人はだれなのか、どうすれば不倫は起きなかったのか、解決策を考えながら読むのも面白いなと思いながら最近はいろいろな不倫ものを読むことが増えました。気が向いたらぜひやってみてください。

みこまるさん:
不倫はきっと傷つく人が沢山います。でも、頭の中で楽しむ分には大いに楽しんで良いと思います。この作品自体はエンターテインメントとして楽しく読んでいただければ幸いです!


取材=ナツメヤシコ/文=レタスユキ

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