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世界が認める国産チーズ。「チーズ大国ニッポン」となるための挑戦や取り組みとは?

  • 2022年3月11日
  • レタスクラブニュース


ピザやグラタンなどにたっぷりのったチーズ、おいしいですよね。気軽に外食できなくなった最近は、家飲みのお供としてさまざまなチーズを楽しんでいる人も多いと思います。

チーズといえば、ヨーロッパのイメージがありますが、実は最近、日本のチーズも年々そのレベルがアップしています。海外の名だたるチーズコンテストで入賞を果たす国産チーズも多いそうで、とっても気になる! ということで、国産チーズのセミナー「食べて発見!世界へ挑むチーズニッポン」に参加して、さまざまな日本のチーズのお話を聞いてきました。

現在300軒以上もある日本のチーズ工房。その技術は今や海外超え!


今回、話してくれたのは、NPO法人 チーズプロフェッショナル協会の副会長・坂上あきさん。2000年に発足したこの協会では、「チーズを通して食卓を豊かにする」をミッションに掲げ、チーズに関する正しい知識や楽しみ方を伝えることを目的に活動しています。セミナーやイベントの開催のほか、チーズプロフェッショナル資格認定試験や一般消費者向けのチーズ検定なども実施しているそうです。


特に力を入れているのが、日本のチーズの応援。2009年から「日本の名チーズ100選」という展示会を、2014年からは国産ナチュラルチーズのコンクール「ジャパンチーズアワード」も開催しています。

「日本の中小工房でチーズ作りが始まったのは1970年代後半ごろ。当時は海外の伝統技術にならって同じようなおいしいチーズを作ることが目標でした。でも、日本人ならではの起用さ、まじめさ、繊細さ、そして、チーズ職人の情熱から、今や日本のチーズは海外の技術を追い越したとも言えます。
近年は、海外にあるようなチーズを作るのではなく、日本の風土、味覚に合ったチーズを作っていくという新たなステージに入っているんですよ」と、坂上さん。
最初は数えるほどだった日本のチーズ工房ですが、現在は全国で300軒を超えているのだとか!



日本のチーズが国際品評会で続々受賞!


実際に、日本独自の、日本らしいチーズが世界的に名誉あるコンテストで上位入賞を果たすなど、海外で高い評価を受けるようになってきています。
2021年の「ワールドチーズアワード(WCA)2021」(開催地:スペイン)では、45か国・4079品の中から日本の2品が最高評価のスーパーゴールドおよびベスト16に入賞!
2022年3月の「ワールドチャンピオンシップチーズコンテスト(WCCC)2022」(開催地:アメリカ)でも、北海道、大阪、広島の工房がゴールドおよびシルバーを受賞しました。




「ワールドチャンピオンシップチーズコンテスト(WCCC)2022」の審査員で、アメリカのチーズ流通の第一人者でもあるキャシー・ストレンジさんによると、20年以上前、自身が世界的なコンテストでチーズの審査を始めたころは日本のチーズを見かけることは全くなかったそう。
「でも、いま、日本のチーズは世界クラスだと思っています。日本の職人のチーズに対する気遣いと献身はすばらしいですね。まさに日本のチーズの革命を見てきた思いです」と話していました。

長いチーズ文化を持つ海外の専門家も太鼓判を押す日本のチーズ、どんなものがあるのでしょうか。おすすめのチーズ工房とチーズをご紹介します。

個性的&バラエティ豊かな“ジャパンチーズ”を実食!


まずは北海道・ニセコにある「ニセコチーズ工房」。2代目オーナーの近藤裕志さんが家族3人で営む小さな工房ですが、そのチーズは国内外で高く評価され、多くの賞も受賞しています。大自然に囲まれた地で、羊蹄山の雪解け水が土や岩を通って湧き出たきれいな水を飲んだ乳牛の生乳を使い、湧き水はチーズの製造にも使っているそうです。

本格チーズからドライフルーツをまぶしたデザートチーズまで25種ほどそろうチーズの中でも、特に代表的なのが「二世古 椛【momiji】」。


「ワールドチーズアワード(WCA)2021」でスーパーゴールドを受賞したチーズです!
フランスのミモレットをモデルに作り始めたチーズですが、乳酸菌や酵母の使い方など他のチーズのいい部分を全部取り入れて、いまはオリジナルの製法で作っているそう。まるでからすみような美しいオレンジ色は天然色素で色付けし、2年熟成させたもの。濃厚で甘みもあり、生乳を脱脂して作っているのでクセがなく、日本酒や和食にも合うそうです。

もう1軒が長野県東御(とうみ)市の「アトリエ・ド・フロマージュ」。1982年に創業し、工房があるのは標高約900m、湿度が低い丘陵地です。
「チーズの本場フランスに似た風土の中、近隣で搾った良質の生乳を使い、創業者夫妻がフランスより持ち帰り、いまも受け継がれる技術で年間42トンのチーズを作っています」と、チーズ工房チーフの塩川和史さん。

特に青カビタイプのチーズ作りに定評があり、工房の象徴ともいえるのが「翡翠」。「ワールドチーズアワード(WCA)2021」スーパーゴールド、ベスト16、ベストジャパニーズチーズ賞を受賞したチーズで、多くのチーズ通に絶賛されています。


もともとは「もっと青カビの刺激があるチーズが食べたい」というお客の声が多くなったことから作られたチーズで、これまで作っていたブルーチーズの深み、旨味をさらに凝縮させ、力強さと旨味が広がるチーズに仕上げたそうです。

今回、日本のチーズ作りをリードするこの2つの工房のチーズを含む、4種類の日本のチーズを試食してきました!


右上から時計回りに長野県「ボスケソ・チーズラボ」の「KASUGA」、「ニセコチーズ工房」の「二世古 椛【momiji】」、「アトリエ・ド・フロマージュ」の「翡翠」、千葉県「チーズ工房【千】sen」の「季節の熟成チーズ」です。

「KASUGA」は口どけのよいウォッシュチーズでとってもミルキー。
「二世古 椛【momiji】」はほどよい噛み応えがあり、口の中に旨味があふれるよう。ジャリッとしたアミノ酸の結晶やまろやかな甘みも感じられました。
「翡翠」は青カビの刺激と塩気は強めですが、クリーミーでまろやかな旨味が絶妙なバランス。これはワインやバゲットが進みます。
「季節の熟成チーズ」はゆっくりと口の中で溶けてゆき、ミルクの香りがふわり。やさしい味わいでした。

日本のチーズがこんなにおいしいなんて、正直驚きました。本場のチーズに負けない味ながら、日本らしい繊細な風味も感じられ、日本のチーズの力を実感することができました。

日本のチーズを食べてさまざまな発展や取り組みに貢献!


海外でも高い評価を受けている日本のチーズですが、まだまだ食べたことのない人も。チーズプロフェッショナル協会副会長の坂上さんや海外の専門家が言うには、「日本のチーズが今後さらに発展していくには、日本人自身がもっと国産チーズを食べること」が一番なのだそうです。

「ニセコチーズ工房」の近藤さんは「日本のチーズが盛り上がれば、例えば、今は輸入に頼っている乳酸菌が国内で作られるようになったり、選択の幅が広がってさらにレベルアップできると思います」と話し、「アトリエ・ド・フロマージュ」の塩川さんも「多くの人に食べていただいて、日本独自の繊細さ、やわらかさ、和のテイストも出しつつ、日本でしか作れない、出せない独自の味が確立されれば、海外から求める声もきっと増えるはずです」と言います。


また、日本のチーズを応援することは、サステナブルやSDGsにもつながることに。多くの工房がただ単にチーズを作っているのではなく、食品ロスや地域との連携を考慮しながら、持続可能性のある取り組みをしているからです。
例えば、「ニセコチーズ工房」では地元ワイナリーから出るワインの搾りかすをチーズ作りに使ったり、近隣のウイスキー工場やベーカリー、日本酒醸造所などと一緒に「発酵ツーリズム」を立ち上げて地域一丸となって魅力をアピールしたり。
「アトリエ・ド・フロマージュ」でもチーズ作りに小諸市のワインや長野県産のアイスワインを使うほか、工房でチーズを作る際に出たホエーを近隣の養豚所が活用してホエー豚を生産したりしています。

世界トップレベルにある日本のチーズをおいしく食べながら、そんな取り組みにも自然と貢献できるなんて素晴らしいですよね!
あれこれ食べ比べてお気に入りを見つけて、日本のチーズを応援してみませんか?


文=岡田知子(BLOOM)

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