「相手がどう受けとるか、考えずに発言しがち」「会議の発言から、もめてしまうことがよくある」。これがいつものこととなると、発達障害の傾向がありそうです。
よく「空気を読む」と言いますが、空気は目に見えません。目に見えないものの意味をくみ取るのは、ASDの人にとってとても難しいことです。
「暗黙の了解」という言葉もありますね。「普通はこうだよね」「普通ならそんなことしないよ」と言われても、その「普通」って何? と混乱してしまうことも少なくありません。
誰もはっきりとは言わないけれど、なんとなく場の雰囲気で物事が決まっていく――そうした場面は、日本ではとくに多いように思います。納得できない、と強く感じることもあるでしょう。でも、お互いが納得するまでしっかり議論を重ねる文化を持つ国もたくさんあります。
みんなが空気を読み合っている中で、あえてそれを読まずに会議の流れを変えるような人が現れる――それがいつも悪いとは限りません。むしろ、そこから良いアイデアが生まれることもあるはずです。
ただし、それが受け入れられるのは、ふだんから話し合いや意見交換を重ねてきた間柄である場合です。事情もよく知らないのに突然口を挟んだり、否定するだけで自分の意見を出さなかったりすると、周囲はどうしても戸惑い、うんざりしてしまうでしょう。
空気を読むのが苦手でも、自分の意見を伝えなければならない場面はあります。それは仕事の場だけでなく、友人との会話や家庭の中でも、「このまま流すのはよくない」と感じるときがあるでしょう。
そんなときは、できるだけ否定的な言い方を避けるのがポイントです。
たとえば同じことを伝える場合でも、マンガに登場するKさんのように「部長の案は根拠が弱いので、考え直したほうがいいと思います」と言ってしまうと、まるでケンカを売っているように聞こえるかもしれません。それよりも「この案について、もう少し根拠を説明していただけますか?」と尋ねるほうが、前向きな話し合いにつながるはずです。
反対意見を伝えるときも、まずは相手の意見をいったん受け止めてから。「なるほど、そういう考え方もありますね」とワンクッション置いてから話を始めると、場の雰囲気はぐっとやわらぎます。
ASDの人は、思ったことをストレートに口にしやすい傾向があります。でも、人とのやりとりでは「まず否定」ではなく「まず肯定」を意識してみるだけで、伝わり方が大きく変わるかもしれません。
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