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Vol.77 連載3周年企画「みなさんの質問に答える」その3

  • 2011年8月4日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 みなさんから寄せられたなかからスタッフがピックアップした質問に3回連続でお答えしていく企画の最終回です。早速、今回の最初の質問です。

Q:2点質問があります。北山さんの考える、エネルギー自給の話と農業の話のリンクについてもう少しお話伺いたいなと思います。エネルギーというものを、人間のエネルギー出納も含めた大きなシステムでとらえておられて、その中の、人間に入ってくるエネルギーの過程に農業が位置づけられているという理解でいいんでしょうか。2つめは日本人の考え方をどう変えていくかについてです。たとえば北山さんはVol.66で、変人の苦行のようにならず(笑)「オレもこういう生活したい!」と思われるようなモデルを作るのがいいと書いておられます。ただ私はオランダに住むようになって、こちらの人々の「足るを知る」生活と、日本の「あれも欲しいこれも欲しい」という感じの際限ない消費志向との差をすごく感じているのです(私はもちろんその物欲や便利すぎる生活のなかで育ってきたので、質素なオランダ流を若干毛嫌いしながらもどこかリスペクトせざるを得ない、いまだ妙な感覚の中にいます)。震災以降日本人の考え方も変わるかもという気もしていますが、ものやエネルギーがふんだんにあるのが当たり前な人々に「凄い!こういう生活したい」と思われるようになるには、具体的にどういう要素・方法が必要だとお考えですか?

A:一つめの質問については、多分その理解で大丈夫だと思います。ちょっと補足すると、世の中の作用というのは全部がエネルギー出納であって、ここで言われている「人間のエネルギー出納」というのは“人間の肉体的なエネルギー出納”ということなんだろうと思います。

エネルギー図

 次に、二つめの質問について。まず、誰しもツリーハウスで暮らしてみたいとかハンモックで寝てみたいとか大自然の中にテントをはって過ごしてみたいとか、そういう自然に抱かれるような生活に多少の憧れはあると思うんです。でも、実際にそういう生活をする人があまり多くないのは、そういう生活が現実にはいろいろと問題を抱えるからですよね。たとえばトイレはどうするんだ?とか食事はどうなる?とか電気はあるのか?とか。そこで僕が思うのは、「それなら、それを解決すればいいんじゃないか」ということです。みんなが自然らしいと感じる環境があって、エネルギーはちゃんと供給されるけれど環境負荷はないっていう、そういう環境を作り出せばいいんじゃないかと考えるわけです。

 ちなみに、僕は“日本人はあれも欲しいこれも欲しいと思ってる”というわけでもないと思ってるんですが、“日本人はあれも欲しいこれも欲しいと思ってる”としても、人間って慣れる動物だから、そうじゃない環境もすぐに受け入れるように思うんです。ただ、そこで大事なのは、失ったと思わせないということだろうと思います。消費指向じゃない生活というのは何かが減るわけじゃないんだと納得すれば、みんな移行できると思うんです。勉強と同じですよね。“なんで数学やんなきゃいけないんだよ”って思ってる人に“数学やると、こんなに楽しいんだ”と思わせられれば、もうその人のほうから数学を勉強するようになるでしょ。だから、例えば「足るを知る生活」というものをワクワクするようなものとして提示できれば、わりとスムーズにみんなそういう生活に向かうんじゃないでしょうか。

 それで、この人以外にもエネルギー問題に関する質問はたくさん来ていて、特にこの電力の問題について北山は今どういうふうに考えているのか?という主旨の質問がいくつかあったんですが、それについて言えば、今は僕は孫正義さんに頼ってますね。孫さん頼みです(笑)。発送配電利権構造の分解、うまいことやってくれないかなあ、っていうね(笑)。
  基本的に、いろんな発電方式があって、いろんな企画が乱立するのはいいことだと僕は思っていて、しかもそういう乱立状態というか、いろんな人がいろんな会社を興して取り組むいろんな発電を人間対人間という関係性のなかでサポートすることで形になっていくということができていくといいなと思っています。顔の見える農作物と似たイメージです。近所の誰それさんが作った電気を買っています、という。

 ただ、大規模なレベルでエネルギー問題を考えると必ず政治が絡んでくるんですよね。例えば、日本近海のメタンハイドレートが実用化されて日本が資源大国になってしまったら国際的な発言力が増すので、いま大きな力を持っている資源大国は必ず圧力をかけてきます。それは、いい悪いじゃなくて、外交としては当たり前の話です。で、それは大人って汚れてるっていう話でもなくて(笑)、そういういろんなことをバランスをとりながらやっていくしかないんですよね。そういうなかでは、強いリーダーシップを持つ人が状況をひっぱっていくことが必要で、そういう人が官民学、日本全体から何人も出てこないと、しかもその人達が上手いこと連携しないといけないんだろうなと思っています。

 その一方で、僕自身は町内会レベル、個人レベルで何を導入すればどうなるのかというようなことを自分の土地で実証実験的に進めていこうと考えています。大切なのは、ひとつのソリューションで全部やろうというのではなくて、こういう場合にはこういう方法があるよねというのをお互いに認め合っていくということだと思います。“100万人にひとつの答えを”というふうに考えるから、例えば原子力の有用性が強く主張されるんだと思います。しかし、この連載では再三言ってますけど、これからはおそらく答えを出さなきゃいけない単位をできるだけ小さくして、細やかなサービスを届けるというやり方が求められていくんじゃないかと思いますし、そういう意識のなかであらためて最適解を出しなさいといけないということだと思います。

 さて、3回にわたってみなさんからの質問にお答えしたわけですが、全部に答えられなくてゴメンナサイ。みなさんの質問を読むと、この連載をじつにしっかりと読み込んで、さらに自分なりにいろいろと考えてくれていることがとてもよくわかりました。あらためて、お礼を申し上げます。僕としては、僕の考えに共感してくれるというのでなくても、この連載をきっかけにいろいろ考えてもらえれば、それだけで十分にうれしいです。もちろん、共感してもらえればもっとうれしいですが、でもまあ“ちょっと変わったことを考えるヤツがいるもんだなあ”とか思いながら、ひき続きこの連載を読んでもらえるとうれしいです。

 これからも、よろしくお願いします。

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