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Vol.63 やっぱりいちばん大事なのはお金、とは限らないはず

  • 2010年12月16日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

お金  ここまで社会起業について2回連続でお話してきましたが、実際にそういうことを起こそうとしたときにじつはいちばん重要な要素のひとつはお金のことだろうと思います。僕自身も起業するにあたって、特に「やっぱりお金の流れをちゃんと設計しないと…」と考えています。社会起業とは、まず問題意識があって、美しいモデリングがあって、解決方法が見えて、それを現実の社会に落とし込むということですが、そこで理想主義的な人たちにありがちなパターンは「お金は後からついてくるだろう、こんなに美しいアイデアなんだからなんとかなるだろう」と思ってしまうっていうことですよね。僕もそういうフシがあるので、そういう人が多いのかなと思ったりするんですが、どうでしょう?
  もちろん、「社会のためにやることなんだからボランティア精神こそが大切!」という考え方はあって当然だし、それを実践されている方は素晴らしいと思うんですが、一方で社会起業というからには厳しい意味で採算性がなければいけないと僕は思うんです。そこでは、どうやって収益を設計するかというセンスが問われるわけで、いま僕がやろうとしていることについてもそういう人材を求めていたりします。

 その設計の方向性は、どういうテーマで起業するかということにもよりますよね。活動自体に収益性がある場合と、活動を看板にして、その看板に対して誰かにお金を出してもらうという場合がありますから。まあ、お金が欲しい人がいる反対側にはお金を払いたい人もいるわけで(笑)、そういう人をみつけることができるかどうかということでもあったりしますが、それにしても社会起業というためにはやはりお金の問題についてのしっかりとした枠組みとそれに対する意識が必要ですよね。お金が流れること自体が社会に貢献していることになるという実際的な意味だけじゃなく、その活動にお金が流れることが社会的に意味があるというような活動になるべきだと思うからです。

 ただ、いきなり矛盾するような話になりますが、「社会のために自分がやりたいことをやるんだ!」という立場に立てば、「お金の問題なんて大したことじゃない」というふうに思う自分がいることも事実です。東京で生活していると、何をするにしてもお金がかかるけれど、例えばシンプルな生活に接してしまうと、「お金がないと何もできない」と思考停止してしまっていいのか、というふうにも思います。
  社会起業の実際の現場でも、何かアイデアを思いついたときにそれが成功するかどうかは、誰かが先にやっていても、そのアイデアが陳腐であっても、結局「とにかくオレはこれがやりたいんだ!」という強い意志があるかどうかというのがすごく大きいと思います。元々のアイデアが優れていなくても、あるいは珍しくなくても、そのアイデアを実行に移して、やり続けられる情熱と体力があれば、必ず価値は生まれる。ゴスペラーズが歩んできた道のりは、まさにそのパターンですよね(笑)。

 僕は思うんですが、社会の流れとは人の流れだから、人の流れとそれにやはりお金の流れ。この2つを捉え直すことができれば、誰でも社会起業家になれるような気がするんです。ゼロ年代もあとわずかで、年が明ければまた新しい十年が始まるわけですが、その新しい時代に人の流れとお金の流れについての自分なりの考えを形にしていくのも面白いんじゃないでしょうか。

 最後に、この話題は「カタリバ」の本を紹介してもらったことから始まったので、僕からも1冊、本を紹介して終わりたいと思います。「未来を変える80人」という本です。世界中の社会起業家の仕事ぶりを紹介しています。興味がある方はぜひ読んでみてください。

 それで、僕の連載の年内の更新はこれが最後になります。今年も、ご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

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