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Vol.41 「自己中心的でもいいから」と認めたうえで考えるべきこと

  • 2010年2月4日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回は、贈り物を受け取ったり贈ったりする際には相手の気持ちをまず考えてみようという話をしましたが、今回は逆に(と言っても、じつは同じ方向の話なんですが)“自己中心的でいいんじゃないか”という話です。

 人間という種がある程度のストレスは抱えながらもそれなりに満足感を持って生きながらえるためにはどうすればいいのか?というのが現代におけるわれわれのいちばんの課題だと思っているんですが、そこで問題となってくるのが地球にとってのガン細胞的な意味合いでいま存在している「自然淘汰からの脱却」という在り方だと思うんです。例えば、そのままなら環境に適合できないような場合でも医療や建築その他の技術によって自然治癒をかなり超えた確率で生きながらえることができるようになっているわけです。そういうことをやってのけてしまえるのも、人間という種の特性のひとつだとは思います。否定しているわけではありません。もちろん僕自身もそういった医療技術に少なからず依存しています。でも、その在り方が自分たちのゆりかごとしての地球環境を駄目にしてしまいかねないと気づいたところが現代のエコ活動の出発点の一つであったことも事実でしょう。いまわれわれがおかれている状況というのは、極端な言い方をすれば、困っている人を全員助けると結果として全員死ぬことになるということです。だから明日からどうしろ、という話ではないですが、そういう構図自体は自覚しておくべきだと思うんです。
そして、そこで僕が思うのは、人を助けるという行為は自分のためにやっているという意識でないと意味が無いだろうというか、そこの自覚がないと欺瞞的な政策やキャンペーンにうまく乗せられてしまうことにも結果的にはなってしまうということです。

 エコに関わる話では“地球のために”という常套句がありますが、なぜそれが大事だと思うかと言えば、自分の子どもや孫が少なくとも今よりひどい環境で暮らすようなことになってほしくない、少なくとも自分と同じくらい幸せに暮らしてほしいと願うからですよね。でもよくよく考えてみると、それは結局自分のためなんですよ。“子孫のために”と免罪符的に口にするけれど、でもやっぱり自分のためなんだ、と。つまり、僕が言いたいのは「自己中心的だということを認めようよ」ということなんです。自己中心的でかまわないんだよっていう。ただ、そのことを認めると同時に理解してほしいのは、“自分が立っているその「中心」を生態系と調和する方向に移動させていかないと自己中心的でいられなくなるよ”ということなんですよね。それを「地球にやさしく」と言ってしまうのは、広告的なセンスはあるのかもしれないけど、本質からははずれているし、もっと言えば人を騙そうとしている気配さえ僕は感じます。「『地球にやさしく』というのは悪くないけど、ちょっと違うよね」と感じる人が増えないとまずいよなと、僕は強く思います。

イメージ もう一度整理して言うと、継続的に自己中心的であるためには中心がどこであるかということを考えなきゃいけなくて、その答えにたどり着くためには人間のなかだけで考えても意味がないということですね。これからの人々の暮らしを考える際には地球単位とか宇宙単位で人類がどこに立っているのかということを知らなければいけなくて、でもそれを知れば人類が世界の中心であるはずがないという真実にたどり着いてしまうと思うんです。自己中心的でいいんだけれど、「その中心は世界の中心ではないよ」と。ちょっと理屈っぽい言い方になってしまいましたが、でもこういう考え方は日本人には向いてるというか、馴染みやすいと思うんです。この国は、神様も仏様もいて、やおよろずの神もいるという信仰に馴染んできた国だから。自然と人間が調和して、いのちをいただくんだ、と(僕らが口にするものはすべていのちなんですよ!)。そのことをもう一度、しっかり認識するということですよね。屠殺される動物を見て“かわいそう”という単純な話ではなくて、“自然のいのちをいただいて、自分のいのちがあるんだ”というつながりのなかでわれわれは生きているということなんですよね。例えば、スナック菓子などを食べて暮らしていればそういった生々しい世界からは離れていられますが、そういう食生活を送っている人間の体がどうなるかということはもうみなさんよくご存知でしょう。

 話を戻すと、継続的に自己中心的でいるためには自分の立っている場所を正しく認識する事が必要だということです。だから、職場や学校、地域の人たちとの関係性、自然とのつながりなど、いわゆる「環境」についてよく考えることが重要だと僕は思います。


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