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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第56回 中国の投融資グリーン化〜持続可能な発展のための必然の選択

  • 2008年9月11日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

特集/拡大する中国の対外投融資とそのグリーン化に向けて(その2)中国の投融資グリーン化〜持続可能な発展のための必然の選択 グリーン・ウォーターシェッド代表 于 暁剛(ユ・シャオガン)、『中国環境報』主任記者 丁 品(ティン・ピン

無断転載禁じます

 中国政府による「走出去(海外に出ていく)」政策に伴い、中国企業は東南アジア、サハラ以南アフリカ、南米をはじめとする世界の大規模事業に関わっている。これらの事業の多くはエネルギー開発のための石油、天然ガス、採鉱などの採掘産業やダム建設であり、重大な環境社会影響が懸念され、投資リスクも高い。受け入れ国にとっては中国からの融資は利率がより低く、審査プロセスも迅速だという利点もある。だが、中国が国際的な投融資のスタンダードに背けば、自身にとっても悪い結果を招くだろう。
 環境社会影響が懸念される中国の海外投融資事業にはいくつかのケースがあり、各国の注目を集めている。ボルネオのアブラヤシ園開発計画では現地の河川流域の生態系に重大な影響を与えることが懸念される。南米スリナムでは海運コンテナのため中国企業が木材を伐採し、現地コミュニティへの悪影響が懸念される。西アフリカのガボンでは中国企業の開発する鉄鉱、港、鉄道とダムなどのため、ゴリラやチンパンジーの保護に悪影響をもたらしている。ビルマやスーダンなど政治的に孤立している国での事業にも積極的に資金を提供し、NGOのみならず世界銀行(世銀)総裁をはじめ国際社会からの強い批判を浴びている。
 国際的には国際籍金融機関の環境政策は世銀のセーフガード政策に始まり、民間銀行についても赤道原則などが採用され、各国NGOもそのプロセスに深く関わってきた。中国の金融機関はもはやこうした国際的な環境スタンダードの「欠席者」になるべきではない。

金融システムの近代化と国内の経験

 中国の銀行界は長らく環境社会面を軽視し、こうした問題は金融業とは無関係だとみなしてきた。1995年には中国の中央銀行である中国人民銀行が金融部門に対して、国内事業に融資する際には国の環境法に基づく審査の後に融資決定を行うよう求める通達を出した。海外投融資に関しても2001年の世界貿易機関(WTO)加盟後、中国の銀行はますます国際的金融ネットワークに組み込まれ、自然な流れとして赤道原則など国際的な環境政策も理解され始めている。また国際金融公社(IFC)はトレーニングなどにより中国の商業銀行が一層の環境社会面の配慮を行うよう働きかけている。だが現状では中国の銀行の環境面での意識も政策もまだ遅れていると認めざるをえない。
 「投融資と環境政策」という観点から受け入れ国としての経験を振り返ると、中国国内にはアジア開発銀行をはじめとする国際金融機関による大規模インフラ事業と多くの環境社会問題が存在し、とくにダムによる移転など、開発機関のセーフガード政策や国内法に基づき金融機関が責任を負うべきことはよく理解されている。国内でセーフガード政策にのっとり事業の負の影響を軽減しようとする経験は蓄積されているが、こうした経験がとくに中国のNGOの戦略上、中国の海外等融資事業の問題について改善に役立つかどうかは定かではない。それとは別に、近年中国政府の環境保護部門と金融機関との協力関係の深化を示す以下のような動きがある。

国内の「グリーン融資」政策とその問題点

 最近では2007年7月、国家環境保護総局(SEPA)、中国人民銀行、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)などが共同で国内事業の許可・審査状況を調査し、違法者を厳しく処分するという通達を出した。また企業の信頼度を示すものとして環境情報をデータベース化するため、SEPAは金融部門に対してEIA審査結果や実際の事業による環境影響、深刻な汚染事故を起こしたり、行政の処罰の決定に従わない企業の名簿など、必要な情報の提供を行うことになった。銀監会は各銀行にこうしたSEPAのブラックリストを公表し、融資を行わないように求め、また、銀行や金融機関の企業に対する融資審査を強化し、省エネなどへの投資を促進するための仕組みも整備することとした。
 こうした取り組みにより、2007年5月末までに中国の主要な金融機関による石油や石炭、化学工業など汚染のレベルの高い長期的な事業への投資増加のスピードはやや抑えられてきている。通達の後、中国人民銀行はすでに1万冊以上にのぼる違法企業の名簿を受け取っている。だがこれらの企業名簿にコードがないなど単純な技術的な問題から、銀行は違法企業を確定、識別することができないなど克服すべき課題も多い。
 またSEPAは2007年10月にガイドラインを発表し、企業が新しく国内の株式市場に上場する際には3年間にわたる環境保護に関する検査を受けなければならないと規定した。もしこの検査に不合格になれば、SEPAは株式市場の監督機関にこの情報を通達することとされている。
 しかしこうした措置はまだ十分な効果を挙げているとは言えない。原因としては第1に中国の資本市場は依然として初級段階にあり、上場を目指す企業は環境問題を軽視し、違反企業でも簡単に資金を集められるのみならず、環境影響に関する情報は単純なものにとどまり、環境部門のモニタリング能力も非常に弱いことが挙げられる。通常は、大きな汚染事故や事件が起きないかぎり注目されることもない。さらに中国国民の世論は資本市場へのプレッシャーをかけられるほどには成長していない(そのため企業はブラックリストを恐れない)。中小規模の株主では資本市場において環境問題を取り上げることは大変困難である。また、国際的にも現在の赤道原則はプロジェクトファイナンスのみに適用され、コーポレートファイナンスについては適用されず、業界の関わる事業のすべてをカバーすることはできない。さらに中国国内の通達やガイドラインは法的強制力に欠け、金融機関が違法企業の事業の「情報の伝達」を行うのみで、違法企業に対して融資を行った銀行に対する具体的な懲罰の措置もない。現在のいくつかの省においては事業への融資総額の半分以上を銀行以外の民間資本が占め、商業銀行への監督だけでは大規模で目立った汚染企業のみしか取り締まることしかできない

NGOの参加とモニタリング

 省エネをはじめとする環境配慮型社会を築くことは中国社会においてもはや主流となりつつあり、中国国内の「グリーン融資」政策の登場はその重要な指標の一つといえよう。さらに近年、中国の環境NGOは著しく成長し、より独立した活動を行い政府と企業の外の第3の力として、人びとの実情や世論を反映し、モニタリングするという重要な役割を持つようになってきている。グリーン融資政策およびそのためのアドボカシーは、中国のNGOによる環境保護活動に新たな扉を開いた。中国の金融機関は環境社会政策をより充実させるべきであり、国内外を問わず中国の金融機関が関わる事業の投融資に関する審査はすべての市民によるモニタリングを受け入れなければならない。
 海外の経験では市民の強力な世論による圧力とモニタリングが金融機関のグリーン融資政策を実施する根本的な動力となることが確かめられている。政府は銀行以外にも環境社会影響の情報を公開し、さらに必要経費の支給など真の平等と対話のための仕組みを整えるべきである。さらに中国のNGO自身のキャパシティビルディングも必要である。NGOは銀行や金融というなじみのない分野、とくにグリーン融資を提唱するだけでなく、融資やリスク管理、投資の背後にあるマクロな状況をも理解して理念を発展させる必要がある。中国の海外投融資は外交の関わる複雑な問題であり、長期・短期的な国の利益や外交環境を理解し、判断しなければならない

(翻訳/大澤 香織)

(グローバルネット:2008年3月号より)


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