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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第52回 持続可能なパーム油とは〜CSRの視点から

  • 2008年5月15日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

特集/パーム油から学ぶ企業の環境配慮〜責任ある原材料調達とボルネオの森
持続可能なパーム油とは〜CSRの視点から 
(株)レスポンスアビリティ代表取締役 足立 直樹さん

無断転載禁じます

CSRとして求められているもの

 私は「持続可能なパーム油とは何か」、とくにCSRの観点から話します。まず皆さんに申し上げたいのは、現在、あらゆる原材料や産業が同じような問題を抱えており、パーム油は一つの例に過ぎないということです。またCSRについて、日本ではよく「企業の社会的責任」と訳され、コンプライアンスと絡めて語られます。しかし実際は、もう少し幅があると思います。すなわち、何かをしなければいけないという義務的なものではなく、企業が自発的な形で問題解決に当たり、「より良い社会をつくって行くためにどのような貢献ができるのか」が求められているのではないでしょうか。

パーム油の問題点

 現在、パーム油は持続可能ではありません。非常に安い植物性油脂として多くのところで利用され、その需要はどんどん増加しています。日本では食用油として使われている部分が非常に多いのですが、ここ数年は地球温暖化防止のため、バイオディーゼルの原料として使おうという世界的な動きも出ています。中国やインドといった経済発展の著しい国における需要の増加も一因です。しかしそれと同時に、さまざまな問題も深刻化しているのです。

 これには大きく二つの問題、「環境問題」と「社会問題」があります。環境問題としては、パーム油は主にプランテーションで作られるため、森を切り開く必要があります。森を切り開くことで生物が減少し、その多様性も失われるのです。農薬使用による地域環境の汚染や健康被害も問題です。そして、管理方法が悪いとメタン等の温室効果ガスも発生し、地球温暖化を促進してしまう可能性が指摘されています。

 社会問題としては、とくに、農園労働者の衛生・安全面や賃金面の問題が挙げられます。強制労働や児童労働に関する報告も聞きます。開発地域の先住民の権利が侵害されることもあるようです。

誰の責任か

 2002年までは一番使われている植物性油は大豆油でしたが、それ以降パーム油が世界一となっています。当然プランテーション面積も増加しており、マレーシア国土の面積の十数%と、非常に大きな割合を占めています。

 もともとマレーシアは、世界で最も生物多様性が豊かな地域と言われていますが、その森がどんどん丸裸にされていく状況にあります。そして、木を切った後アブラヤシを植えて、一面アブラヤシのプランテーションになります。これは一見、緑ですが、生物多様性は非常に貧弱なものになってしまいます。

 生物多様性の減少、また働いている人も場合によっては良い影響を受けていないとなると、一体誰の責任なのでしょうか。森林を開発した企業や投資家の責任でしょうか。製油業者、そこから製品を作るメーカーや小売業者の責任でしょうか。あるいはパーム油を使用している私たち自身の責任なのでしょうか。おそらくすべての人に、何らかの責任があると思います。それぞれの人が自分の責任を果たしていかなければ、持続可能な形に切り替えることはできないでしょう。

持続可能なパーム油のために

サプライチェーンを遡る (図:サプライチェーンを遡る、作成=ポンプワークショップ)  パーム油を作るためには、プランテーションから始まって何段階もの企業や労働者が関わっています。このサプライチェーンを遡ることで、もう少しいろいろなことができるのではないのかという取り組みが始まっています(図)。

 「持続可能なパーム油に関する円卓会議(RSPO)」は、パーム油の生産をその最上流まで遡って見ています。関係するさまざまなステークホルダーが参加し、農園におけるパーム油生産の持続可能性のための新たなアプローチを模索しています。


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