サイト内
ウェブ

このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第20回 紙製品に変わるタスマニアの原生林〜消費側からプレッシャーを

  • 2005年9月15日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

紙製品に変わるタスマニアの原生林〜消費側からプレッシャーを ウィルダネス・ソサエティ森林問題担当 フィル・プリンジャーさん

無断転載禁じます

1日にサッカー場40個分の天然林が伐採

  タスマニアはオーストラリアの東南部に位置する、北海道と同じくらいの面積の小さな島です。非常に美しい島で、広大な原生林、手つかずの川が残っています。日本でいえば白神山地といえます。世界的に見てもユニークな生態系が残る「タスマニア原生地域」が世界遺産として保護されているのですが、広大な原生林はそこからはずされており、商業伐採が行われています。

写真 写真
伐採計画の対象とされている地域の一つ、スティックス渓谷の原生林。手つかずの川や滝、洞窟が存在する。 タスマニアには世界で一番樹高の高い広葉樹林が残されている。米国カリフォルニアのセコイヤスギに次いで背の高いセイタカユーカリは、樹齢400年以上、高さは90m、幹の周囲は20mにも達する。

 伐採が進む北西部のターカイン地域は、世界でも希少な温帯雨林の一つで、樹齢3,000年といわれる先史時代からの樹種が多くみられます。そこには体長1mに達する巨大なロブスターやタスマニアデビルと呼ばれる固有の野生生物が生息していますが、これらの生物は絶滅の危機に瀕しています。

 タスマニアは世界でも最も深刻な森林伐採が急速に進められている地域です。急峻な山間部で伐採が行われ、1日にサッカー場40個分に当たる広さの天然林が伐採されています。伐採企業ガンズ社が元凶です。伐採跡地にはヘリコプターから火が放たれ、焼かれます。これによりそこで生息する野生生物の生命も奪われています。この春だけでも400ヵ所以上で焼却が確認されています。

写真 写真
オーストラリアの巨大伐採企業・ガンズ社による原生林破壊。タスマニアの原生林では、ガンズ社によって世界で最も深刻な伐採が進んでいる。 タスマニア島のあちこちで、伐採跡地の焼却が行われている。今春には、400ヵ所以上で焼却が確認されている。

 ガンズ社は原生林を皆伐した後に産業向けの植林を行いますが、植林した樹木が芽を出す頃、植林の苗を食べる野生生物を駆除するために、毒薬「1080」を浸したニンジンをまき、野生生物を死に追いやります。

 タスマニアの森林公社やメルボルン大学の調査報告書によると、タスマニア北東部で、たとえ森林伐採が進まなくても、絶滅危惧種・オナガワシが絶滅するおそれは62%ですが、森林伐採が進むと絶滅のおそれは75〜97%と高くなるということです。

 オーストラリアで100人の科学者たちが集まって、このような伐採を止めるように緊急に呼びかけました。タスマニアで制定されている地域森林協定(RFA)にきちんとした基準が取り入れられれば、守られるべき保護価値の高い森林が保護されるはずだとしています。しかし、協定は失敗に終わっているというのです。

伐採された木材の行き着く先は日本

 タスマニアで伐採される森林のうち90%以上は木材チップとして日本に輸出されています。オーストラリアの木材チップ輸出量は年間約700万tで、このうち550万tはタスマニアから産出され、日本に輸出されています。紙の消費で日本は、アメリカ、中国に続き世界で3位です。日本が輸入する広葉樹の木材チップは、オーストラリア産が3分の1以上を占め、その大部分はタスマニア産なのです(図)。

日本の木材チップ輸入先(2002年)
図
<出展>資料: 日本製紙連合会HP

 ウィルダネス・ソサエティは他のNGOや住民の声を反映して、保護されるべき森林を示す地図を作成し、国立公園や保護地を設置することを求めています。また、タスマニア南部のスティックス渓谷で5ヵ月にわたり樹上65mでの座り込みをしました。日本からはグリーンピースのボランティアの野田沙京さんが参加しました。オリビア・ニュートン・ジョンなど多くの有名人も伐採現場に訪れ、森林保護を呼びかけてくれました。

 昨年10月に行われたオーストラリア総選挙でも、タスマニアの原生林保護が最も注目すべき環境問題として争点になりました。最終的には現職のハワード氏が勝ち、タスマニアの17万haの森林を保護すると公約しました。

製品購入の際の選択にタスマニアの原生林を守るカギ

 しかしながら、いまだ破壊的伐採は続いており、タスマニア州政府はこの現状を許しています。日本製紙、王子製紙などは木材チップの輸入を継続しており、こういった旺盛な需要があるから破壊的伐採は継続されているのです。

 私たちは、皆さん消費者から紙製品利用会社、製紙会社、商社にタスマニア産のチップを使わないように圧力をかけてほしいと思っています。ウィルダネス・ソサエティはグリーンピース・ジャパンと協力して日本の製紙企業にタスマニアの保護価値の高い森林からの木材チップを購入することを停止してほしいと要請しています。

 一方、富士ゼロックスやキャノン、リコーなど日本の紙製品利用企業は調達方針を制定しています。原生林からの調達に対するこうした規制をどうか続けてほしいと思います。皆さんができることは、まず、タスマニアの原生林からの購入を停止すること。次に、タスマニアの原生林からの製品を扱う企業に原生林からの原料を使わないように、プレッシャーをかけてください。100%再生紙の使用、FSC(森林管理協議会)の基準に沿った認証製品の使用など、製品購入の際に賢明な選択を行うことがタスマニアの原生林を守るのです。

写真提供=グリーンピース・ジャパン
写真撮影=Geoff Law

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。