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第16回 景観緑三法の制定を踏まえた緑地・環境保全への期待

  • 2005年5月12日

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特集/地域の力で緑豊かな景観を〜景観緑三法の成立で期待される地方の取り組み景観緑三法の制定を踏まえた緑地・環境保全への期待北海道大学大学院教授 越澤 明(こしざわ・あきら)

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景観緑三法の制定による期待

 2004年6月、景観緑三法が公布され、今年12月から施行される。景観緑三法には、全国の自治体、学識者、緑と環境に取り組む市民団体から期待が大きい。

 景観緑三法制定は、1919年から今日までのわが国都市計画の歩みの中で画期的な事柄である。大正末期から昭和初期にかけて、東京や大阪などでは都市公園が新設され、景観的にも優れた並木道が出現し、都市美運動が高まり、東京、名古屋の郊外地では風致地区を指定した緑豊かな区画整理も出現した。これは景観緑の都市づくりとして先駆的な実践であったといえる。

 敗戦後の復興と戦後の高度成長の中で、わが国では急激な都市化と宅地造成が大都市圏で進行した。その際、形成された市街地はスプロール、乱開発が多く見られ、68年の都市計画法制定による土地利用コントロール(線引き制度、開発許可制度)導入のきっかけとなる。66年、鎌倉や京都などでは、宅地開発による歴史的な景観と緑の喪失に危機感を抱いた市民運動が契機となり古都保存法が制定され、古都指定が実現した。また、首都圏、近畿圏レベルの広域的な緑の拠点と緑地帯を保全するため、首都圏近郊緑地保全法などが制定され、相模原の平地林や六甲山麓グリーンベルトなどが保全されてきた。この両法によって保全された緑は今日、かけがえのない環境遺産となっている。

 現在、全国で景観条例を有する自治体の数は500を超し、都市緑化に熱心な自治体も少なくない。しかし、次のような点でまだ課題や問題が多いのも事実である。第一に、市街地と里山を包含した都市景観の創造、とくに都市近郊の田園景観について課題が多いこと。第二に、従来、自治体の景観条例や景観政策が市街地の個別の建物に注目し、市街地の緑やたたずまいを含めた街並み全体の品格、景観と緑の一体的な政策推進については弱かったこと。第三に、相続発生や企業不振による所有地の転売・放出などによって、民間所有の山林、邸宅、研修所として維持されてきた景観と緑が急激に変容・喪失している事例が少なくないこと。第四に、従来は農林業という産業や環境保全の施策で維持されてきた里山、ため池、防風林、河岸段丘、湧水なども維持管理が十分でなく、荒廃が見られること。

 景観緑三法が制定された結果、法的拘束力のない自治体の景観条例ではなく、国の法律によって裏付けされた法的規制力にもとづく景観条例や景観計画が可能となり、また市街化調整区域の農振農用地区域や都市計画区域外の田園地帯に対しても景観法制の適用が可能となった。また都市緑地法の制定によって、都市の緑に関する総合的な法制度がほぼ完成した。景観緑三法は、企業(法人市民)も含めた市民活動に対して評価し、奨励・支援する立場を採っている。このたびの景観緑三法の制定が、わが国の市街地と田園がより美しい景観と緑豊かなものへと徐々に変わっていく大きなきっかけと支えとなることをぜひ、期待したい。

都市の緑とは

 都市の緑(英語ではオープンスペース)は、マネジメントと資産保有という観点からは、「施設緑地」(原則国公有地で公共の利用に供される)と「地域制緑地」(緑が保全されるよう土地利用規制された場所。民有地が多い)に大別される。さらに、「施設緑地」と「地域制緑地」に加えて、公共施設、民有地を問わず、都市の緑を増やし、花と緑で美しく彩り、田園の緑と生態系をできる限り保持し、美しく緑豊かな都市を創造する施策と活動が都市緑化の推進である。

 このように、都市の緑は、都市公園、緑地保全、緑化推進という三つの施策が政策の3本柱である。昭和30年代〜50年代、高度成長期の急激な都市化により急激に緑が減少・喪失していく中で、国は法制度の制定に取り組み、自治体(例えば、札幌、仙台、横浜など)は条例・要綱により創意工夫・試行錯誤を行い、しだいに緑に関する三つの政策を形成・発展させ、成果を挙げてきた。しかしその一方、緑の保全・創造・育成に向けて、現行法制度での課題・限界が明確になってきた。これに対して、都市計画・公園緑地の法制度の面で、対応できる限りの施策の実現に取り組んた集大成が、景観緑三法の一つとして実現した都市緑地法の制定である。

都市緑地法と景観法の活かし方

 都市緑地法と景観法の活かし方として期待される点をいくつか列挙したい。その前提として、土地の多くは民有地であり、私有財産制と市場経済システムの下で、民有地のままでいかに緑を保全し、景観を向上させるかが、政策の要点であることを理解いただきたい。

(1)緑豊かな宅地開発、緑を保全した開発行為(研修所、墓地造成、リゾート施設なども含めて)の実現
 その要点は開発区域における緑化率の規制を導入し、市街地では低めの緑化率、都市近郊や自然度の高い郊外ではより高い緑化率を設定することである。都市緑地法では「緑化地域」が都市計画決定として新設され、緑化率規則が建築基準関係規定となり、緑化推進、開発区域内における緑地確保に対する強力な法制度が誕生した。また、「地区計画」もあわせて改正され、地区整備計画に緑化率が導入できることとなった。

(2)特別緑地保全地区、緑化施設、市民緑地の管理
 これらについては、所有者のみで管理することは事実上、不可能である。これらの緑は民有地であることが多く、地域住民によって親しまれ、地域住民が緑の恩恵を享受していることが多い。そこで、従来手薄であった管理について、土地所有者、企業、NPO、自治体などが協力し合って、その緑に適した多種多様な維持管理を行うべきであり、そのための法的根拠が用意された。

(3)都市近郊の緑の保全、緑の回廊の実現
 都市近郊の緑、とくに里山は人が手入れをすることによって成立している緑であるが、近年、その荒廃、喪失が著しい。「緑地保全地域」(都市緑地法)、「景観農業振興地域整備計画区域」「準景観地区」(景観法)等の諸制度を組み合わせて指定し、国土交通省と農林水産省、環境省の予算上の支援事業をそれぞれ導入していくことが着実な道筋であろう。

 このような都市緑地法と景観法の活かし方については、むしろ地元の市民、農家、山林地主、NPO、自治体が、美しい国土と緑豊かな都市を次の世代に残し、再生するために、地域に見合った創意工夫をしていくなかで経験が蓄積され、そのニーズに対応して国の支援事業も徐々に強化されていくものであると考えている。国として成すべき法制度は、今回の景観緑三法の制定によってかなりの程度でき上がっており、今後の課題は地元の熱意と実践、それに対する国の財政支援、そして税制改正と税制の支援(これが最後の難関)である。

 最後に、全国各地で国の都市再生機構、都道府県の住宅供給公社、土地開発公社が抱える未開発・開発断念の保有地は「不良資産」と見なされがちであるが、見方と政策を変えれば、「環境資産」に転化することが可能な素地・原石と見なすことも可能である。このような土地に「緑地保全地域」などを指定し、緑地の再生を図る新たな政策も検討してよいのではないか、そのために必要な一定程度の財政投入は社会的な理解を得ることが可能ではないか、と思われる。

1) 景観緑三法について詳しくは、越澤 明「景観緑三法の制定過程と新たな政策運営」『新都市』2004年7月号、(財)都市計画協会発行
2) 都市緑地法について詳しくは、越澤 明「都市の緑—都市緑地法制定の意義」『公園緑地』2004年10月号、日本公園緑地協会発行
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