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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第111回 改正化審法の施行状況について

  • 2013年4月11日

特集 日本の化学物質管理と国際動向 改正化審法の施行状況について

 2009年に改正された化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)が2011年4月に完全施行されて1年余り経過した。2009年の化審法改正では、既存化学物質も含めた包括的管理制度の導入、流通過程における適切な化学物質管理の実施、国際的な動向を踏まえた審査・規制体系の合理化——の3点を柱として改正しており、本稿ではこれらの施行状況について概括する。

既存化学物質も含めた包括的管理制度の導入

 2002年に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議において「予防的取組方法に留意しつつ透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順とリスク管理手順を用いて、化学物質が人の健康や環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成する」という国際目標が合意された。

 一方、国内においては、化審法に基づき新規化学物質については厳しい事前審査を実施してきたが、化審法制定以前から市場に存在する既存化学物質については、国が毒性評価等を行い、必要に応じて規制してきたものの、一部の物質を評価するにとどまっていた。

 このため、2009年の化審法改正では基本的に既存化学物質を含む全ての一般化学物質について、1t以上の製造・輸入を行った事業者に対して、毎年度その数量等を届け出る義務を課した上で、国がスクリーニング評価を行うこととした。また、その結果、リスクがないとはいえない化学物質については優先評価化学物質に指定した上で、段階的に事業者に情報収集を求め、国がリスク評価を行う体系を導入した。

○スクリーニング評価

 中央環境審議会化学物質審査小委員会等の厚生労働省、経済産業省および環境省の審議会(三省合同審議会)における審議等を踏まえて、三省は2011年1月にスクリーニング評価の基本的考え方や手法について取りまとめた。現時点で優先評価化学物質に指定されているのは95物質である。

 また、2012年7月に開催した三省合同審議会で、2011年4月の改正化審法の完全施行後初めて届け出られた一般化学物質について、スクリーニング評価を行い、46物質を優先評価化学物質相当と判定。名称等を精査した上で、年内に優先評価化学物質に指定する予定である。

 今後、毎年7月頃に前年度に届け出のあった一般化学物質について三省合同審議会においてスクリーニング評価を行い、優先評価化学物質を追加していく予定である。

○段階的なリスク評価

 三省合同審議会における審議やパブリックコメントを踏まえて、三省は2012年1月にリスク評価の基本的考え方や手法について取りまとめ、それに基づき、順次、リスク評価を実施しているところである。

 まず、2011年1月の三省合同審議会の判定を踏まえて優先評価化学物質に指定されている87物質のうち、製造・輸入数量の全国合計値が10t以上の86物質について最初の段階であるリスク評価(一次)評価Iを行い、2012年7月により詳細なばく露評価を行うリスク評価(一次)評価IIに着手する18物質を公表した。

 今後、この18物質について評価IIを行うとともに、残る優先評価化学物質および毎年のスクリーニング評価で追加される優先評価化学物質について評価Iを行うなど、順次リスク評価を進める予定である。

流通過程における適切な化学物質管理の実施

 流通過程における環境汚染を防止するため、特定化学物質および当該物質が使用された製品の取扱事業者に対して基準の順守や表示を求めるなど流通過程における適切な化学物質管理を強化することとした。

 まず、第一種特定化学物質については、許可製造業者および届出使用者に限定されていた取り扱いに係る基準適合義務を全ての取扱事業者に課すこととするとともに、第一種特定化学物質および第一種特定化学物質を使用した製品を譲渡提供する際の表示を義務付けた。現在、後述のとおりPFOSまたはその塩に関して取り扱いに係る技術上の基準および表示の義務を定めている。

 第二種特定化学物質については、物質に限定して取扱事業者に課していた環境汚染防止措置に関する技術上の指針を遵守する努力義務を物質に加えて使用製品の取扱事業者にも課すこととした。これを受けて化審法の政令を改正し、環境汚染防止措置に関する技術上の指針を公表する必要のある第二種特定化学物質を使用した製品として、洗浄剤など11製品を指定した。

 また、監視化学物質および優先評価化学物質について、取扱事業者に対して、監視化学物質または優先評価化学物質を他の事業者に譲渡または提供するときは、相手方に対し、当該物質の名称等の情報を提供する努力義務を課した。

国際的な動向を踏まえた審査・規制体系の合理化

 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)では、難分解性、高蓄積性、長期毒性等の性状を併せ持つ化学物質が規制対象とされており、わが国はこれらの化学物質を本法の第一種特定化学物質に指定することにより同条約の義務を履行している。POPs条約においては、代替不可能と考えられる用途については、例外的に製造・使用が許容される制度があるが、従来の化審法では第一種特定化学物質の使用が例外的に許容される用途の要件が閉鎖系用途に限るなど極めて限定されていた。

 2009年5月に開催された第4回締約国会議で追加されたPFOSまたはその塩については、POPs条約では例外的に使用等が許容される用途が認められたが、従来の化審法では国際的に許容された用途についてわが国のみPFOSまたはその塩が使用できなくなるおそれがあった。

 このため、2009年の化審法改正で代替が困難であり、かつ、当該用途に使用されることにより当該第一種特定化学物質による環境の汚染が生じて人の健康や生態系に被害を生ずるおそれがない場合は、当該用途に限定して厳格な管理を前提に、第一種特定化学物質の使用を認めることした。

 具体的には2009年10月に化審法の政令を改正し、エッチング剤(圧電フィルタ用または高周波に用いる化合物半導体用のものに限る)の製造、半導体用のレジストの製造、業務用写真フィルムの製造の3種類の用途に限定してPFOSまたはその塩の使用を認めることとした。その前提として厳格な管理を義務付けるため、同政令改正において取り扱いに係る技術上の基準への適合義務および表示義務が課せられる製品として、これら3種類の製品を指定した。

 また、わが国では代替は可能としてPFOSまたはその塩の使用を認めなかった消火器、消火器用消火薬剤、泡消火薬剤については、過去に全国の地下駐車場、空港、消防機関等に配備されており、PFOSまたはその塩を使用していない製品に代替されるまでの間、継続して使用される可能性があるため、取り扱いに係る技術上の基準への適合義務および表示義務が課せられる製品として、当分の間、指定することとした。

 そして、PFOS、その塩およびそれを使用した上記の3製品と消火器等について、取り扱いに係る技術上の基準を定める省令および表示すべき事項定める告示を制定した。また、これらの用途に使用するために製造するPFOSまたはその塩の製造設備に関する技術上の基準を定める省令を制定した。これらの省令等のうち、とくに幅広い事業者が取り扱う消火器等については、パンフレットを作成して全国の消火設備の点検業者の団体等に配布し、周知徹底を図っている。

グローバルネット:2012年10月号より


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