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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第7回 京都議定書発効に向けて〜企業の社会的責任

  • 2004年8月12日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

京都議定書発効に向けて〜企業の社会的責任


シンポジウム「京都議定書発効と企業の社会的責任」(主催:環境を考える経済人の会21、国連大学ゼロエミッションフォーラム)より 開会挨拶/温暖化防止対策は企業の社会的責任の最大のテーマ 日本テトラパック会長、国際連合大学ゼロエミッションフォーラム会長 山路 敬三(やまじ・けいぞう) (山路氏は去年12月16日に急逝されました。心からご冥福をお祈りをいたします)

 京都議定書に関して、企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)からのアプローチを申し上げたいと思います。企業の社会的責任として、経営者は京都議定書を守るという決意をする必要がありますが、決意をするまでにどう考えたらいいのかと言いますと、経営者が事実を認識する必要があると思います。

 地球がこの100年間で温暖化の方向に向かったことは測定値に基づく事実です。それからもう一つの事実は、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの大気中の濃度が、この100年の間に確実に増加したということです。これも測定値に基づく事実です。

 地球温暖化については、100年後に地球の温度が何度か上がるという予測がありますが、明日の天気予報も当たらないのに100年後のことを言えるのかということです。しかし過去100年にわたって地球が暖まったことと、温室効果ガスの濃度が上がったことは事実です。そしてこの温室効果ガスが地球温暖化の原因であるというのは科学的推論です。しかしこれは確度の大変高い推論だと思います。このまま放置すれば、将来、悪いことが起きる。それが温暖化であるという点は、確実に言ってよろしいのではないかと思います。これが第一の認識です。

 京都議定書は、ロシアが批准しないのでなかなか発効しません。しかし発効しようとしまいと、地球の温暖化を防止することは人類共通の責任であることを認識する必要があります。少なくとも経営者はそれを認識する必要があると思います。とくにこの問題についての最大の加害者は先進諸国です。日本に与えられたのは、1990年より6%減らすということです。このノルマを達成しなければいけないわけです。これはどちらかというと環境経営を超えて、企業の社会的責任を果たすための挑戦課題の一番大きなものではないか。そしてこれは産官が一体になって成功させるべきテーマだと思います。

■ロシアの批准が遅れても、国の強力な対策が急務

 2001年の状況を見ると、日本の場合は温室効果ガスの排出量が90年比で5.2%増えています。したがって6%削減するというのは並大抵ではない。国の強力な対策が敷かれるようになるのではないかと予測します。産業界では90年よりも6%減らすことを目標として、自主行動計画が各社で行われています。しかし2005年には政府との約束、つまり多少のペナルティを持った約束になることも考えられます。

 またいろいろな規制が強化されるのではないかと思います。省エネ法も対象が拡大されるでしょうし、耐久消費財に求められるトップランナー方式も対象が拡大されると思います。それから税制については、いわゆる炭素税、環境税が実現してくるのではないかと思います。そしてもう一つ、京都議定書による京都メカニズムが実際に運用できるように、条件や市場環境が整備されてくると思います。

 先ほど申し上げましたように京都議定書はロシアがなかなか批准しませんので、正式な発効にはなっていませんが、ロシアもこれから来年春にかけて下院選挙、大統領選挙があります。ですから、これが一段落したところでなんらかのアクションが起こされるのではないかという見通しがあります。

 ロシアは大変粘り腰があってしっかりした国ですので、有利な時にこれを批准するという考え方を持っているのかもしれません。有利な時というのは、京都議定書で温室効果ガス削減の約束期限が始まるのは2008年からです。2008年に近づいても、ロシアが批准しないから京都議定書は成り立たないだろうと思っていると、対策をさぼっていた国にしっぺ返しを食わせるようにロシアが急に批准する。対策をさぼっていると、2008年になって各企業が急いでロシアから排出権を買わなくてはいけなくなる。そうすると排出権の値段が高くなる。そういう時を狙っているのかもしれません。

ゼロエミッションの自然界から学ぶ温暖化防止の知恵

 次に、私の属しているゼロエミッションフォーラムの方からのアプローチをお話ししたいと思います。ご存じかと思いますが、ゼロエミッションは今から10年ほど前に国連大学で提唱された考え方です。いわゆるサステナブルな社会、つまり経済性、社会性、環境性のすべてにおいて持続可能な社会をつくることが狙いです。

 とくに環境については、自然界はもともとゼロエミッションになっている。無駄なエミッションは自然界にはない。すべて価値あるものとして自然界では利用されています。それをお手本にして人間の産業社会もゼロエミッションにもっていこうではないか、という見方がベースになっています。

 それをもう少しご説明したいと思います。自然界と生態系は長年の進化によって、自然のゼロエミッション系になっています。これは大変バランスのとれた合理的な仕組みです。人類も昔はこの生態系の中で一緒に生活していました。ナチュラル・ゼロエミッションの一員として生活していたわけですが、二本足で立てるようになり、いろいろな文化が発達してくる、科学技術が発達してくると自然界から離脱しました。そして逆に自然界を支配して、生態系あるいは自然界のいろいろな物資を使って、人類の福祉向上に当てようという考え方になりました。

 それだけだといいのですが、その過程でナチュラル・ゼロエミッション、自然界あるいは生態系のなりわいを破壊することになったわけです。これがどんどん破壊されて、今、大変ひどい状態になってきています。地球の温暖化もその一つです。

 そうなると今度は、人間はやはり生態系、自然界に復帰しなければいけないということで、まず生態系や自然界で人間が破壊したところを修復することから始めます。それと同時に、自然界のナチュラル・ゼロエミッション系がどうなっているかをよく勉強して、それを応用して新しいゼロエミッション社会をつくろうとします。そしてその社会では、これまで自然界を利用して得られた福祉向上、いろいろな便利さと調和する形に持っていこうという努力を、人間はこれからも続けていくことになると思います。

 今、環境税や炭素税などを敷こうとすると反対の意見が多い。しかし自然界ではもっと過酷なことをやっています。自然界の消費者を食べてしまうということまでやっている。そういうことから考えれば、人間の考えている税金をかけるなどというのはやさしいやり方です。自然界の掟に比べれば、このくらいのことは敢然と、欣(きん)然と受け入れていくべきものであると思います。

 自然界の様子を見ると、われわれがこれから温暖化現象を防いでいくための、いろいろな知恵が散見されます。こういったものを着実にこなして、温暖化防止の方向に向かっていかなければなりませんし、必ずできると信じてやるべきであると思います。

主催:環境を考える経済人の会21

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