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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第3回 続・都市に風を緑を〜本格化するヒートアイランド対策

  • 2004年4月15日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

続・都市に風を緑を〜本格化するヒートアイランド対策

屋上菜園でこんなに効果が〜渋谷の緑のビル作戦

 今日、私たちは地球温暖化、オゾン層の破壊、エネルギー資源の枯渇、生物多様性の低下などの深刻な環境問題に直面している。これらの問題は、物質的な豊かさや利便性を求めて、大量に物を生産・消費・廃棄してきた私たちの社会経済システムやライフスタイルのあり方に起因している。すなわち、私たちは現在の環境問題の被害者であると同時に加害者でもあるわけである。したがってこのような問題を解決し、将来にわたって地球という生命体を存続していくには、現在の社会経済構造のあり方などを根本的に見直していくことが重要である。

 とりわけ都市部で深刻化しているヒートアイランド現象は、地表面の被覆の人工化による地形・気象条件の変化、自然空間や緑の喪失、産業活動による生産熱や自動車の排気ガスの増加、OA機器類や冷暖房機器などによる排熱などによる生活排出熱の増加が大きな原因とされている。ヒートアイランド現象はこれら排出熱が複雑に影響し合って環境に変化をもたらした結果ということになる。それらの結果、生活環境の影響として、熱中症や暑さによる睡眠障害などの身体的影響が子供から高齢者まで精神面にも現れてきている。

 このような実態を少しでも和らげる対策として、渋谷で屋上緑化の実験を開始して効果を検証した。

 実験は100種類以上の項目を検証した。とくに部材関係や土壌は産業廃棄物の再使用を主体とし成果をあげている。その結果、新たなる産業として脚光を浴び、全国はもとより海外からも製品開発の指導を依頼される結果になった。また、今回の実験では、水道水を使用しないことをテーマにしており、この分野でも飛躍的な結果が出た。

室内への断熱効果

 冷房残存効果解消のため、金曜日の夕方より全館冷房を止めた状態で実験した。実験は2001年に行ったが、2002年にも同じ結果が平均した数値で出ている(表)。

 外気温度37℃の時に屋上緑化なしの場所の室温は38℃を計測した。室内はムッとした熱気が感じられる。屋上緑化ありの場所の室温は29℃で外気温との差は8℃を計測した。室内はムッとした熱気は感じられない。さらに、空気は乾燥している。

 屋上緑化することによって、室内温度を平均8℃下げ、冷房機を使用しなくても過ごせることが確認された。また、冬場の計測では、反対に室温を逃がさないことも確認できている。

 屋上のみならず、壁面やベランダを緑化することにより、建物全体を熱気から防ぐ役割を持っている。草花の生理機能としての「冷気しみだし現象」によって建物内部はもとより、周辺環境も冷やしてくれる効果もあわせて検証された。

屋上菜園の効果

 この実験は、思わぬ副産物が数多く現れてうれしい悲鳴の続出となった。

・精神安定効果
 ストレス社会での精神的安定作用が確認されている。
 会社や家庭での屋上庭園化にあたり、緑に対する審美的効果による安らぎの向上や、ストレスの発散作用などの心理効果を生み出す。また植物の揮発成分(とくにハーブ系統)の薬理効果でアロマセラピー作用(疲労回復、鎮静作用)、食用やボディローション等の活用によって「快適感」を提供する。

・精神的な症例の安定作用効果
 自閉症などの治療効果についてはいくつかの事例報告があがっている。自閉症の子供が自宅の屋上で、人の目にさらされることなく花壇づくりに専念し、その結果、病状が快方に向かってきたという報告だ。人の目に触れることなく一つのことに専念でき、その結果「植物を育て、語り合うことによって」自信に結び付いてきているホティカルチャー・セラピー(園芸療法)の結果だと考える。また登校拒否の児童や生徒にも同じことがいえる。とくに実のなるものは収穫の喜びが倍増されてくる。

 現在、隣近所にだれが住んでいるのかまったくわからないという「閉鎖社会」が形成されているが、集合住宅などの屋上家庭菜園は、近隣や家族とのコミュニケーションづくりに好適で、家庭内暴力や近隣とのトラブルの解消の効果をもたらすことも報告された。

 園芸療法では以下のような効果が得られることが知られている。

  土を触る=触手感覚から大脳への伝達訓練
  草花を見る=香り、色彩、形等の感覚作用訓練
  育てる=生長への愛情、慈しみの心を持つ喜び
  収穫する=収穫・食感・見る喜び

 現在、精神的治療方法や機能回復治療に用いられ、さらに痴呆回復の実験を開始し、一定の成果が出始めている。

・作物類の変化
 屋上菜園の効果には、作物にとって一大革命ともいわれる結果が出た。これによって、全国の農林試験場や研究所が関心を示している。

 屋上では作物の生育が非常に早い(種子から収穫の時期が短縮された)。屋上で取れた種子を地上や寒冷地で使用すると、従来の種子より強く、生育状況の変化が起きている。
病虫害の被害や霜の害がなくなってきている(風の道ができているため病気の害がなくなる、日射温度により害虫が付きにくい等)。

 土壌に、自然の土でなく産業廃棄物土壌や改良土壌を使用している。これにより、土壌は、農薬や肥料漬けになっていないため、作物との生育条件が合致することにより、作物本来の味を取り戻せてきている。
 水道水の使用を極力禁止し、保水材を使用することにより、真夏でも10日から15日間水やりはしていない。半月、雨が降らなければ雨水貯留タンクより散水する。都市部に屋上緑化が多数出現すれば、水やりによって、夏場の首都圏の水がめが渇水してしまうための防止策と、日常の管理の軽減化をあわせての対策を講じられる。

 他の実験として「コンパニオンプランツ(共栄作物)」の伝統的な農法の確認ができた。野菜の間には、マリーゴールド(センチュウよけ)やナスタチュウム(アブラムシよけ)の害虫避けの作物や甘味を出すもの等。また、カラスや鳩避けの植物も確認でき、効果をあげている。

 ここでは、誌面の都合上代表的なものを挙げたが、今後、屋上緑化がもたらす効果は、環境のみならず、産業廃棄物の再処理によって新たなる経済効果を生み出す原動力にもなってきている。現在、各国より屋上緑化の部材(廃棄物使用)や工法と同時に「帰農・回農・就農」としてのアグリビジネスとして脚光を浴びてきている。

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