「緑のgoo」は2025年6月17日(火)をもちましてサービスを終了いたします。
これまで長きにわたりご利用いただきまして、誠にありがとうございました。
かわいそうですませちゃいけないな、これは。
握ったときに「キュッ」と音がするぬいぐるみって、愛らしくてちょっとほっこりしますよね。
でも、もしその音を立てているのがぬいぐるみじゃなくリアルな鳥のヒナで、しかもおなかの中に詰め込まれたプラスチックが音を立てているのだとしたら?
かわいさや愛らしさが一転してディストピア的な悪夢に変わってしまいます。でも、残念ながらこれは現実に起こっていることなんです。
海洋研究団体であるAdrift Lab(アドリフト・ラボ)の科学者は、UNESCO(ユネスコ|国際連合教育科学文化機関)の世界遺産に登録されているオーストラリアのロード・ハウ諸島で、おなかを押すとプラスチック片がこすれあう音がする鳥を発見してがくぜんとしたといいます。
しかも、調査を開始した初日に、778個ものプラスチック片を飲み込んで死んでいるヒナ鳥を見つけてしまったのだとか。これは、過去15年の調査で1羽の鳥が飲み込んだプラスチックの最多記録を大幅に更新するとんでもない数となっています。
Adrift Labの研究チームは、同団体のプレスリリースで次のように述べています。
今年から「これ以上ひどくなることはないだろう」とお互いにもう言わないことにしました。なぜなら、毎年状況は悪化する一方だからです。
「前例がない」や「恐ろしい」といった言葉では、この状況を適切に表現できません。
環境・汚染・生物多様性危機の最前線に立つ科学者として、この状況を20年間目撃してきたことが、私たちの精神面と身体面に与えた影響を言葉で表現するのは困難です。
重すぎる…。
CNNによると、研究チームは毎年この島を訪れ、ミズナギドリ(暗い色の長い翼を持つ渡り鳥)へのプラスチック汚染の影響を調査しているとのこと。
プラスチックを飲み込む鳥の数も量も年々増えているそう。Adrift Labの海洋生物学者であるJennifer Lavers氏は今年の調査について、CNNに「全員が言葉を失った」と語っています。研究チームは、親鳥がプラスチックをエサだと勘違いしてヒナに与えているのではないかと考えているといいます。
生後およそ80〜90日で死んだヒナの体の中から、合計778個ものプラスチック片ということは、親鳥が1日に約10個のプラスチックごみをヒナに与えていた計算になります。研究チームによると、これまでの記録は約400個だったといいます。小さな体に400個でも多すぎでしょ…。
「近年は、この鳥をはじめ多くの個体があまりに大量のプラスチックを体に取り込んでいるため、そっとおなかを押すと、プラスチックが動いて、バリバリというひどい音がするのです。私たちは文字通り彼らを『バリバリ鳥(crunchy birds)』と呼んでいます。なぜなら…他にどんな呼び方ができるというのでしょうか」と、チームはプレスリリースに記しています。
同団体の生態学者であるAlex Bond氏は、「生きた鳥でも音がすることがある」とWashington Post(ワシントン・ポスト)の取材に答えています。
下の動画で、実際に死んだヒナ鳥や生きている鳥のおなかを押えたときの音を聞けますが、ちょっとショックを受けるかもしれないので、閲覧には注意してください。
問題は、チューインガムから人間の精巣や脳まで、すでにあらゆる場所で見つかっているマイクロプラスチック(直径5mm以下の微細なプラスチック粒子)だけではありません。
Bond氏は、ペットボトルのフタや持ち帰り用のしょうゆの容器といった大きなものから、ナイフやフォーク、洗濯ばさみ、さらには正体不明のプラスチック片まで、さまざまなプラスチックが数多く見つかっていると報告しています。
飲み込んだプラスチックは、あたりまえですが鳥たちに深刻な害を与えています。CNN によると、解剖の結果、鳥の腎臓や心臓に損傷が見られ、ヒメウミガラスには「認知症のような」脳の損傷も確認されたそうです。
Lavers氏は、CNNに「プラスチックは鳥を即死させるわけではありませんが、寿命を縮め、多くの痛みと苦しみをもたらします」と語っています。
また、鳥たちの体重や翼幅(翼を広げたときの長さ)も年々減少しているとのことです。
この春、研究者たちと一緒にロード・ハウ諸島を訪れた、オーストラリアの上院議員であるピーター・ウィッシュ=ウィルソン(Peter Whish-Wilson)氏は、ABC Australiaの取材に対し、次のように話しています。
これは地球規模の問題ですから、世界中のすべての政治家や意思決定をする人たちに、たった24時間でいいので私と同じ体験をしてもらいたいです。ここに来て、自分の目で確かめてほしい。
そうすれば、きっと理解してくれるはずです。私たちは、廃棄物とのたたかいに勝てていないのです。
科学者は、海鳥をしばしば海洋生態系の健康状態を表す指標と考え、海洋の状況を把握するために海鳥を観察しています。そんな海の見張り役ともいえる海鳥たちは、私たち人間に厳しい警告を送っているのではないでしょうか。