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泳げない人だったからこその救出劇だ。
今年に入ってから、アメリカでは離岸流(海岸から沖に向かって流れる強い波)によってすでに11人が命を落としています。そんななか、フロリダ州で離岸流に流された10代の女性を、機転を利かせた釣り人がドローンを使って救出したそうです。
5月15日の夕方、仕事を終えたアンドリュー・スミスさんは、友だちに誘われて嫌々フロリダ州のペンサコーラ・ビーチに出かけて釣りをしていました。
海に着いてから10分ほどたったときに、女性が駆け寄ってきて、泳げる人はいないかと助けを求めてきました。彼女によると、岸から90mほどの沖合で、友だちが離岸流に巻き込まれてもがいているとのこと。
スミスさんはけいれんを起こす持病があるため、泳ぐことはできませんが、それを補うためにサメ釣りのエサを沖に運ぶときにはカヤックではなくドローンを使っているそうです。
女性がどんどん沖に流されていくのを見ながら、スミスさんはドローンを見つめて「ドローンは泳げるのに、僕は泳げないんだな」と考えていたといいます。でも、もしスミスさんが泳げたらそこにドローンはなかったかもしれないんですよね。すごい巡り合わせ。
救助隊が到着して女性を救出するまでつかまっていられるようにと、スミスさんはドローンに浮具を取り付けて海上へ飛ばしました。一度目は「ひどい失敗」に終わったそう。スミスさんは地元メディアの取材に「風も強く、離すタイミングが早すぎて、ぜんぜん近くに落とせませんでした」と答えています。
その場にいた人がスミスさんに浮具を提供してくれたことで、もう一度トライできることに。そのときのことをスミスさんは次のように話しています。
「それが最後のチャンスだったので、ゆっくり慎重に彼女がいる場所に下ろす必要がありました。(浮具を)彼女がつかむのを確認してから、さらに少し下ろして浮具を離しました。すると、彼女はその浮具につかまって無事に浮かび始めました」
その数分後に救急隊が到着。女性は10分くらい離岸流に流されていたといいます。医療従事者による診察の結果、健康に問題はなかったのでそのまま家に帰ることができたそうです。よかった。
スミスさんはABC Newsのインタビューで、「あなたの助けがなければ、彼女を救助できなかったでしょう」と当局に言われたと話しています。
今回の出来事では、女性はいくつもの幸運に守られていたようです。ペンサコーラ・ビーチにはフォート・ピケンズという南北戦争時代の歴史的な要塞があるため、その周辺は飛行制限空域になっており、ドローンは飛ばせません。
スミスさんはWSVNの取材に、「もし彼女たちがもう少し離れた場所にいたら、ドローンを飛ばすことはできませんでした」と話しています。
ABCニュースによると、今回の件をきっかけに、地元自治体がドローンを監視員として定期的に活用する案が検討され始めているそうです。
また、今回の出来事は以前から繰り返されてきた「ドローンは善きものになれるのか?」という問いをあらためて投げかけることになりました。
ドローンが何かと批判の的にされるのも無理はないんですよね。たとえば、法執行機関が使えば、ほとんど規制がないままに、大規模な監視が行なわれてしまうこともありますし、一般の人が飛ばしても、思わぬトラブルの原因になります。その例として、今年の初めにカリフォルニア州で発生したパリセーズ火災では、消火活動中の空中消火機にドローンが衝突するあってはならない事故が起きました。
さらに2月には、フロリダ州議会の上院で、不動産の所有者がドローンに対して正当防衛を行使して撃ち落としてもいいとする法案まで提出されています。
でも、ちゃんとした人が使えば、ドローンはとても頼もしいツールになります。たとえば、ドローンは火災の追跡に使用されていますし、燃える建物の内部に投入して、間取りをマッピングできるドローンの開発も進められています。
捜索や救助の場面でも、ドローンはまさに革命的な活躍を見せています。数年前にスコットランドの登山家が氷崖から転落した際に、彼を発見したのはドローンでした。あるケーススタディによると、もしドローンがなければ、救助隊は「広大な捜索範囲と人間の生理的な限界に近いような高所」といった、「極めて厳しい状況」に直面していたと指摘されており、「ドローンを使用していなければ、効率よく登山者を発見して救出するのは困難だった」と結論づけられています。
もういまさらドローンがなくなることはないでしょうから、善か悪かを議論してもあまり意味がないと思うんですよね。でも、使う人の善意に100%依存するとヤバいことになるかもしれないので、悪いことには使えないように、善いことに使うのを妨げないように、議論を重ねて臨機応変にルールをつくっていけばいいんじゃないでしょうか。