想像したオーロラとはちょっと違った。
2024年3月15日、火星に向かって太陽が巨大なプラズマを放ちました。この太陽嵐の影響で、火星の空には緑がかった光を帯びたオーロラが広がったといいます。
科学者たちは、火星探査車パーサヴィアランスを使って、その肉眼で見えるオーロラの撮影に成功したとのこと。なんとなんと、目に見える火星のオーロラの撮影は今回が初めてだそうですよ!
火星探査車パーサヴィアランスに搭載されたSuperCam分光計と、高解像度カメラのMastcam-Zが、緑色の光を放つ原因となる正確なスペクトル線(特定の波長の光)を突き止めました。
これまで火星で確認されたオーロラは、人間の目では見えない紫外線の波長でしたが、肉眼でも見える波長のオーロラが観測されたのは、ものすごく画期的なことなのだそう。
Image: Knutsen et al. 2025 / Science Advances科学誌Scienceに発表された新たな研究論文の主執筆者を務めたオスロ大学の研究者であるElise Knutsen氏は、米Gizmodoの取材に対して次のように話しています。
「3回の失敗をへてついに成功したときには、まさに私たちが想像していた通り、あらゆる方向に均一に広がる緑色のモヤが現れました」
オーロラは、太陽から放出されるエネルギー粒子(コロナ質量放出)が、惑星の磁場や大気とぶつかり合うことで発生する、空一面に広がる光のショーのような現象です。地球では、太陽嵐と荷電粒子が大気に衝突するとオーロラが出現します。
地球のオーロラは光のカーテンみたいですけど、今回観測された火星のオーロラは、空が均一に緑色に染まるひと味違った現象のようです。むしろ光の帯やカーペットのような…。
とはいえ、いつどこでオーロラが見られるかを正確に予測するのは地球でもかなり難しく、火星になるともっと困難なのだとか。
Knutsen氏がそのあたりについて説明してくれました。
火星でのオーロラ予報は、地球よりもさらに難しいんです。なので、私たちは観測機器の正確な設置と、観測するタイミングの微調整に多くの時間を費やしました。
太陽から火星に向かうコロナ質量放出が観測された2024年3月、研究チームはNASA(アメリカ航空宇宙局)のCommunity Coordinated Modeling Center(CCMC: コミュニティ連携モデリングセンター)がオンライン上に公開しているシミュレーションを用いて、コロナ質量放出がパーサヴィアランスの観測機器で検出できる明るさのオーロラを発生させる可能性を評価しました。
先述の通り、4回目の挑戦で研究チームは火星で発生したオーロラの撮影に初めて成功。今回の結果によって、火星におけるオーロラの予測が可能であり、オーロラを撮影するための適切な準備もできることが証明されました。
火星にオーロラが現れたのは、太陽嵐の発生から3日後の2024年3月18日のことでした。Knutsen氏は、オーロラが私たちに何を教えてくれるかについて、以下のように話しています。
オーロラは、太陽が惑星の大気にどのような影響を与えているのかを、可視化してくれる現象です。今回は、この緑色の光を初めて検出したという報告にとどまっていますが、これから観測を重ねていけば、太陽からの粒子が火星の磁気圏や上層大気とどのように相互作用しているのかについて、もっと多くのことが明らかになるはずです。
いつか火星に降り立った人類がオーロラを目にする日がくるのでしょうか。